終了直前「痛恨ミス」のあとのドラマ「決めた川崎ダミアン」が「ミスのガンバGK石川慧」を二度も立たせた理由【G大阪vs川崎】(1)
【明治安田J1リーグ 第3節 ガンバ大阪vs川崎フロンターレ 2022年3月6日 15:03キックオフ】
■【動画】「信じられないゴール」試合終了直前、川崎・小林悠がGK石川慧から奪ってダミアンが決めた
レアンドロ・ダミアンのヘディングシュートがキャッチされ、川崎の猛攻もここまで、のはずだった。
もうすぐ訪れるであろう試合終了を喜ぶに違いない、と片野坂知宏監督にレンズを向け、大きなゴールキックが飛んでくるのに合わせて顔がこちらを向くのを待っていると、突然川崎側が盛り上がり、ダミアンがサポーターの前に向かってゆっくりと走っていた。
どうやら同点ゴールが入ったらしいが、どういうことなのか全くわからなかった。
サポーターの前で喜んだダミアンがそのままポジションに戻らずに、ガンバのゴールキーパー石川慧に声をかけ、引き起こすようにしたのを見ても、まだわからなかった。あと1プレーで逆転勝利を狙うために再開を急いでいるのかと思ったが、それならばサポーターの前に行って喜んだことと辻褄が合わない。
しかし、そこでガンバサポーターがダミアンを非難する反応をしなかったことで、なんとなく予想がついた。川崎にとってはラッキーで、ガンバにとってはアンラッキーな、そして重大なミスがあったのだろうと。
実際には、石川が背後に残っていた小林悠に気づかずにボールを置いてしまい、小林がすかさずそれをつついてダミアンへパス、そしてゴール、ということが起こっていた。
■ダミアンは知っている
この日の試合をガンバ側から簡単に振り返ると、先制したものの、宇佐美貴史が負傷退場したこともあり次第に防戦一方に。長い時間凌いでいたが、とうとう75分に追いつかれてしまった。しかし直後に小野瀬康介が勝ち越しゴールを奪うと、再開前に選手が自主的に集まって戦い方を確認し合う様子を見せ、その後は引くだけではなく前に出ることで川崎の圧に負けないという姿勢をプレーで示して勝利目前まできていた。
そんな激熱展開の試合を最後の最後で引き分けに変えてしまった石川は、試合終了と同時に崩れ落ちた。そんな彼に真っ先に駆け寄っていったのは、ダミアンだった。
ゴール後と同じく石川を立たせたダミアンはハグしながら言葉をかけ、その先はガンバの選手に託した。
しかしまだ気になっていたのであろう。ピッチ中央での整列が終わると、もう一度石川のもとへ歩を進めた。
彼がどれだけ懸命にゴールを守っていたかを、フォワードとしてゴールを脅かしていたダミアンは知っている。セーブだけでなく、ビルドアップがプレスに脅かされれば避難所になり、前半から押し込まれている時間にはボールをキャッチせずに時間を使い、と勝利のために出来ることを全てやってきたその姿を、誰よりも近くで見ていたのだから。