G大阪パトリックの一発退場シーン、元日本代表DFが推奨した“ルールの明確化”案は?
【栗原勇蔵の目】勝負の世界という意味で、「鈴木優磨の勝ち」という時代でもない
ガンバ大阪のブラジル人FWパトリックは、2月19日に行われたJ1リーグ開幕節・鹿島アントラーズ戦(1-3)で前半38分に一発退場となった。背後からタックルした鹿島FW鈴木優磨に対し、パトリックが腕で押し退けた行為が「乱暴な行為」としてレッドカードの対象と見なされたが、このシーンを巡っては鈴木が右手でパトリックの左足を抱える形となっていたことから、ジャッジを疑問視する声が続出。1試合の出場停止処分が科される結果となったプレーについて、あくまで一意見として元日本代表DF栗原勇蔵氏へ見解を訊いた。
【動画】G大阪FWパトリック、鹿島FW鈴木優磨とやり合い一発退場となった問題シーン
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G大阪が1-2とビハインドで迎えた前半38分、パトリックの退場劇が起きる。自陣でのクリアボールに反応したパトリックが身体を入れてボールをキープしようとした際、後方から鈴木がスライディングタックルでボール奪取を試みる。体勢を崩したパトリックが両手をピッチにつきながらも次のプレーに移行しようとするも、鈴木が右手でパトリックの左足を抱える形となり、鈴木を振りほどこうとしたパトリックの腕が鈴木を直撃した。
これが「乱暴な行為」と見なされて荒木友輔主審がレッドカードを提示。パトリックが猛抗議し、直後にビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)で検証されたものの判定は覆らなかった。
現役時代に球際のデュエルを得意とした栗原氏は、「“勝負の世界”という意味では、鈴木優磨の勝ちなのかもしれません。彼にとっては、少しでも勝つ確率を上げるためのプレーだと思います。そこをどう捉えるかは人それぞれ」と断ったうえで、「ただ、今はフェアプレーが推奨されていて、VARもあるので、もうそういう時代ではなくなりつつあるのも事実です」と言葉を続ける。
ラフプレーの素振りを見せた時点での退場化など、基準の明確化を提案
「鈴木優磨はパトリックの足を抱え込んでいます。パトリックの腕が当たったのも、悶絶するくらい痛かったのか。審判を欺く行為と見ればシミュレーション扱いで、フェアプレー精神には欠けていると言われても仕方ないと思います。一方のパトリックにも過失がないわけではない。対戦して見てきたパトリックは本来、温厚な性格。選手としては鈴木優磨のようなプレーをされると、イラっとしてしまうところですが、多少なりとも腕を使おうとしています。レッドカードはかわいそうな気もしますけど、もう少し冷静にプレーしないといけなかった。駆け引きに負けたと言えばそれまでになります」
栗原氏はパトリックの退場が起こる前の前半31分、ゴール前に走り込んだパトリックが鹿島DF関川郁万を倒し、VARとの交信を経て主審から注意を受けていたことにも触れている。
「鈴木優磨とのワンプレーだけ見ると、(一発退場は)どうしても厳しいようには見えます。でも、主審はその前も見ているので、『またやった』という印象があったかもしれません。過去には肘打ちしようとしたけど、たまたま当たらなかったプレーもあるので、『蹴る素振りをした、殴る素振りをした時点で退場』というように基準は明確すべきだと思います。そうすれば、選手がシミュレーションする必要もなくなりますから」
栗原氏は「審判の判定がすべてで、正直答えはない」と、冷静に振り返っていた。
[プロフィール] 栗原勇蔵(くりはら・ゆうぞう)/1983年9月18日生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。