4月のJ1ベストゴール受賞 G大阪MFダワンのスーパーダイレクトボレー弾を生んだセカンドボールへの意識
【インタビュー】ダワンが京都戦で決めた一撃は「トレーニングの成果」
Jリーグでは各月のリーグ戦において最も優れたゴールを選定するなか、4月のJ1月間ベストゴールはガンバ大阪MFダワンが受賞した。4月6日の第7節・京都サンガF.C.戦(1-1)の後半13分に決めたJリーグ初ゴールは、DFがクリアした浮き球を右足で完璧に捉え、長い距離からゴールを射抜いたものだった。母国ブラジルでも喜ばれたというスーパーゴールが、なぜ生まれたか。早くもJリーグで存在感を放っている新助っ人に、ピッチ内外での日本への適応についても聞いた。
【動画】4月のJ1月間ベストゴールを受賞したG大阪FWダワンの豪快ボレー弾 ◇ ◇ ◇
――ダワン選手が第7節の京都戦で挙げたJリーグ初ゴールが、4月のJ1月間ベストゴールに選出されました。おめでとうございます。
「月間ベストゴールに選出していただき、ありがとうございます。選ばれたことに、とても嬉しい気持ちでいっぱいです。選ばれたのは、日々のトレーニングの成果、トレーニングで努力をしていたことが、試合で実になったのだと思います。また選ばれるように、今後も継続して努力をしていきたいと思っています」
――素晴らしいダイレクトボレーシュートでしたが、ゴールが決まった直後の感覚、感情を聞かせてください。
「決まった瞬間は、最高に気持ちが良かったです。ただ、ゴールをした時の感情というのは、言葉にするのがすごく難しいんです。『最高にハッピーだった』という言葉以上に表すことができない。感情が言い表せないくらい嬉しかったです。ペナルティーエリア外からのシュートは、日々トレーニングをしているのですが、なかなか狙っても練習でも決まりません。それが公式戦で、しかもダイレクトボレーできっちり決め切れたのは、トレーニングの成果が出たのだと思うので、これからも継続したいと思います」
――このゴールの直前にも惜しいミドルシュートがありましたが、ブラジルでプレーしていた時からミドルシュートは得意だったのですか?
「練習の時から常にゲームをイメージしていますが、僕がプレーしているボランチのポジションでは、セカンドボールに対する反応を早くすることでチームを助けることができます。そして、セカンドボールを拾った際に、選択肢を自分の中で何個か持てれば、プレーの幅が広がります。セカンドボールを拾う場合は、どうしてもゴールから距離のある位置になるので、ミドルレンジからのシュートやパスというのを常に頭に入れてプレーしていますし、練習が終わってからも個人的に、中距離から打つことを考えてシュート練習はしていたので、それがゲームで出せたのだと思います」
スーパーゴールに直結した直前の枠外へのシュートミス
――セカンドボールを拾うためには、ポジショニングが大事になると思います。ポジショニングで意識すること、心がけていることはありますか?
「自分自身が一番、意識しているのは試合の状況、流れを読むことです。試合の流れ、相手のボールの運び方やポジショニングを見て、どこにボールが落ちてきそうか、こぼれてきそうか、その確率が高いところにポジションをとるようにしています。また、ポジションを取るだけではなく、ボールがこぼれた後につなげるプレーが大事になるので、身体の向きなども次のプレーにつなげられる形をとるように意識しています。ボランチはチームの中心にいますが、中盤のエリアでボールに多く触り、コントロールすることができれば、自然とチームの勝率も上がってくる。ボランチの働き次第で90%は得点につながる、同時にチームの勝利にも関わってくる大きな役割を担っていると思っていますし、そのなかでもセカンドボールを拾うことは意識してやっています」
――京都戦のゴールについては、クロスをクリアされたセカンドボールを止めずに、ダイレクトボレーでゴールに決めました。どのタイミングでシュートを打とうと決断したのですか?
