福西崇史の2022シーズンJ1順位予想。一強の川崎を脅かすのはどこか

Jリーグ2022開幕特集

2月18日に開幕するJリーグ。スポルティーバでは、今シーズンも解説者、識者らによるJ1の順位予想を掲載する。今回は、かつてジュビロ磐田などで活躍した元日本代表MFの福西崇史さんに、各チームの見どころを解説してもらった。

◆【図】Jリーグ30年。歴代最強チームのフォーメーション

◆ ◆ ◆

<福西崇史のJ1順位予想>

1位 川崎フロンターレ 2位 ヴィッセル神戸 3位 浦和レッズ 4位 横浜F・マリノス 5位 名古屋グランパス 6位 鹿島アントラーズ 7位 FC東京 8位 北海道コンサドーレ札幌 9位 ガンバ大阪 10位 アビスパ福岡 11位 サンフレッチェ広島 12位 セレッソ大阪 13位 ジュビロ磐田 14位 清水エスパルス 15位 サガン鳥栖 16位 京都サンガF.C. 17位 柏レイソル 18位 湘南ベルマーレ

【川崎の強さは今季も健在】

2度目の2連覇を達成した王者・川崎フロンターレの強さは、今季も健在だろう。鬼木達監督6年目で築きあげた強固なベースがあり、昨季から成長著しい若手の上積み、旗手怜央が抜けた穴をチャナティップ獲得で補強できたのも非常に大きい。ACLを戦ううえでも厚い戦力が整っている。

これといった隙は見当たらないが、不安要素を強いてあげるなら、チームがマンネリ化しないためにどう刺激を入れるか。ケガ人が出て離脱を余儀なくされた場合の対策くらいだろう。ほかに対抗馬を挙げるのが難しいほど、頭一つ抜けた存在だ。

ヴィッセル神戸は、J1のなかでも随一のタレント集団を三浦淳寛監督がどうまとめるかが見えてきた昨季だった。その上積みで優勝への意欲が現実的に高まってきていると見て2位にあげた。

攻撃陣が豪華な一方、懸念材料を挙げるなら守備面。トーマス・フェルマーレンが引退した穴には槙野智章を補強して選手の枚数は揃うが、シーズンを通して最終ラインが強度を保てるか。ACLのプレーオフを勝ち上がった場合を考えると、選手層にやや不安を感じる。

浦和レッズはリカルド・ロドリゲス体制で1シーズンを戦い、昨季は天皇杯優勝、先日もスーパーカップで勝利しチームとして充実してきた。今季はチーム全体でどれだけ優勝を強く意識できるかが重要になる。

ただ、昨季の得点力不足をどう補うのか。そして浦和の顔とも言えるベテラン選手が一気に抜けた影響も懸念されるところ。苦しい時期に、今のメンバーでどれだけ立て直せるか試される。

【新監督の手腕が楽しみ】

横浜F・マリノスはチームとしてのベースは確立され、4位以上に入る安定感は間違いなくある。ただ、昨季は対策された時に攻撃陣が大いに苦しんだ。今季の補強ではそこへの不安は拭いきれない。前田大然が抜けた穴を埋めるのは難しく、現戦力を見ると仲川輝人の復調が求められる。昨季からの課題をどう克服するかで順位は大きく違うだろう。

名古屋グランパスはマッシモ・フィッカデンティから長谷川健太新監督に交代したが、堅守をベースとした戦い方が大きく変更されることはないだろう。もともと個の能力が高い選手を揃えるなかで、レオ・シルバや仙頭啓矢など、色を加えられる実力者の獲得にも成功した。新チームに早くフィットすれば、上位は固いチームだ。

レネ・ヴァイラー新監督になり、チームがどう変化するのかやや読めないのが鹿島アントラーズだ。それでも中盤から前線にかけて、個性の強いタレントが揃っている。町田浩樹や犬飼智也など主力が流出した不安はあるが、補強した選手を含めて最終ラインが整えば上位に絡んでくるだろう。

FC東京はアルベル・プッチ・オルトネダ新監督になり、サッカーのスタイルが大きく変更されるのは間違いない。個々の能力、サッカーIQの高い選手が多く揃うので、選手と監督双方の思いがうまくマッチすれば、新しいスタイルは早めに浸透すると予想。そうなれば1年目から上位に絡んでくるだけの力はある。注目される高卒ルーキーの松木玖生もチームへのいい刺激になるはず。

ミハイロ・ペトロヴィッチ体制5年目でチームとして熟成された北海道コンサドーレ札幌は、中位以上は間違いないだろう。ただ、ストライカーの興梠慎三獲得はよかったものの、チャナティップ移籍の影響は大きい。上位に行くためには攻撃の変化という部分で、新加入のガブリエル・シャビエルがどれだけ仕事ができるかにかかっている。

