J1・2022シーズンは「20試合でレッドカード9枚」の異常事態…退場者増加が「起こった理由」!ガンバ大阪FWパトリックら「3つの退場シーン」を掘り下げる!
2月18日、川崎フロンターレvsFC東京のカードで開幕した2022シーズンのJ1リーグ。そこから10日間で行われた20試合で出されたレッドカードの数は、なんと9枚にも上る。およそ2試合に1回のペースで退場者が発生している異常な事態といっていい。
9枚のレッドカードのうち3つのケースをピックアップし、起こっていることを探った。
■(1)パトリック:ガンバ大阪vs鹿島アントラーズ
まずは大きな話題を呼んだ2月19日に行われた鹿島アントラーズ戦でのガンバ大阪FWパトリックの退場シーン。今シーズン最初のレッドカードとなった。
37分、浮き球をトラップしたパトリックに対して、鹿島のFW鈴木優磨がスライディングタックル。このルーズボールをパトリックが拾おうとしたところ、鈴木に足を抱え込まれた。パトリックが自身の足を抱えた鈴木の右手を振り払おうとした際の行為が、ヒジ打ちとジャッジされ、パトリックに退場処分が下された。
このとき、荒木主審は2人の位置からやや離れており、先に鈴木がパトリックの足を抱え込んでいたことは角度的に目視できなかった可能性が高い。また、別の映像を見てみると、パトリックが故意にヒジ打ちを狙ったようには見えず、鈴木の左足を触って剥がそうとしたように捉えることができる。
一方で、別角度からこのプレーを見ていたVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)には鈴木のファウルが見えていたと思われる。オンフィールドレビューを主審に促した可能性も考えられるが、最終的に決断するのは主審であり、オンフィールドレビューを行う義務はない。そのため、今回のケースでは実施されることなく、パトリックは退場処分となった。
ただ、このレッドカードはかなり厳しい判定だったと言える。
試合ののち、昨シーズン限りで審判を引退した家本政明氏が『DAZN』の「Jリーグジャッジリプレイ」で言及したように、主審は自分の立ち位置などを客観的に判断し、VARに映像を要求するべきだったのかもしれない。
鈴木にイエローカード、もしくは喧嘩両成敗として2人にイエローカードを提示するのが妥当だったのではないだろうか。
■(2)扇原貴宏:名古屋グランパスvsヴィッセル神戸
続いては、ヴィッセル神戸に今季から加入したMF扇原貴宏が、名古屋グランパス戦で退場になったシーンについて。
58分、2-0でリードしていた名古屋がカウンターを仕掛けると、FW酒井宣福が裏に抜け出してペナルティエリア手前まで侵入。そこを後ろから追いかけていた扇原が酒井の上半身に手をかけて倒してしまい、一発退場に。
これはDOGSO(決定機阻止)の4つの条件である「プレーの方向、反則とゴールの距離、守備側競技者の位置と数、ボールをキープまたはコントロールできる可能性」のすべてを満たしており、レッドカードは妥当な判定だったと言える。
■(3)ファビアン・ゴンザレス:ジュビロ磐田vs清水エスパルス
最後のケースは、ジュビロ磐田FWファビアン・ゴンザレスの、清水エスパルス戦での退場シーンについて。
1-2でリードを許していた磐田は78分、前線にロングボールを送る。すると、ファビアン・ゴンザレスが競り合いの際に相手DF鈴木義宜の顔面を左腕で叩くような行為をとり、一発退場となった。
この判定には、FIFA競技規則に基づいて日本サッカー協会(JFA)が採用している判定基準「レフェリングスタンダード」が影響していると見ていいだろう。今シーズンのレフェリングスタンダードのテーマは「選手生命を脅かすようなプレー」となっているが、ファビアン・ゴンザレスの行為はこのテーマに該当するものだった。
鈴木の顔面に左腕を当てた格好となったが、このファウルによって鈴木は長期離脱を強いられる可能性もあったため、この判定も妥当だと言える。
■様々な要因が絡み合っての「レッドカード大量発生」
今回は3つの事象を取り上げたが、改めて9人の退場シーンを見返すと、そのほとんどは妥当な判定だったと言える。
そもそも、J1では2021シーズンからVARが採用されており、主審の見えないところでのファウルもしっかりとチェックされるため、J2やJ3よりも退場者が増加する可能性があるということは、念頭に置いておきたい。もちろん、最初に提示されたレッドカードがイエローカードやノーカードなどに変わるパターンもあることは確かだ。
また、球際の厳しさやインテンシティが高まっている昨今のJリーグでは、激しい接触の増加により、カードが昔よりも増えることは、ある程度仕方ないとも言える。
さらに、先述したがJFAは「レフェリングスタンダード」という判定基準を設けている。今季のテーマとなっている「選手生命を脅かすようなプレー」に対してはさらに厳しくジャッジされるため、今回取り上げたファビアン・ゴンザレスや同チームのDF山本義道、そして浦和レッズMF岩尾憲の退場シーンのようなプレーにはカードが提示されることになる。
20試合で9枚のレッドカードが出ているのは、確かに異常事態ではあるが、詳細にそれぞれのケースを確認すると、様々な要因が絡み合った結果だと思われる。いずれにしても、退場者がサッカーの魅力を削ぐことは間違いない。フィールドでは、フェアなプレーを心がけてほしい。