「本当に一瞬の中で、いろいろなことを考えました。ボールが自分のところに来る前に、上がりましたよね? あのボールが、もう少しフワーッと滞空時間の長いボールになっていて、落ちてくるまで時間がかかるようであれば、相手の選手が寄ってくるので、シュートという選択肢はなくなっていたと思います。あの場面でボールの落ちる位置と僕の身体の向きがズレていたら、トラップも必要になっていたでしょう。その場合も、トラップが必要になり、シュートコースを消されてサイドチェンジを選択することになっていたと思います。運良くボールが高く上がってから、早く落ちてきてくれて、しかも自分の前にこぼれて来たことでシュートに持っていけました。ボールの浮き方や落ちる位置が判断できた時に、相手も寄せてこれないと思ったので、シュートを打つ決断をしました」
――このシュートコースについてはいかがでしょう?
ボールを浮かさずに低い弾道でゴールに決めましたが、低く打ったのには、何か理由があったのですか? 「先ほど、このシュートの前に1本、ミドルシュートを打っていたという話がありましたが、そのミドルシュートはふかしてしまい、クロスバーを越えていく形になりました。そのシュートを打った時は、身体を反ってしまい、胸が上を向いているような状態になっていたと思います。その反省があったため、『次のチャンスでは、絶対に身体をかぶせて、ボールをふかさないようにしよう』と意識していました。このシュートシーンでも、ボールを浮かせてタイミングをズラすシュートを打つこともできたと思いますが、身体をかぶせて打てる状況でもあったので、反省を踏まえて、低めの抑えたシュートを意識しました」
局面に応じて適切なキックを選択して練習
――ブラジル時代は、ボランチの位置からサイドにボールを散らすプレーが今よりも多かったように感じます。このゴールの場面やパトリック選手へのスルーパスのシーンのように、Jリーグではゴールへまっすぐ向かうダイレクトプレーが多くなっているように思いますが、それはブラジルと日本のサッカーの違いからプレースタイルを変えたのでしょうか?
「日本でもロングボールを使いますが、日本のサッカーは寄せが早いので、ワンツーやショートパスを相手が来る前に選択して、確実にボールロストしないようにプレーしないといけないシーンが多いと思います。ブラジルでのボランチの役割はボールが入った時に、ウイングが両サイドにいるので、そこにボールを散らしたり、サイドバックにボールを散らしたりしていました。そのため、長いボールが多いと感じられるのではないでしょうか。ただ、プレースタイルを完全に変えたかというと、そうではなくて、試合状況に応じて使い分けています。この京都戦に限って言うと、DFが前がかりにプレスをかけてきていました。パトリック選手からも『君にボールが入った時に、フリーで前を向けていたら、一度、僕を見てほしい。相手が前がかりになっているので、僕が後ろに抜けるから、そこにボールを出してほしい』という要求がありました。そのシーンでは、僕がボールを受けて、前を向いた時に、パトリック選手がしっかり見えたので、アウトサイド気味に蹴ったと思いますが、前線にラストパスを送れたと思います」
――キックの種類が本当に豊富だと感じます。練習の成果を強調されていますが、正しい練習ができないとなかなか技術も向上しません。キックの練習をする際、どのようなことを意識してやるのが重要だと感じていますか?
「個人的にも、インサイドでボールを出す、インステップでロングキックをする、アウトサイドのキックと、さまざまなキックを練習からしています。練習の中でも、最初から100%の確率でパスを成功させるのは難しいでしょう。スタートはミスが多いと思いますが、練習から何気なくボールを蹴るのではなくて、どうすればミスの確率を減らせるか意識して蹴ることです。狙ったところに蹴りたいボールが行くかどうかを考えながらやることが大事です。ただし、キックというのは、僕がこう蹴っているから、誰もが同じようにすればいいというものではありません。1人1人、プレースタイルや特徴は違うと思うので、僕がインサイドで蹴るところをほかの選手はアウトサイドで蹴ったほうがいいかもしれません。局面に応じて、どういうキックをすれば、成功する確率が高くなるのかを考えながら、日々のトレーニングからミスを減らすことを意識することが大事だと思います」
Jリーグの「切り替えの早さと強度」に驚き
――京都戦のゴールに話を戻します。ブラジルの人たちは、美しいゴールが好きだと思いますが、ブラジルにいる家族やファンからは、あのゴールについて反響はありましたか?
