<ガンバ大阪・定期便VOL.9>どこまでも、遠藤保仁。

遠藤保仁は基本的に物事に執着を見せない。それは今や代名詞とも言える背番号「7」についてさえも、だ。『J1リーグ最多出場記録』の更新を前にインタビューをした際、驚くべき事実を聞いたのを覚えている。

「ずっと7をつけてきたけど…背番号には全くこだわりがないです(笑)。ガンバでの3年目に背番号を30から7に変えたのも、当時の強化部長に『7が空いているからつけたらどうだ?』って言われたから。自分から選んだ数字ではないんです。その頃から背番号は何番でも良かったから確か僕自身も『空いている番号なら何番でもいいです』くらいの返事しかしなかったと思う。あ、でも…一度だけ番号を希望したことがあったかも。7をつけて2〜3年目くらい経った時に『1をフィールドの選手がつけたらダメなんですか?』って。そしたら『それはさすがにアカンやろ』と言われたからすぐ諦めました(笑)。とか言いながら、今や自分のアパレルブランドにも『7』を入れまくっていますけど、例えば仮に今『7』を譲ってほしいと言われても…余裕で譲る。どうぞ、どうぞって感じ。背番号でサッカーをするわけじゃない。遠藤保仁がサッカーをするんだから全然いいでしょ」

 誤解を恐れずに言うならば、それは20年近く在籍したガンバ大阪に対しても同じだ。もちろん、ガンバには大きな愛着を感じている。

「ガンバ以上のクラブはない」

 はっきりと口にもしている。だが、かと言って「生涯ガンバで」というような言葉を聞いたことは一度もない。

「もちろん、選手としての一番の理想はトップリーグであるJ1リーグで、試合に出続けること。でも、それができなくなったら…チームも、ステージも問わず、それを実現できる可能性を探ると思う。もちろん、どこにいっても競争があるのは承知の上で、ね。ファン・サポーターの方やいろんな人が『ずっとガンバにいて欲しい』って声を掛けてくれるけど…その気持ちは嬉しいけど、正直、自分はそこに強くこだわっていない」

 どの節目に話を聞いても、その考えが揺れたことはなかった。

 そんな彼がプロになって唯一、一貫してこだわってきたのが「サッカーを楽しむこと」だった。ガンバでプレーした20年。彼の口から何度、その言葉を聞いたことだろう。結果が全てとされる厳しいプロの世界において、時に違和感を覚える時もあるくらい、いつ、いかなる時も、だ。

ただし、それは、あくまで「試合に出ること」が前提の話。プロである以上、たとえ試合に出られなくてもボールを蹴っていたら楽しい、練習をしていたら楽しい、という選手は一人もいない。遠藤の「楽しい」も公式戦に付随するものだ。

「チームの戦い方、選手起用は監督が決めること。そこについてどういう言うつもりはないけど、ただ、僕たちは何のために練習するかといえば、試合に出るため、結果を残すため。そのために普段の練習があって、いろんな積み重ねがある。もちろん監督に選ばれないのは自分にも理由はあるはずですが、一方で、出たら結果を残せるという自信もある。そういう正直な気持ちをガンバにぶつけて、ガンバに理解してもらった。だからこそ、この期限付き移籍をして良かったと言えるような結果を残せたらいいなと思っています」

10月5日に行われた記者会見でも素直な胸のうちを明かしている。そして、だから彼は期限付きを決断した。唯一、強いこだわりを示してきた、サッカーを楽しむために。公式戦のピッチで、それを味わうために。

「サッカーって1つとして同じ相手と戦うことはないから。たとえ出ている選手が同じでも、戦術とか個々のコンディションによってサッカーは微妙に変化するし、天候によって試合の流れが変わることもある。だからサッカーは楽しい。こんなに長くやっていても飽きないのは、それが理由だと思う」

今年の2月、40歳になったばかりの彼は、それこそ20代前半の頃と変わらずに本当に楽しそうに話していたものだ。そのことを本人に告げると、飾らない答えが返ってきた。

「いやいや、確実に年はとってるから。最近は肌も少し乾燥してきたし、冬場は特にかかとにクリームをちゃんと塗らないとカサカサする(笑)。いま、血豆も1つできてるし。潤い不足やね。でも、そうやって年を重ねた自分を素直に受け入れるのも大事だから。これはサッカーも同じ。だから40歳で、若い選手と同じようにガンガン、ハードなトレーニングをしようとは思わない。年を重ねたら重ねたなりの鍛え方があるし、楽しみ方もある」

そんな風に、この20年で遠藤から聞いた数々の言葉が蘇ってくる。それらを一つ一つ、つなぎ合わせていくうちに寂しさに色が灯るように、新たな感情が湧き上がる。本人が「簡単な決断ではなかった」と振り返るように、悩み抜いて「楽しむこと」を新天地に求めたのであれば、彼と同じようにワクワクした気持ちで、そのチャレンジを見守りたい、と。

「新しいチームに行って、新しい監督、選手と…知っている選手も何人かいますけど、そういう選手たちとまた新しいサッカーをするのが楽しみです。ジュビロ磐田をJ1リーグに昇格させることへのモチベーションもありますし、新しくまたレギュラー争いをしていく楽しみもあります。と言っても、試合に出られるという保証はない。新人のような気持ちでのゼロからのスタートだと思って新しいチャレンジを頑張りたいし、サッカーを楽しみたい」

ジュビロ磐田での背番号は50に決まった。ユニフォームの色が変わっても、その数字が変わっても、構わない。期限付き移籍は、金輪際の決別でもない。

「期限付き移籍で一度離れますが、またガンバに戻ってきたいという気持ちは強く持っています」

それに何より「遠藤保仁がサッカーをするんだから、全然いい」。

https://news.yahoo.co.jp/byline/takamuramisa

Share Button