【番記者の視点】G大阪・片野坂知宏監督の解任劇 “続投ノルマ”には違和感も…
G大阪は17日、片野坂知宏監督の解任と、松田浩新監督の就任を発表した。24試合を消化して5勝7分け12敗の勝ち点22。14日にはJ1残留を争う清水戦に0―2と敗れ、自動降格圏の17位と転落したことで、クラブは監督交代を決断した。この日会見に臨んだG大阪の小野忠史社長は「チーム再建には当然時間がかかるのは理解をしておりますが、この残り10試合となり、現実的に目標がJ1残留となったため、このタイミングで松田新監督へ交代する決断をいたしました」と説明した。
昨季も残留争いに巻き込まれたG大阪にとって、コーチとして数々のタイトル獲得に貢献し、6年間率いた大分で組織的な攻撃サッカーを展開した片野坂監督は、復権への“切り札”だった。小野社長は「できることなら片野坂氏と最後まで心中したい、というのは本音でした」と語った。しかしシーズン序盤にエース宇佐美を長期離脱で欠き、コロナや負傷者の影響もあり、チーム作りは低迷。シーズン中盤以降、降格圏付近を漂っていた成績を見れば、監督解任の動きはもっと早くても不思議ではなかった。
しかしフロントは、チームの雰囲気や、選手から「片野坂監督を勝たせたい」といった前向きな発言も出ていたことから、信頼は揺らいでいないと判断。変革のため、低迷も必要な痛みと捉えていた。ただ6月29日の広島戦以来勝利から遠ざかり、いよいよJ2降格に現実味が。そこで7月30日からの京都、福岡(コロナの影響で延期)、清水戦の3試合で勝ち点6以上を“続投ノルマ”として設定した。結果、2試合で得た勝ち点は1。それでも清水戦の内容が悪くなかったこともあり、試合直後には決断には至らず。翌15日、解任の方向で固まった。
結果を出せなかった片野坂監督の解任は、プロの常として理解できる。しかしフロントは8月9日、松田浩コーチを片野坂監督のサポート役として首脳陣に加えている。この時点では、あくまで片野坂解任を想定した動きではなかったと、小野社長、チーム強化を担当する和田取締役は強調した。であれば、片野坂監督、松田コーチの体制がわずか1試合で終わった“続投ノルマ”には、違和感をぬぐえない。
和田取締役は「本当はもう少し、松田さんと片野坂さん、2人の関係は当然見ないといけなかった。しかし清水戦が非常に大きなポイントになった」と説明した。残留を争う清水は、0―0の後半にFWチアゴ・サンタナと、交代選手でパワーを上げ、1点を取りに来ることは明白だった。しかし守備の修正ができず、前節の京都戦に続いて後半の失点で勝ち点を失った。残り10試合を想定すると、守備の修正にたけた経験豊富な松田氏に託す方が、残留の可能性が高いという判断が下された。
松田監督との契約は、現状では今季限定。フロントは残留したとしても来季新監督を迎えることを想定し、外国人も含め検討を進めるという。片野坂監督とともに大分からやってきた安田ヘッドコーチと上村コーチは、松田監督の希望もあって残留が決まった。わずかなほころびから浮上のチャンスを何度も逃し、窮地に追い込まれた今シーズン。さっそく約2時間のミーティングでチーム再建をスタートした新監督の手腕に、J1残留の望みを託すしかない。