【G大阪】選手としての岐路に立つエース宇佐美に、奮起を促した指揮官からの金言 SOCCER DIGEST Web 5月7日(木)17時7分配信

最悪の状況を打開した指揮官の冷静な分析。

 アジア制覇に懸けるG大阪の執念が、最後に結実した。

城南FCとのグループステージ突破が懸かった大一番。立ち上がりの15分に先制点を献上したものの宇佐美のゴールで追いつき、ホーム万博のボルテージも 高まるなかで迎えた82分。左サイドからの遠藤のクロスを、右膝痛を押して途中出場した岩下が折り返し、こちらも途中出場のFWリンスが押し込んだ。

開幕から3戦未勝利。一時はグループ最下位に沈んだ最悪の状況から這い上がっての“グループ首位通過”だった。

グループステージ突破へ勝利が必要な状況で、1点ビハインドの苦境を打開したのは、長谷川監督の采配だろう。55分に右SBの小椋に代えてDF岩下を投入し、CBの丹羽を右SBに移した。また75分には本来は攻撃的MFの倉田を左SBに起用する策を打っている。

「良い時のビルドアップができていないということで、(岩下を入れて)最終ラインからの落ち着きをもたらしたかった。(丹羽)大輝はSBを何回かやったこ とがある。彼を入れることで高さも出てくるし、大輝はあまり考えずにどんどん上がっていく選手なので、そのへんがうまく出ればと。倉田に関しては藤春が連 戦で、コンディションが悪そうだったので。倉田の右サイドはあらかじめ準備していて、本人も『左ですか?』という感じだったんですけど、とにかく行ってこ いと」

急造の両SBは、サイドを支配してチームに勢いをもたらした。チーム状況を冷静に分析した指揮官の采配が流れを呼び込み、逆転につなげた。

そして、ピッチ上のパフォーマンスで逆転勝利を手繰り寄せたと言えるのが、この日23歳の誕生日を迎えた宇佐美だった。

勝利を呼び込んだのは“華麗さ”ではなく“泥臭さ”だった。

 宇佐美は23回目の誕生日を前に、長谷川監督からある金言を送られていた。
「19歳と23歳は選手としての分岐点になる年。19で選手としてやっていけるかが決まり、23でどのくらいの選手になれるかが決まる。120パーセントでやれ」

19歳でバイエルンに移籍し、23歳を迎えた今季は日本代表入りして飛躍を迎えようとしている宇佐美にとって、心に残る言葉だった。決してベストパフォーマンスと言える内容ではなかったが、そんな指揮官の想いに応え、宇佐美はエースとしての責務をきっちりと果たす。

1点を追う64分、左サイドから中央のパトリックを狙って右足でクロスを入れる。
「触っても触らなくても、入るボールをイメージしました。GKが(出るかでないか)悩むボールを蹴ろうと思った」

トラップの際、やや足下に入りすぎたというボールを、インサイドでこすり上げるようにパトリックへ。そのクロスは狙い通り、城南GKとパトリックの間を滑り、そのままゴールへと吸い込まれた。

前半は最前線で決定的な仕事をできずにいたが、58分にリンスが投入されると左サイドMFへ。6連戦の疲労も抱えたなか、守備の負担も多い中盤でのプ レーにも必死に対応。ライン際でのドリブルで相手守備を引きつけ、守備では果敢なスライディングを見せるなど最後まで身体を張った。この日の逆転勝利を呼 び込んだのは、いつもの華麗なプレーではなく、指揮官からの「120パーセントでやれ」の言葉を体現するような執念を感じさせる“泥臭さ”だった。

グループ首位通過を果たしたG大阪は、ラウンド16でFCソウルとの対戦が決まった。宇佐美はグループステージの大一番を終えてこう語った。
「チーム全員のプライドが出た。僕らが負けたら、Jリーグ勢が寂しい結果になるところだった。ここからは失うものはなにもない。全員で、上に上に進みたい」
Jの誇りも胸に、2008年以来のアジア制覇を目指す。

Share Button