稲本潤一「南葛SC移籍」を語る。好きなキャラは翼くん。今の自分は松山くん。背番号8は井沢くんに憧れて、ではない

稲本潤一(南葛SC)インタビュー@前編  昨季かぎりでSC相模原を退団した稲本潤一が新天地に求めたのは、あの「南葛SC」だった。

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東京都葛飾区を拠点とする同クラブは、漫画『キャプテン翼』の主人公・大空翼が所属したチームと同じ名前。作者の高橋陽一氏の地元であり、同氏が代表を務める、いわば漫画の世界を具現化したクラブである。

将来のJリーグ入りを目指す南葛SCは、今季5部リーグに相当する関東サッカーリーグ1部に所属。Jリーグではないチームに、元ワールドカップ戦士が加入した理由とは? 42歳となった稲本に、新天地にかける想いを訊いた。

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—- あらためて、南葛SCに加入した経緯を教えてください。

「相模原と契約満了になった時に、一番初めに声をかけてくれたクラブだったからです。本当に必要としてくれているんだなと感じましたね。カテゴリー的には昨季の相模原と比べると、3つ下がることになりますけど、そこはあまり気にはなりませんでした。

それよりもクラブの方と話をしてみて、上に上がりたい意欲を感じましたし、組織としてもすごくしっかりしているという印象を受けました。将来性のあるクラブだと感じたので、ほとんど迷わずに移籍することを決めました」

—- そもそも、南葛SCのことは知っていましたか?

「何人か知っている選手が在籍していましたし、やっぱりキャプテン翼のイメージですよね。子どもの頃に影響を受けたアニメですから、そのクラブでプレーができることが単純にうれしかったです」

—- 「キャプツバ」世代ですか?

「もろ、ですね。ジャンプで読んでいましたし、アニメも欠かさず見ていましたよ」

—- 好きなキャラは誰ですか?

「やっぱり翼くんですね。僕も小学生の頃はセンターフォワードで点取り屋だったので、翼くんが憧れでした。布団の上でオーバーヘッドの練習もしたりして」

—- ツインシュートも?

「やろうとはしましたけど、絶対無理でした。タイミングよく蹴れたとしても、きっとボールはブレないでしょうね(笑)」

—- 今のご自身のプレースタイルは、どのキャラに一番近いと思いますか?

「もう、前に行けなくなってきていますからね。連続したプレーだったり、前に行くスプリントの回数はどうしても減ってきているので、うしろでドンと構えている松山光くんあたりでしょうか」

—- 南葛のユニフォームも漫画の世界と似たデザインですが、実際に着てみた感想は?

「すごい不思議な感覚ですよ。子どもの頃に見ていたチームに自分がいるのは。『ホンマに南葛にいるんや』とフワフワした感じがしましたね。ほかのチームに移籍した時とは違った気持ちです」

—- 背番号は8番になりましたが、なぜこの番号を選んだのでしょう?

「今までつけてこなかった番号にしたいな、と思っていて。空き番号のなかにあった8番がパッと目に入ったので、直感的に選びました」

—- 井沢守くんに憧れて?

「ではないですね(笑)」

—- ですよね(笑)。話を戻します。昨季かぎりでSC相模原を契約満了となった時は、どういった心境だったのでしょうか。

「まあ、そうなんだという感じで、冷静に受け止めていましたよ。ただ、まだサッカーをやりたい気持ちがあったので、切り替えてやるしかなかったですね」

—- あらためて昨季を振り返ると?

「チームとしては途中で監督が代わったなかで、高木(琢也)さんになってからの成績ならJ2に残れていたと思います。4チームが降格するレギュレーションでなければ残れていたと思うので、少し不運な部分もありました。僕自身も多少、試合に使ってもらったなかで結果を出せなかったのは残念ですけど、やっていて面白いサッカーはしていたと思います」

—- ご自身のパフォーマンスを振り返ると?

「ピッチに立った時間は短かったですが、多少はチームに貢献できたという気持ちはあります。運動量の部分はどうしても落ちてしまったので、もっとやらなければいけなかったという想いもあります」

—- まだJリーグでやれるという想いもあったと思いますが、今季はJリーグから離れることになります。そこに悔いはありますか。

「Jリーグではないところではありますけど、Jリーグだろうが、関東リーグ1部だろうが、個人的にはそんなに関係ないと思っています。サッカーは、サッカーですから。

それに、南葛の監督の森(一哉)さんはフロンターレ時代のコーチなんですが、目指すサッカーが僕の好きなスタイルなんですね。サッカーを楽しめると思えたことも、南葛に決めた理由のひとつです」

—- Jリーグとは異なる環境に戸惑うことはないのですか。

「もう合流して1カ月以上経ちましたが、自分が成長できるような練習だったり、戦術を使ってくれるので、楽しくサッカーができています。練習場は人工芝のグラウンドなんですが、それも相模原時代に経験しているので、問題はないです。

J1から来たコンちゃん(今野泰幸/ジュビロ磐田→)とかクニ(関口訓充/ベガルタ仙台→)とかは、多少戸惑うかもしれないですね。クラブハウスもないですし。僕の場合は相模原で過ごした3年間の経験が生かされると思います。ただ、練習が夜なのは、最初は苦労しましたね」

—- やはり天然芝と人工芝では、だいぶ違うものですか。

「そうですね。相模原の1年目の時はケガをすることが結構ありましたから。そのなかでケアの仕方だったり、負担がかかりやすい関節の使い方であったりは、その1年間で試しながら身につけられたと思います。

2年目、3年目はほとんどケガがなかったので、人工芝には順応できたと思っています。ただ、相模原の場合は、さすがに試合は天然芝だったんですが、関東1部に関しては公式戦も人工芝でやることもあるので、そこはちょっと未知数ですね」

—- 夜に練習というのも、生活リズムが変わってきそうですね。

「子どもと過ごす時間は減りましたね。昼間は暇と言えば暇ですけど、身体のケアを優先に過ごしています」

—- 不安を感じる部分はありますか?

「特にないですね。確実に上を目指しているクラブですし、それができるくらいのポテンシャルもあると思っています。強い意欲を感じられるクラブのなかで、戦力として見てもらいながらプレーができることはありがたいことですし、やりがいを感じています」

(後編につづく)

【profile】稲本潤一(いなもと・じゅんいち)1979年9月18日生まれ、大阪府堺市出身。1997年、ガンバ大阪の下部組織からトップチームに昇格し、当時最年少の17歳6カ月でJリーグ初出場を果たす。2001年のアーセナル移籍を皮切りにヨーロッパで9年間プレーしたのち、2010年に川崎フロンターレに加入。その後、北海道コンサドーレ札幌→SC相模原を経て、2022年より関東サッカーリーグ1部・南葛SCに所属する。日本代表として2000年から2010年まで82試合に出場。ポジション=MF。181cm、77kg。

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