「やはり、今回のゴールは僕の友人、親戚、家族、みんなが見てくれて、たくさんのメッセージをもらいました。僕がピッチに入る時、家族や親戚、友人のことを思い出しています。サッカーを始めた幼少期に、祖父や親戚のおじさんが基礎を教えてくれました。そういうサポートがあったから、今の自分があります。そういう人たちにも喜んでもらえたことで、自分にとっても記念になるゴールでした」
――今シーズンから日本でプレーしていますが、Jリーグにはどんな印象を持っていますか?
「Jリーグ、そして、日本のサッカーについてのイメージは、すごくハイレベルだと感じています。特に感じるのは、ディフェンスのプレッシングの部分。切り替えがとてつもなく早く、強度も高い。それだけでなく、戦術的なことも、テクニックでも、すごくレベルが高いのですが、同時に今も成長を続けているリーグだと感じます。自分自身、もっともっと日本のサッカーに馴染まないといけません。今のJリーグで戦ううえで、トレーニングを含めたピッチ上でベストを尽くすことはもちろん、ピッチ外でもしっかりと準備をしないとベストパフォーマンスを出せない、Jリーグではついていけないと感じています。ピッチ外の部分、睡眠、休息、食事といったピッチ外でのポジショニングも意識して、チームとともにリーグに臨むようにしています
」 ――ピッチ外も重要ということですが、私生活では日本での暮らしには慣れてきましたか?
「来日して2か月半が経とうとしていますが、睡眠のところでは、ブラジルにいる時は7、8時間きっちりと熟睡できていたのですが、日本ではたまに目が覚めてしまうことがあります。もちろんブラジルと12時間の時差がある影響もあると思いますが、2か月半が経ちましたし、もっと日本の時間に馴染めればいいなと思っています。食事は来日するにあたり、ブラジルから食料を持ってきて、家では自炊をしているので、なかなか和食をいただく機会がないんです。美味しかったもので覚えているのは、焼いたサーモンにチーズがかかっているものですね。今後、もっと和食にも挑戦したいです。日本で長くプレーして、生活をしていきたい気持ちが強いので、もっともっと適応していきたいですね」
今後も「期待してください」とゴールに意欲
――何か覚えた日本語はありますか?
「日本語は、僕たちの言語からは100%と言っていいくらい違うものです。ですから、覚えるのはすごく難しいのですが、本当に基本的な挨拶を少し覚えました。『オハヨウ』『コンニチハ』『アリガトウ』ですね。これから日本で生活するうえで、文化、言葉を覚えたい気持ちはあるので、今後、少しずつ勉強しようと思います」
――月間ベストゴールの賞金は20万円です。何に使うかは決まっていますか?
「僕がこうしてプレーヤーとして、結果を残せているのは、日々、自分を支えてくれている妻と娘のおかげです。もちろん、僕も賞金の一部をいただけたらなと思いますが、まずは僕のことを支えてくれている彼女たちが好きなものを選びたいと思います。あとは、妻が管理しているので、なんとも言えません(笑)。今回、ベストゴールに選んでもらいましたが、ゴールは1人で取れるものではありません。日々、クラブハウスに来てトレーニングするうえでも、試合でも、ピッチ外でも、みんなが僕をサポートしてくれています。選手たちも力をくれていることを考えると、チームみんなで取れた賞だと思うので、みんなにも感謝したいと思います」
――ボランチは得点を量産するポジションではないと思いますが、今後もゴールを期待していいでしょうか。
「そこは、期待してください! ただ、ゴールは僕だけではなく、ピッチにいる全員にチャンスがあります。僕だけではなく、チームメイトみんなに期待してほしいですし、チームをサポートするために、ここにいます。ゴールも大事ですが、何よりも大事なのはチームの勝利なので、そこにつながるサポートをピッチのなかで、やっていきたいと思っています」
[プロフィール]
ダワン/1996年6月3日生まれ、ブラジル出身。AAフラメンゴ―サンタ・リタ-CSA―ポンテプレッタ―ジュベントゥージ―ガンバ大阪。J1通算8試合2得点。ヘディングと守備を得意とするボランチ。「日本でプレーしたいという夢を持ち続けていた」と語り、今季から期限付き移籍で加入した。