【番記者の視点】届かなかった昌子源の叫び G大阪、また終了間際の失点で痛恨ドロー
◆明治安田生命J1リーグ第22節 G大阪1―1京都(30日、パナスタ)
1点リードで迎えた後半ロスタイム。DF昌子源は叫んでいた。「(相手のコーナー)フラッグでいい!」。後半途中に退場者も出して10人の京都に対し、ボールを自陣から遠ざけることを徹底しようとした。しかし敵陣右サイドでパスを受けたFWウェリントン・シウバは、中央へドリブルで突進。ボールを奪われると、中盤からのスルーパスでDFラインの裏を取られ、最後はGK東口が京都FW木村を倒してPKを与えた。
かつてアーセナルにも所属したウェリントンだが、今季はベンチ外が続き、リーグ戦はこの日が約1か月ぶりの出場。後半43分にはゴール前でフリーとなったがパスは届かず、自らシュートを放って外した山見に怒りを爆発させた。この行為も、失点のきっかけとなったプレーの伏線になっていたはずだ。
悪循環を経ち切れない。今夏、新エース候補として獲得したFW鈴木武蔵は、5日前のパリSG戦(7月25日)では先発して前線の起点となるプレーをみせたものの、この日はコンディション不良によりベンチ外に。代わって1トップを務めたFW食野は、本来なら2列目を得意とする選手。それでも慣れないポジションで、後半12分に復帰後初ゴールを奪った。しかし勝ち切ることができず、7月は勝利なし(2分け3敗)に終わった。
2点目を取っていれば。DFラインが裏を取られなければ。東口がファウルをしなければ。追いつかれた理由はいくつもあるが、一番重いのはピッチに立った選手たちの気持ちが、勝利のみに向かなかった点だ。途中出場した前線の選手が、結果を残したい、という感情を持つのは当然。相手に退場者が出て、スペースがあるならばなおさらだ。そんな選手の“欲”をコントロールできなかった片野坂監督は「選手が最後どう(試合を)終わらせるかというところで、悔しい思いをさせてしまっている。本当に僕も悔しいですし、自分の責任を感じます」と語った。
コロナで主力を多数欠いた京都は、メンバーが多く変わってもチョウ貴裁監督の下で積み上げてきた前へ、前へと圧力をかけるスタイルを貫く強さを見せた。一方で今だチームとしてのスタイルが固まったとは言えないG大阪は、主力の欠場や途中交代が戦い方に大きく影響する。それが今季、終了間際の失点により計5試合で勝ち点を失った要因にもなっている。残りは11試合。一刻も早くチームとしての勝ちパターンを見つけなければ、この泥沼から抜け出すことはできない。