【番記者の視点】G大阪・片野坂知宏監督の“大分対策” 古巣相手にみせた進化の過程

◆YBCルヴァン杯 ▽1次リーグA組2節 大分 2―2 G大阪(2日・昭和電工ドーム大分)

引き分けに終わった大分戦後、G大阪の片野坂知宏監督は大分サポーターの元へと向かった。昨季まで6年間率いた古巣のサポーターからあたたかい拍手で迎えられ、何度もスタンドに向かって手を振り、頭を下げていた。スタジアムを半周し、多くの人々と柔らかい表情で再会のあいさつをかわしていた。

敵将として、大分時代と逆のベンチ前からピッチを見つめた初の試合。「違和感はありました。雰囲気も懐かしいなと。いろんなことを考えたゲームでした」と明かしたように、さまざまな感情を抱えて臨んだ様子だった。大分に対し、もっとも効果的な手は何か。選んだ手段は、自身が教え込んだ手でもあるビルドアップをつぶすことだった。

大分はJ2を戦う今季、下平新監督を迎えて新たなスタートを切った。しかしGKもビルドアップに積極的に関与し、ボールを大事にするスタイルは片野坂監督時代から継続している。一方でG大阪は今季ここまでの試合(3―4―3)とはフォーメーションを替え、4―2―3―1で大分の狙いを制限。トップ下に入ったMF山本が、大分のパス回しの鍵を握るアンカーのMF小林を監視し、相手ゴールの近くでボールを奪い、一気に攻め切る策に出た。

片野坂監督は、大分の選手たちの特徴を十分に把握した上で「いい守備からいい攻撃、(攻守の)切り替えで上回れるんじゃないか」という分析したという。CKから大分に先制を許したが、前半43分には狙い通り高い位置からの守備で大分のミスを誘発し、MF奥野のゴールで同点に。試合を通じて大分はビルドアップを続け、G大阪はプレスで応戦。試合は両者の狙いが絡み合いながら進み、2―2と引き分けた。

大分時代、カタノサッカーと呼ばれたGKから攻撃を構築するスタイルは、指揮官の代名詞だった。J3からJ1まで押し上げ、退任後もクラブのスタイルに影響を与えるほどの貢献を果たしたからこそ、この日も拍手で迎えられたはずだ。しかしこの日のG大阪指揮官は、違うアプローチで勝利を目指した。ボール保持を重視する姿勢は残しつつも、今いる戦力を生かして、勝利に直結する方法を模索しているようにも見える。まだ完成形は見えないが、カタノサッカーも進化の過程にあることが、古巣相手に見せた戦いににじんだ。

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