J1全順位予想。識者5人が推す優勝候補は3チーム。残留争いは半数以上が関わる激戦

Jリーグ2022開幕特集

30年目のシーズンを迎えるJ1リーグがまもなく開幕する。はたして今季は、どんな戦いが繰り広げられるだろうか。Jリーグに精通する識者5名に、優勝、残留争いの行方を含めてJ1全順位を予想してもらった――。

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ACL次第も消去法による優勝候補最右翼は川崎逆転あるなら、継続性が目を引く神戸か浦和か

中山 淳氏(サッカージャーナリスト)

1位 川崎フロンターレ

2位 ヴィッセル神戸

3位 浦和レッズ

4位 名古屋グランパス

5位 FC東京

6位 鹿島アントラーズ

7位 セレッソ大阪

8位 横浜F・マリノス

9位 ガンバ大阪

10位 アビスパ福岡

11位 北海道コンサドーレ札幌

12位 サンフレッチェ広島

13位 ジュビロ磐田

14位 湘南ベルマーレ

15位 清水エスパルス

16位 京都サンガ

17位 柏レイソル

18位 サガン鳥栖

直近5シーズンで4度の優勝を誇り、しかも目下2連覇中。まさに黄金期の真っ只中にある王者・川崎が、今季も大本命になる。

ただし、主力選手が続々とヨーロッパに旅立ったこともあり、戦力的にダウンした印象は否めない。そういう意味では、他チームとの比較において、消去法による優勝候補最右翼という評価が実際のところ。悲願のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)優勝にエネルギーを注ぐことも予想されるだけに、リーグ優勝を逃しても不思議ではない。

その川崎を脅かす存在が、昨季からの継続性によってチーム力がアップしそうな神戸と浦和だ。

昨季3位の神戸は、トーマス・フェルマーレン(引退)の後釜に槙野智章(浦和→)を補強し、中盤には扇原貴宏(横浜FM→)を獲得。シーズン途中に大物新戦力を獲得する資金力もあるため、たとえACLに参戦しても最終的には上位争いに加わるだろう。

一方の浦和は、リカルド・ロドリゲス監督のサッカーが浸透し、戦術に沿った補強策を実行した点がプラス材料。昨季も多くの選手を起用してきた指揮官の方針を考えれば、ACLとリーグ戦で選手をやり繰りすることもできるはず。伸びしろの部分を含めれば、予想以上の躍進を遂げる可能性を秘めたチームだ。

また、守備からのチーム作りに定評のある長谷川健太監督が就任した名古屋も、継続性が期待できるチームに数えられる。逆に、充実の戦力を誇るFC東京と鹿島は、新監督がどれだけ早い段階でチーム戦術を落とし込めるかが最大のカギになる。

一方、残留争いに目を向けると、主力が大量流出したうえ、金明輝監督が退任した鳥栖が最も厳しい状況。毎年のように選手を引き抜かれても必ず予想以上の成績を残してきた神通力が、今季も続くのかは疑問だ。

神通力という点では、柏のネルシーニョ体制も同じ。多くの主力を失ったなか、指揮官にチームを蘇生させるエネルギーが残されているのか。現状を評価すれば、厳しいと言わざるを得ない。

その他、京都、清水、湘南、磐田あたりも、残留争いに巻き込まれる可能性を秘めたチームに挙げられる。

3連覇狙う川崎に昨季、一昨季のような力はない活性化している横浜FMが代わって本命に浮上

杉山茂樹氏(スポーツライター)

