稲本潤一「辞める理由がない」。高橋陽一先生からの要求は日韓W杯ゴール後の指差しパフォーマンス

稲本潤一(南葛SC)インタビュー@後編

1997年、当時最年少の17歳6カ月でJリーグデビューを果たし、1999年には「黄金世代」の主軸としてワールドユース(現U-20ワールドカップ)で準優勝を経験。その後、3度のワールドカップ出場やアーセナルを皮切りに海外クラブで9年間プレーするなど、トップランナーとして走り続けてきた。

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そんな稲本潤一も、今年9月で43歳となる。日本のサッカーシーンの中心で活躍してきた黄金世代も、次第にユニフォームを脱ぐ選手が増えてきた。だが、稲本は今シーズンもピッチに立つ。

戦いの舞台は、Jリーグから関東サッカーリーグ1部へ。南葛SCの一員となった稲本が今季にかける想いを語る。

◆稲本潤一@前編はこちら>>「好きなキャラは翼くん。今の自分は松山くん。背番号8は井沢くんに…」

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—- チームメイトには、普段は社会人として働いている選手も多いと思います。彼らとはどのようにコミュニケーションを取っているのですか。

「普通に接しますよ。プロではないと言っても、いろんなチームでやってきた選手ばかりですし、うまい選手もたくさんいます。カテゴリーが関東リーグというだけで、レベル的にはJ3でやれるくらいのチーム力はあると思いますよ」

—- Jリーグに行きたいというモチベーションの高さを感じますか。

「南葛は東京都リーグから、関東2部、関東1部と2年連続で上がってきているので、上がることに対するモチベーションがチームに根づいている感じがします。ただ、ここからJFLに上がるのが大変だということも聞きます。そのぶん、僕自身もモチベーションは高いです」

—- JFLに昇格するには、関東1部リーグで優勝して、全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(全国CL)に出場し、そこで2位以内に入る必要があります。しかも、その全国CLは1次ラウンドが3日間連続、決勝ラウンドは中1日で3試合をこなすという超ハードスケジュールになります。

「ちょっと過酷すぎて想像できないですけど、だから2チームくらい作れるような戦力が必要だと思います。実際に今の戦力であれば2チームは作れますし、選手を入れ替えてもチーム力が落ちないくらいのレベルは備わっていると思います。もちろん、まずはリーグ戦で優勝しなければいけないわけですけど。今は開幕が待ち遠しいですね」

—- 対戦相手のレベルはどのように認識していますか。

「そこは始まってみないと、わからないですね。レフェリーのジャッジも含めて難しさはあると思いますけど、サッカーをやることに変わりはないですから、そこまで違いはないかなと思っています。対戦相手にもサッカーでご飯を食べてきた選手もいますし、大学や高校で全国大会に出場したような選手ばかりだと思うので、簡単に勝てるほど甘い世界ではないと思います」

—- 南葛でのポジションは、やはりボランチになるのでしょうか。

「そうだと思いますけど、現状CBにケガ人が多かったりするので、そこもなくはないと思います」

—- 今野泰幸選手との2ボランチが形成されれば、もはや日本代表ですね。

「コンちゃんはCBかな? 中盤の真ん中は人数が結構いるので。でも、関東リーグでふたりが並べば、確かにちょっと不思議な光景かもしれないですね」

—- 今野選手も含め、最近は元JリーガーがJFLや地域リーグの舞台に来て、そこから再びチームとともにJリーグを目指すというケースが増えていますよね。

「本気で上に行こうというクラブが増えてきたのは、夢のあることだと思います。Jリーグができたての頃に子どもだった人たちが、今は経営者になってサッカーチームを作ろうという流れも出てきていますよね。

それこそ、南葛のパートナーは、僕のガンバユース時代の後輩の嵜本晋輔(2004年引退)の会社ですし。そういう人たちが本気でJリーグを目指そうとなって、それを叶えられるだけの受け皿ができてきたのは、日本サッカーにとってすごくいいことなんじゃないかなと思います」

—- 稲本選手は現在42歳となりましたが、2年前に現役を続ける理由を聞いた時に「サッカーが好きだから」と言っていました。今もその気持ちが原動力なのでしょうか。

「今もそうですね。やっていて楽しいですし、カテゴリーが下がろうが、どこでやろうが、サッカーが好きな気持ち、楽しい気持ちはまったく消えていないです。まだまだ身体も動きますし、今のところ辞める理由がないんですよね」

—- 同級生の遠藤保仁選手(ジュビロ磐田)や小野伸二選手(北海道コンサドーレ札幌)も、J1の舞台で戦っています。彼らに対してどのような想いを持っていますか。

「まだ現役を続けている選手もいますし、すでに引退してしまった同級生も多いですけど、みんな違う場所で刺激し合いながら頑張っていると思います。みんながやっていることに対して注目していますし、どうしているのかなって、気にはなりますよね」

—- 今も黄金世代の面々とは連絡を取り合ったりしているんですか。

「まあ、そこまで頻繁ではないですけど。ただ、播戸(竜二/2019年引退)はよく連絡してきますね。YouTubeに出てくれって。出ないですけど(笑)」

—- 今年の関東リーグ1部の開幕は4月2日(土)になります。新たな挑戦に向けて、意気込みを聞かせてください。

「個人としては試合に出て、チームの勝利に貢献すること。そのためにここに来たので、試合に出てしっかりと貢献したいと思っています。

もちろん、試合に出る、出ないにかかわらず、やるべきことはあると思っています。ピッチ外のところでも、チームに役立つことをやっていきたいと思います。何よりJFLに昇格することが一番のミッションなので、そこは必ず成し遂げたいですね」

—- Jリーグに昇格するまで現役を続ける覚悟はありますか。

「最短で2年ですからね。そこは身体とも相談しながらやっていきたいと思っています」

—- ちなみに、高橋陽一先生からは何か要求はありましたか。

「点を入れてくれと言われました。ワールドカップの時のイメージがあるらしく、点を入れて、あれ(自身を指さすポーズ)をやってくれと(笑)。ぜひ、その期待にも応えたいですね」

【profile】稲本潤一(いなもと・じゅんいち)1979年9月18日生まれ、大阪府堺市出身。1997年、ガンバ大阪の下部組織からトップチームに昇格し、当時最年少の17歳6カ月でJリーグ初出場を果たす。2001年のアーセナル移籍を皮切りにヨーロッパで9年間プレーしたのち、2010年に川崎フロンターレに加入。その後、北海道コンサドーレ札幌→SC相模原を経て、2022年より関東サッカーリーグ1部・南葛SCに所属する。日本代表として2000年から2010年まで82試合に出場。ポジション=MF。181cm、77kg。

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