両チームの勝敗を分けた「我慢しきれるかどうか」の違い【G大阪vs清水】(2)
【明治安田J1リーグ 第25節 ガンバ大阪vs清水エスパルス 2022年8月14日 19:03キックオフ】
清水は立田のカバーリングを筆頭に、個々が集中力を切らさずに揺さぶりに対応して我慢する展開が続いた。そんな中、攻撃が変化。ゴールキーパーの権田修一から一気にチアゴ・サンタナへボールが飛んでいくようになった。
組織よりも個の力で最初のきっかけを掴む、という方針にシフトした清水だったが、それもガンバは想定済みだった。「チアゴ・サンタナを起点にするのはわかっていた。そこを自由にさせないことがこの試合のポイントだと思って徹底していた」(三浦弦太)というガンバは、ファウルを取られずに激しく競り合ってみせ、そこも機能させなかった。
それでも、清水が勝ち、ガンバが敗れた。
勝敗を分けたのは、守備でエラーを起こすかどうか、という部分だった。
普段と異なる状態で戦いながらも、鈴木が競り合い立田がカバー、というセットを崩さないように耐え切った清水に対し、ガンバは普段とは異なる3バックのメンバー構成が裏目に出た。
後半、徹底した権田からサンタナへのボールが徐々にガンバを疲れさせ、中盤にスペースが生じるようになると、72分、途中出場のカルリーニョス・ジュニオがセンターサークル内でボールを受けて前を向くことに成功。
この時、ガンバは3バック全員がサンタナの動きに対応してしまった。
裏へ走り出したサンタナへのパスコースはカルリーニョスと向き合う形になった三浦が切ることに成功し、カルリーニョスはゴールからもサンタナからも逃げていくようにボールを持ったが、左センターバックの藤春がサンタナの動きについて行ったことで本来彼が対応する位置のベンジャミン・コロリがフリーに。「シュートしかない、とわかっていた」というコロリがきっちりとゴールを奪い、清水が先制した。
ガンバは準備してきた戦い方を継続して攻勢を強めようとするものの、パス交換のミスでスローインを与えると、その対応で再びパス交換のミス。ダワンが昌子源に小さく戻したものがルーズボールになり、サンタナに回収されると一気にペナルティエリアまで進まれ、最後はカルリーニョスがネットを揺らした。これで試合は決した。
■対象的だったガンバと清水の「我慢」
清水のゼ・リカルド監督は「チームは集中力を保ち、苦しみながらも勝利を得ることができた。選手が非常にハードワークしてくれた賜だ」と振り返った。しっかりと対策をされ、普段通りには進まない戦い方を強いられ、勝利の瞬間に喜びよりも疲労が上回るほど消耗させられたが、先発した選手たちは最後までエラーを起こさずに耐え切った。しかも、途中出場の選手たちが相手のエラーをモノにして勝利してみせた。
そんなチームが感じさせるのは、強さだ。
アディショナルタイムには足が攣り、勝利と共に倒れ込んだ立田は「我慢できるようになったのはチームの成長だと思う。後ろが我慢していたら前線の選手が2点も取ってくれて勝てた、というのも成長している証拠だと思う」と新体制で急速に身につけている強さの手応えを語った。
我慢しきれるかどうか、それが強さの前提になっていた。
この試合のガンバは、それとは対照的な存在だった。
対清水の戦い方が機能していながらも、その代償として部分的に生じるリスクが上回り、致命的なエラーが起きてしまった先制点。そして、反撃する中で唐突に生じたミスによる追加点。
清水対策が機能していた分、簡単には変わらない勝負弱さを感じさせることになった。 自身のパフォーマンス自体は良かった三浦は試合後「割り切って勝ち点を取る戦い方も必要になってくる」と、ここから泥沼の残留争いを戦っていく覚悟を示したが、この大一番で強さを見せることができなかったチームがその戦いをどこまで我慢し、耐えられるだろうか。
残りは10試合。自動降格圏に沈んだガンバは、残念ながら残留争いを簡単に抜け出すことはできなさそうだ。
我慢強く戦うか、あるいは劇的な変化に期待するか。強くなった清水を見る限り、どちらか1つが必要、ということでもなさそうだが、果たしてガンバは終盤戦をどう戦うだろうか。
■試合結果
■得点
73分 ベンジャミン・コロリ(清水)
86分 カルリーニョス・ジュニオ(清水)