1位 横浜F・マリノス

2位 川崎フロンターレ

3位 ヴィッセル神戸

4位 鹿島アントラーズ

5位 浦和レッズ

6位 名古屋グランパス

7位 FC東京

8位 サガン鳥栖

9位 セレッソ大阪

10位 ガンバ大阪

11位 アビスパ福岡

12位 北海道コンサドーレ札幌

13位 清水エスパルス

14位 サンフレッチェ広島

15位 柏レイソル

16位 湘南ベルマーレ

17位 京都サンガ

18位 ジュビロ磐田

昨季の上位と下位とが大きく入れ替わるような変動はないと見る。ジャンプアップするチームも、急降下するチームもない。

移籍は年々活発化しているが、戦力に大きな影響を与えるような日本代表級は欧州に行く傾向があること。同様に、そういった質の高い外国人選手が増加していないことなどが、その理由として挙げられる。

18チームはつまり、AクラスとBクラスとに分かれると見る。FC東京(7位予想)がその分岐点になる。

優勝争いは際どい争いになるだろう。3連覇を狙う川崎に、2位に勝ち点18差をつけた一昨季、同13差をつけた昨季のような、圧倒的な力はないと見るからだ。

昨季、ケガでシーズンの大半を棒に振った大島僚太が、守田英正、田中碧の穴をある程度埋めるに違いないが、左ウイング・三笘薫の穴は埋まっていない。新加入のチャナティップ(札幌→)は、タッチライン際を縦に引っ張る推進力に欠ける。三笘と同型という感じではない。

鬼木達監督の采配を持ってしても、急降下は免れても、3連覇を狙う勢いはないと見る。

本命は横浜FM。DFチアゴ・マルチンス(→ニューヨーク・シティ)、FW前田大然(→セルティック)、DFティーラトン(→ブリーラム・ユナイテッド)、MF扇原貴宏(→神戸)らが抜けたが、カバーする選手はいる。新陳代謝が適度に働いている分、活性化している。勢いが出る源と見る。

ケヴィン・マスカット監督の采配も悪くない。その選手交替のセンスは、鬼木監督と高次元で拮抗している。

追いかける存在は、神戸、鹿島、浦和。しかし、いずれも決定的な力はない。

神戸は、DFトーマス・フェルマーレン(引退)が抜けた穴が大きそう。浦和は、好チーム化しているが、優勝を狙うには粒が小さい印象。

大化けが期待できるとすれば、監督がスイス人監督レネ・ヴァイラー(アル・アハリ→)に変わった鹿島か。潜在能力はそれなりに高いので、いい意味で”脱ブラジル化”が進めば、それが成績に直結する可能性が高い。

昨季以上に心配なチームは、札幌、柏、広島。大阪の2チームも油断できない。そして、戦力は低くないのに毎度降格争いに巻き込まれる清水、逆に戦力はイマイチながらしぶとく降格を免れている湘南、さらには昇格組の京都、磐田とともに演じられそうな降格争いは、熾烈を極めそうだ。

継続性を重視してタイトル奪取の可能性を分析候補は横浜FM、神戸、川崎、浦和の4チーム

原山裕平氏(サッカーライター)

1位 横浜F・マリノス

2位 ヴィッセル神戸

3位 川崎フロンターレ

4位 浦和レッズ

5位 名古屋グランパス

6位 北海道コンサドーレ札幌

7位 鹿島アントラーズ

8位 ガンバ大阪

9位 FC東京

10位 サンフレッチェ広島

11位 アビスパ福岡

12位 ジュビロ磐田

13位 セレッソ大阪

14位 京都サンガ

15位 清水エスパルス

16位 柏レイソル

17位 湘南ベルマーレ

18位 サガン鳥栖

そういえば、去年の予想は散々な結果でした。優勝と予想した鹿島は早々に監督が解任となり、3位予想の広島は上位争いにすら絡めず、そして4位と6位に推した清水とG大阪は残留争いを強いられる始末。

逆に、8位予想の横浜FMが2位、10位の神戸が3位、13位の浦和が6位と躍進。降格圏の17位に置いた鳥栖(実際は7位)には、心よりお詫びを申し上げます。

ニアピンも、2位とした川崎(実際は優勝)と11位の札幌(実際は10位)くらいのもの。徳島と大分の降格は正解だったとはいえ、自らの目利きのなさを思い知る結果になってしまいました。

