【番記者の視点】スプリント数J1最下位 “走れない”G大阪、得点力不足との相関性は
◆明治安田生命J1リーグ第11節 G大阪0―0札幌(4日・パナスタ)
完成度の差は歴然としていた。GK一森純のPKストップもあり、スコアレスドローに持ち込んだ札幌戦。ペトロヴィッチ監督が就任5年目の札幌は、マンツーマンからの攻撃的な守備、多彩なサイド攻撃からシュート19本を放ち、何度もG大阪のゴールに迫った。一方、片野坂監督が就任1年目のG大阪は、18歳MF中村仁郎をJ1初先発で起用するなどチームに変化を加えたがゴールは遠かった。
これで公式戦4試合連続無得点。単発的なチャンスはあったが、後半は押し込まれる時間が増えた。走り負けにも見えた後半について、片野坂監督は「前半は攻守にわたってアグレッシブにプレーできているが、それを後半まで続けられるか。フィジカル的な疲労もあると思いますし、ボール保持でポジションを取るのが遅い、切り替えが遅いところもある。90分通してできるようにならないと厳しい」と振り返っていた。
11節を終え、G大阪がJ1の18チームで最下位のデータがある。1試合平均のスプリント回数だ。159回。トップの鳥栖・231回とは大きな差がある。攻撃が単発に終わる印象が強いのも、スプリントで選手が前線になだれ込んでいくようなプレーが少ないからでは、と推測する。後半30分、FW山見、MF小野瀬とつないで最後は右サイドバックのDF柳沢が合わせた場面のように、後方から選手が湧き出てくるような攻撃が増えなければ、独力でゴールをこじ開ける選手が不足している現状の打破は苦しい。
この試合、片野坂監督は得点源として期待されるFWレアンドロ・ペレイラをハーフタイムで代えた。理由を聞くと「ペレイラは前線で体を使って起点になってくれた。ただ起点をつくったあと、相手に脅威を与えるスペースがある中で、動く、というところは難しさがあった」と返ってきた。巧みにボールを収めるプレーも見せていたレアンドロだが、ポストプレーの後に連続した動きで裏に抜ける、カウンターの先頭を切って相手のDFラインを押し下げるなど、“無駄走り”になったとしても、実はチームにとって重要なスプリントが足りないように見えた。
実績あるブラジル人ストライカーを、ハーフタイムで代えた指揮官の采配は「走らないと勝てない」とチームに発したメッセージだと感じた。昨季もG大阪は平均スプリント数で20クラブ中19位。“体質”を変えるのは、簡単ではないかもしれない。しかし今季就任した片野坂監督による土台作りの段階にあるG大阪が、走れないチームのまま浮上していく姿を、今は想像できない。