J1全18クラブ「戦力格付けランキング」 横浜FM&浦和はAランク級、唯一のEランク査定は?
【識者コラム】攻撃力、守備力、監督力から2022年シーズン戦力を独自査定
30年目のJリーグは2月18日、川崎フロンターレ対FC東京の“多摩川クラシコ”で先行スタートし、開幕する。2022年シーズンに向け、J1・18クラブの戦力はどう変わったのか。ここでは、全チームの戦力値を独自査定。攻撃力、守備力、監督力の3ポイントを100点満点で算出し、総合点から戦力ランキングとして紹介する。
【一覧リスト】2022年シーズン戦力値を独自査定――J1全18クラブ「戦力格付けランキング」
【ポイント1:文句なしの最強Aランクは?】
昨季王者の川崎が戦力的には優位に立つ。数値でも分かるとおり攻守のバランスが取れており、4年で3回のリーグ優勝を成し遂げた鬼木達監督の手腕にも信頼感がある。ただし、あらゆるチームの標的になるなかで3連覇という偉業を果たすにはクリアするべきハードルがいくつかある。
常に対戦相手にターゲットにされることは昨年も同じだが、相対的にチーム力が上がっており、さらにタフな試合が続きそうだ。さらに現主力メンバーだけでフルシーズン戦い抜くのは難しい。川崎はハイレベルな競争状態が若手を成長させているが、それでもMF三笘薫(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ)やDF旗手怜央(セルティック)はもともとルーキーの時から同世代の特Aランクだった。現時点でサブと見られる選手たちの突き上げが求められる。
Bランクのなかでも、Aランクに近いのが横浜F・マリノスと浦和レッズ。攻撃力がトップの横浜FMはチャレンジャーの立場をうまく生かして川崎を追い抜くことは十分に可能と見るが、守備面にやや不安がある。ハイラインをベースにした戦い方をしながら、失点を抑えられたのはDFチアゴ・マルチンス(→ニューヨーク・シティ)の働きが大きかった。その彼が抜けた穴を新加入DFエドゥアルド(←サガン鳥栖)のみで埋め切るのは難しく、長期離脱から復帰したDF畠中槙之輔を含めて、組織的に補っていく必要はあるだろう。
浦和はリカルド・ロドリゲス監督の戦術が浸透しつつあり、プレシーズンのスーパー杯で川崎を破った自信もプラスになりそうだ。ただし前線の選手層がやや薄く、西野努TD(テクニカルダイレクター)も移籍期間中の補強を示唆している。それ次第で攻撃力を大きく引き上げる可能性がある。
リーグ制覇には経験値の部分で川崎と横浜FMより未知数なところはある。リカルド監督の戦術を熟知するMF岩尾憲を補強し、中盤に軸ができたことは大きい。ただ、川崎や横浜FMにも言えるが、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)により過密になる日程をどうこなすかという意味で、若手の成長を含めて選手層を上げる必要はあるだろう。
改革元年のFC東京&G大阪、タレント力へ注目も過度な期待は危険
【ポイント2:ハマれば躍進も? 隠れた注目候補は?】
Cランクのなかで注目したいのはアビスパ福岡だ。3ポイント(攻撃力、守備力、監督力)を評価する形で8位タイにしたが、組織的な堅守速攻がベースにあり、長谷部茂利監督の選手交代も明快で効率性が高い。つまりはこの数値だけで表れないプラスアルファが見込める。また新エースFWルキアンとMF田中達也やMF金森健志のホットラインがうまく構築されれば攻撃力も引き上がる。
FC東京やガンバ大阪は新監督の戦術が1年目でどこまで組み込まれるかが生命線だ。タレント力のポテンシャルは上位勢にも引けを取らないだけに、うまく噛み合ったら躍進してもおかしくない。ただ、改革元年のシーズンになるので過度な期待は危険かもしれない。
北海道コンサドーレ札幌も継続路線で、MFチャナティップは川崎に移籍したが、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の浦和時代の教え子であるFW興梠慎三とアカデミー出身のDF西大伍を補強し、若いチームに経験が加わったことはアドバンテージだ。多くのチャンスを作りながら得点できないジレンマを脱却すれば、目標であるACL圏内とカップ戦のタイトル獲得も現実的な目標になる。
【ポイント3:苦戦必至も? 不安を残したチームは?】
Dランクにした5クラブはどこもきっかけ1つで一桁順位を狙える戦力を備えている。そのなかで昨シーズン7位の鳥栖は主力の大半が抜けて周囲から心配の声が上がるが、川井健太監督がそうした“雑音”に惑わされることなく、強度の高いサッカーを植え付けている。今のところは期待値の部分が大きいが、既存戦力、キャプテンに就任したMF藤田直之など新加入の選手たちとも、能力は決して低くないので、噛み合わせ次第で上位躍進もありうる。
リーグ5位を目標に掲げる湘南ベルマーレも中盤にはMF永木亮太、MF米本拓司といった実力者が加入したことは心強い。チームを率いる山口智監督も、指揮官としての資質に疑いの余地はなく、来年の今頃には評価を大幅に上方修正する必要が生じているかもしれない。それは鳥栖の川井監督や昨シーズンの清水を残留に導いた平岡宏章監督、ジュビロ磐田でJ1初挑戦となる伊藤彰監督にも言えることだ。
一方ですでに豊富な経験を持つ曺貴裁監督が率いる京都サンガF.C.は唯一のEランクとしたが、それはあくまで開幕時点の評価に過ぎない。攻守に機動力の高いサッカーで序盤戦から勢いづけば、若い選手たちの成長も相まって、大躍進を果たしても不思議ではない。今回は相対評価でランク付けしたが、上位から下位まで、かなり拮抗した戦いが予想される。
[著者プロフィール]
河治良幸(かわじ・よしゆき)/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。