さて、気を取り直して今シーズン。予想のスタンスは例年どおり”継続性”を重視しました。

優勝とした横浜FMは、昨季最終節の川崎との戦いが印象的だったから。FW前田大然(→セルティック)とDFチアゴ・マルチンス(→ニューヨーク・シティ)が抜けたのは痛手だけれど、確固たるスタイルが備わっているのはやはり強み。代わって入った新戦力がその穴をしっかりと埋めてくれるでしょう。

2位の神戸も昨季からのよい流れを評価。アンドレス・イニエスタがフル稼働し、夏に再びビッグネームを確保することにでもなれば、悲願の初優勝も見えてくるかもしれません。

3連覇を狙う川崎は、勢いのある若手が次々に海外移籍する流れのなかで、昨季と同等の戦いを実現するのは難しいような……。リカルド・ロドリゲス体制2年目の浦和はスタイルの成熟が図られることは間違いないけど、得点力がやや不安。

いずれにせよ、AFCチャンピオンズリーグにも参戦するこの上位4チームが継続性も含めて頭ひとつ抜けていて、このうちのどこかがタイトルを獲得すると思われます。

一方、予想が難しいのは監督が代わった7チーム。日本での実績がある監督を迎えた名古屋、FC東京、G大阪は比較的結果を想像しやすいけれど、鹿島と広島の2チームは、もはや未知。新監督のやり方がハマるか、ハマらないかによって、さらに上にも、もっと下にもいってしまうかもしれません。

下位予想は昨季の成績をベースに、継続性を加味して。鳥栖さん、すいません。先に謝っておきます。

欧州第一線のヴァイラー監督を招聘しブラジル路線を変更した鹿島に未知なる魅力

小宮良之氏(スポーツライター)

1位 鹿島アントラーズ

2位 川崎フロンターレ

3位 ヴィッセル神戸

4位 浦和レッズ

5位 横浜F・マリノス

6位 名古屋グランパス

7位 サガン鳥栖

8位 サンフレッチェ広島

9位 北海道コンサドーレ札幌

10位 ガンバ大阪

11位 アビスパ福岡

12位 FC東京

13位 ジュビロ磐田

14位 清水エスパルス

15位 柏レイソル

16位 セレッソ大阪

17位 湘南ベルマーレ

18位 京都サンガ

冒頭から言い訳がましいが、Jリーグの順位動向を占うのは難しい。とりわけ近年は、コロナ禍でプレシーズンの様子を網羅するのは不可能。移籍ウィンドーは4月1日までオープンしていて、キャンプ後もまだ人の入れ替えがあり得るし、さらに有力日本人選手の、夏の欧州移籍の流れは加速しそうな状況にあるからだ。

ただ、チーム力は大きく変わらない。川崎の優位は動かず、鹿島、神戸、浦和、横浜、名古屋が上位を争う形だろう。ここに新監督の広島など未知数のクラブがどこまで食い込めるか。

鹿島はブラジル路線を変更し、欧州第一線のスイス人監督レネ・ヴァイラー(アル・アハリ→)を招聘した。Jリーグ屈指のFW上田綺世、気鋭のアタッカー・荒木遼太郎、昨年のベストボランチと言えるディエゴ・ピトゥカ、代表復帰も叫ばれるサイドバックの安西幸輝を擁し、どこまで伝統を革新できるのか。新戦力として加わったFW鈴木優磨(シント・トロイデン→)、MF樋口雄太(鳥栖→)も期待。未知数であるがゆえの楽しみがあるチームだ。

一方、東京、柏、C大阪はやや苦しむことになるかもしれない。たとえば、東京は「攻撃サッカー」に看板をつけ替えたが、補強の中身とズレがある。柏はネルシーニョ監督続投で勝負強さは継承できるが、ここ1、2年、選手の台頭がないのは懸念材料。C大阪はミゲル・アンヘル・ロティーナ監督の放出が尾を引き、もはや遺産も尽きた。