ガンバ大阪は昨季あれだけ苦戦したのが不思議なほど、タレントもチームのベースも持っている。それだけに片野坂知宏新監督が枠組みを示し、攻撃の形を構築できれば力を出せるのは間違いない。監督の手腕が楽しみなチームだ。

アビスパ福岡は昨季の予想で厳しい評価をしたが、昇格組ながら8位の成績はお見事。その自信とチームのベースを生かして、今季も中位はキープできるはず。そこからさらに上位進出を狙うため、ルキアンという武器も手に入れた。形がハマった時は怖いチームだ。

【昇格組は昨季のベースがJ1に対応できるか】

今季の様相が読めないチームのひとつがサンフレッチェ広島だ。昨季からメンバーはほぼ変わらないため、監督交代が大きく左右するシーズンになる。力のある選手は揃っているので、ミヒャエル・スキッベ新監督がどれだけスムーズにベースを作りあげるか。残留を争うような戦力ではないが、序盤で負けが込むと自信を失い、一気に下位もあり得る。

昨季途中から小菊昭雄監督に交代し、チームの戦い方はまとまりつつあるのがセレッソ大阪。2年目の今季が本当の戦いだろう。瀬古歩夢、坂元達裕という主力が抜けたが、力のある選手を多数獲得。戦力が充実し、小菊体制2年目でどれだけやれるか期待したい。

3年ぶりのJ1復帰のジュビロ磐田には期待しているが、ベースのメンバーがあまり変わっていないなかで、J1のスピードとパワーにどれだけ対応できるかが気になるところ。エースのルキアンを福岡に引き抜かれた影響は大きく、杉本健勇とジャーメイン良という2人の補強で、攻撃の形をどう構築し直すか。伊藤彰新監督の腕の見せどころだ。

清水エスパルスは、昨季終盤にミゲル・アンヘル・ロティーナ監督から平岡宏章監督に交代して残留に成功し、今季も引き続き指揮をとれるのは大きい。若手を中心にいい選手が揃っているなかで、昨季からベースアップができれば面白い存在になる。

サガン鳥栖は昨季から大きくメンバーが入れ替わり、ベースとなっていた選手の多くが抜けて、チーム作りが一番読めない。これだけ抜けると積み重ねてきたものがリセットされ、もう一度作りあげるのは大変な作業だ。代わりとなる選手は獲得できたが、ベースから作り直すのは時間がかかるだろう。

昨季J2で作りあげた基盤がある京都サンガF.C.が、大崩れすることはないだろう。ただ、それがJ1でどれだけ通用するかは未知数。J2で通用した個の力がJ1では通用しないというのは往々にしてある。J1経験者が、どれだけプラスアルファをもたらしてくれるかに期待したい。

戦力の流出が激しい柏レイソルは、かなり苦戦すると予想している。なかでもクリスティアーノや神谷優太など、個で勝負できる選手が抜けたのは厳しい。昨季も途中で主力が抜けて苦労したが、これだけメンバーが変わってどう戦うのか。楽しみより、不安のほうが大きいと言わざるを得ない。

【序盤に勢いに乗ったチームが可能性大】

昨季、ギリギリで残留となった湘南ベルマーレは、引き続き山口智監督が率いるのは好材料。さらに、永木亮太、米本拓司ら経験豊富な選手を獲得できたのは大きな補強だが、課題の得点力不足解消という面では物足りない。決定的な仕事ができる選手が出てこなければ、今季も難しいシーズンになるだろう。

王者・川崎が2連覇中ということもあり、リーグ全体が「打倒川崎」に燃えているだろう。ただ、今季は監督交代や選手が大きく入れ替わったチームが多く、またコロナ禍の影響で海外の監督や新加入選手の合流が遅れるなどの、チーム作りで読めない部分が多い。

11月後半から開幕するカタールW杯の影響で、リーグは11月頭に終了する過密日程となっており、とくにACL組はシーズン途中でチームに修正を加える時間はほとんどない。そんななかで、やはりベースができあがっているチームが優位になる。チーム作りにもたついたところを出し抜いて、序盤に勝ち点を獲得したチームがそのまま勢いに乗って上位に進出する可能性は大いにある。

一強状態のなか、川崎以外のチームがどれだけ躍進してくるかが楽しみなシーズンだ。 福西崇史ふくにし・たかし/1976年9月1日生まれ。愛媛県出身。新居浜工業高校から1995年にジュビロ磐田入り。ボランチのポジションで活躍し、チームの黄金期の主力としてプレーした。日本代表では02年日韓W杯、06年ドイツW杯に出場。国際Aマッチ64試合出場7得点。その後、FC東京、東京ヴェルディでプレーし、2009年に現役引退。現在は解説者として活躍中。

リンク元

Share Button