“来日10年”G大阪FWパトリックが明かす異文化への戸惑い、親近感、日本人の心 「2番目の故郷ではなく、一番のホーム」

【独占インタビュー】2013年の来日当初は「言語の違い」と未知の「雪」に戸惑い

ガンバ大阪のブラジル人FWパトリックは、2013年の初来日から10年目のシーズンを迎えた。現在、Jリーグに所属する外国籍選手の中では、セレッソ大阪の韓国代表GKキム・ジンヒョンの14年目、柏のブラジル人FWドウグラスの11年目に次ぎ、横浜F・マリノスのブラジル人DFエドゥアルド、名古屋グランパスのブラジル人MFレオ・シルバ、V・ファーレン長崎のブラジル人FWクリスティアーノ、サガン鳥栖の元韓国代表DFファン・ソッコと並び、3番目に長く日本でプレーしていることになる。日本への帰化も視野に入れるパトリックは、何にそこまで心を奪われるのか。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小田智史/全3回の1回目)

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パトリックは、大西洋に面した州の中ではブラジル最北端にあるアマパー州の州都マカパーの生まれ。2007年のブロデビュー後、名門ヴァスコ・ダ・ガマなど10クラブ以上を渡り歩き、13年2月にアトレチコ・ゴイアニエンセから川崎フロンターレへの期限付き移籍でJリーグ挑戦の扉を開くことになった。自身初の国外移籍に少なからず戸惑いはあったが、日本人との触れ合いが勇気を与えてくれたと振り返る。

「最初は、言葉の違い、寒さ、今まで見たことがなかった雪にインパクトを受けたのを覚えています。ただ、実際に日本人の方と触れ合うことによって、距離がすごく縮まったように感じます。それは日本人の方がすごく親切で、自分のことのように僕の世話やサポートをしてくれて、親近感が湧きました」

サンバの国ブラジルと言えば、人々は明るく陽気なキャラクターで知られている。パトリックの目には、日本人は慎重に関係を育んでいく傾向があると映ったという。

「ブラジル人は初めて会った人でも冗談を言って笑えるような感じで、思ったことをそのまま口にします。逆に、日本人の方はまずは冗談を言える関係を築いてから始まる。一旦自分の中で整理するというか、言うべきか、言わないべきか、考えてから言葉を発すると思います。ブラジル人が持っている熱い気持ち、情熱はもう少しあってもいいのかなとも思ったりすることもありますが、そうすると日本人らしさが失われてしまうかもしれないので、どちらがいいとは言い切れないですよね(苦笑)」

Jリーグでの一番の思い出は優勝したナビスコ杯決勝での2ゴール

来日10年目、今では「かつ丼」と「お好み焼き」がお気に入りの食事だというパトリックが、ずっと身を置いてきたなかで考える“日本が世界に誇れること”は――。

「ブラジル人の僕から見ると、日本はすごく綺麗な国・街のイメージが強いです。誰も道端にゴミを捨てていないことには驚きました。広島時代に行った宮島もすごく綺麗かつ神秘的な場所で、印象に残っています」

これまで、川崎、ヴァンフォーレ甲府、ガンバ大阪、サンフレッチェ広島でプレーしてきたパトリック。ガンバ大阪ではシーズン途中に加入した14年に元日本代表FW宇佐美貴史と強力コンビを形成し、J1リーグ、ナビスコカップ(現ルヴァンカップ)、天皇杯と3冠達成に大きく貢献。自身もJリーグベストイレブン、ナビスコカップMVPにも輝いた。それぞれのクラブに特別な感情があるなかでも、最も在籍期間が長いガンバ大阪での思い出はやはり格別なようだ。

「まずはガンバでタイトルを獲れたこと。2014年のナビスコカップ決勝では、サンフレッチェ広島相手に2点ビハインドの不利な状況から、自分の2得点で盛り返して(3-2で)勝利することができたので、思い出深いタイトルです。(17年6月限りで契約満了により)一度ガンバを離れることがあったんですが、最後の日にサポーターの方々がたくさん足を運んでくれて、直接お別れできたことは今でも鮮明に記憶に残っています」

身長189センチ・体重82キロの恵まれた体躯を生かし、前線で起点となるだけでなく、歴代28位タイのJ1通算81ゴールを記録しているパトリックだが、日本サッカーで研鑽を積むことで、自らの成長も実感していると語る。

「日本のサッカーはインテンシティーの高い切り替えが続き、テクニックもハイレベル。年々成長していると思いますし、その結果、ヨーロッパでプレーする日本人選手の数も増えています。個人的にも、Jリーグで成長させてもらい、選手としての幅も広がったと感じています」

2022年シーズンの目標は13ゴール以上&タイトル獲得

パトリックは今、日本のことを「2番目の故郷ではなく、一番のホームと呼べる国」と表現する。「昔であれば、ブラジルに帰りたいと思うこともあったんですが、今は日本にいたら、ブラジルに帰りたいということはないくらいです」。そんな34歳のストライカーは、22年シーズンに高いモチベーションで臨んでいる。

「ガンバはタイトル獲得であったり、自分たちの目標を果たせるだけの力はあると思っています。個人的には、去年(13得点)よりも多くのゴールを獲ること。自分の名前をガンバの歴史に刻めるような選手になりたいです。(日本語で)サポーターのみなさん、いつもチームのために応援ありがとうございます。今シーズンも僕たちのことを信じ続けてほしいと思います。ピッチに入ってから、ピッチをあとにするまで、ベストを尽くすことを誓います」 “日本人の心”を胸に、ガンバ大阪のために全身全霊を注ぐパトリックのプレーから今季も目が離せない。

[プロフィール] パトリック/1987年10月26日生まれ、ブラジル出身。パイサンドゥ―ヴィラ・リカ―サンタ・クルズ―サルグエイロ―イカザ―デモクラタ―ヴェラ・クルズ―サンジョゼ―アメリカーノ―ミスト―ヴァスコ・ダ・ガマ―ヴィラ・ノヴァ―アトレチコ・ゴイアニエンセ―川崎―甲府―フォルトレーザ―ガンバ大阪―広島―ガンバ大阪。J1通算236試合81得点。強靭なフィジカルと決定力を武器に、最前線で存在感を発揮する生粋のストライカー。来日10年目、日本への愛は外国籍Jリーガーの中でも随一を誇る。

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