台風の目になりそうなのが、鳥栖だ。深刻な財政難で多くの主力を引き抜かれ、川井健太監督が新たに率いるチームで、降格圏に沈むことも十分に考えられる。しかしJリーグ1、2を争うGK朴一圭がいることで踏みとどまり、活路を開くのではないか。また、今後10年以上日本代表の左サイドバックを任せられる逸材、中野伸哉もいる。

補強した面々も魅力的。FW宮代大聖(川崎→)は新人王級の活躍も望める。伸び悩むMF西川潤(C大阪→)はこのままでは”かつての天才”に転落するが、心機一転できたら日本サッカーを担う素材だ。

そして今季も見逃がせないのが、Jリーグで”世界”を感じられる選手である神戸のアンドレス・イニエスタ。彼こそがサッカー。そのプレーを見るためだけに、スタジアムへ足を運ぶのも一興だろう。

その他、日本人で別次元を感じさせてくれるのは、浦和の酒井宏樹。右サイドをダイナミックに支配するプレーは、欧州のトップレベルのサイドバックに匹敵する。

危険な兆候がうかがえるも川崎が優勝候補筆頭ACLのない名古屋と鹿島に巻き返しの可能性も

浅田真樹氏(スポーツライター)

1位 川崎フロンターレ

2位 名古屋グランパス

3位 鹿島アントラーズ

4位 横浜F・マリノス

5位 浦和レッズ

6位 ヴィッセル神戸

7位 FC東京

8位 ガンバ大阪

9位 北海道コンサドーレ札幌

10位 サンフレッチェ広島

11位 セレッソ大阪

12位 アビスパ福岡

13位 清水エスパルス

14位 湘南ベルマーレ

15位 ジュビロ磐田

16位 サガン鳥栖

17位 柏レイソル

18位 京都サンガ

過去2シーズン、いずれも独走で連覇を果たした川崎も、今季は戦力ダウンが否めない。

守田英正、三笘薫、田中碧、旗手怜央と、日本代表級の若手が次々に抜ければ無理もないが、先日の富士フィルムスーパーカップを見ても、先発11人の平均年齢は30歳超。栄枯盛衰の危険な兆候がうかがえる。

だが、強すぎる川崎が少々弱くなったからといって、その上に立てるクラブがあるかは話が別。正直、これといった”推し”を見つけられない。

多少駒が減ったとしても、サッカーの完成度、さらには鬼木達監督の高い修正能力も含めて考えると、依然、川崎が優勝候補の筆頭だろう。

対抗馬を挙げるとすれば、昨季の戦いぶりと今季の戦力補強から面白そうなのは、神戸と浦和。しかし、ともにAFCチャンピオンズリーグ(ACL)との両立があり、それがどう影響するか。逆に、ACLがない名古屋と鹿島は、その利を生かせれば、今季の巻き返しがありそうだ。

いずれにしても、昨季ほど川崎と他クラブとの力の差はなく、6位までに予想した6クラブに優勝の可能性があると見る。ポイントはシーズン序盤。ここで川崎がまた走ってしまえば、昨季の再現もありうる一方で、他がついていって先頭集団を形成できれば、優勝争いは面白くなる。

7位以下に予想したクラブには、何が起きても驚かない。優勝はともかく、上位進出の可能性もあるだろうが、一歩間違えれば、残留争いに巻き込まれる危険性もはらむ。

つまりは、降格しても不思議のないクラブが全体の半数以上もあるわけだが、特に危険度が高いのは13位以下に予想した6クラブだ。

今季J2から昇格してきた磐田と京都、昨季辛うじてJ2降格を免れた清水と湘南の他では、このオフに多くの主力がクラブを離れた柏と鳥栖に危険信号が灯る。著しい戦力流出が士気に影響するようなら、見た目以上の戦力ダウンにつながりかねず、不安は大きい。

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