元日本代表FW大黒将志が告白、中国生活で受けた“衝撃”とは? 「日本では絶対見られない」

【特別インタビュー#2】大黒将志氏が振り返る中国生活の“リアル”

日本のサッカーファンの皆さま、こんにちは。中国サッカーメディアにて活動をしている久保田嶺です。いよいよ1月27日にカタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の日本対中国戦が行われます。日本にとっては絶対に負けられない試合、そして中国にとっても李霄鵬(リー・シャオポン)新監督の初陣となり、死闘になることは必至です。

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そこで、今回は2013年に中国1部リーグの杭州緑城でプレーした元日本代表FWで、現ガンバ大阪アカデミーストライカーコーチの大黒将志氏を直撃しました。先日公開の第1弾「中国サッカーについて感じたこと」に続き、第2弾の「中国生活編」となります。

◇   ◇   ◇

――2013年、初めての中国生活だったと思いますが、当時の率直な感想を聞かせてください。

「全体的に、イタリア(トリノ)やフランス(グルノーブル)時代より生活がタフでしたね。ヨーロッパではある程度生活が準備されていましたが、中国では全部自分でやる必要がありましたから」

――例えば、休日はどのように過ごされていましたか?

「愛犬を日本に残していましたので、3週間に1回は日本へ帰国していました。それがメインですが、ほかには(中国最大の都市である)上海に行ったり、杭州にある世界遺産の湖『西湖』にもよく行ってましたね。あそこの周りをプラプラ散歩するのは気持ち良かったです。その湖でよくファンに声をかけられていました」

――中国生活で驚いた出来事はありますか?

「まずはタクシーですね。今はどうなっているか分かりませんが、当時私が乗るタクシーはエアコンを付けてくれない運転手が多くて、真夏に暑くて暑くて(笑)。中国語を話せませんでしたが、『暑い、エアコンを付けてくれ』程度であればジェスチャーで十分に伝わります。でも、完全に伝わっているのに、運転手のおじさんたちはほとんど無視してきました」

――それは大変ですね。

「ただ、私も学んでいきます。ある時また無視されたので、財布からチップを出しました。10元札(現在のレートで約180円)とかだったと思います。それを運転手に渡すと、それからすぐに冷房をガンガンにつけてくれました(笑)。そういうことか、と面白かったですね。それからはタクシーに乗るたびにチップを渡し、快適に過ごせるようになりました」

中国リーグ挑戦は「プラスにもなる」

――さすがの順応力です。ほかにも印象的なエピソードはありますか?

「練習後や休みの日によく焼肉を食べに行っていたのですが、その焼肉屋の店員たちが店内で鬼ごっこを始めた時は笑ってしまいました。店内で走り回って。これは日本では絶対に見られないですね」

――その様な刺激的な中国生活を終え、Jリーグ復帰に至った経緯を教えてください。

「私は2年契約で杭州緑城に加入したので、2013年のシーズンが終わった際、まだ契約が1年残っていました。しかし、当時チームの監督だった岡田武史さんが2013年シーズンをもってチームを去ることが決まり、それに伴って一緒に来ていた日本人のチーム関係者、コーチや通訳の方もチームを離れていきました。つまり2014年シーズンのキャンプインで中国に戻ると、日本人が急に私だけになっていました。

外国人新監督の下、私はチームの構想から外されてしまいました。もともと岡田さんが私を呼んでくれたというのもありますし、『結果を出していようとも、日本人プロジェクトが終わった今、大黒も出て行ってくれ』というチームの空気感がひしひしと伝わってきました。練習の紅白戦にも出場させてくれず、最終的にユースチームのメンバーと練習をさせられるようになります。

それで毎日のユースチームとの練習に真剣に取り組んでいると、正式に移籍の申し出がチームからありました。そして、日本へ戻ることになります」

――実際に中国リーグを経験された立場から、日本人選手たちが中国リーグへ移籍することは賛成でしょうか?

「すべてに賛成とは言えませんが、選手に強い意志があり、移籍する際はしっかり契約を結ぶことができれば良いと思います。今も変わらないと思いますが、決してリーグのレベルは低くなく、生活面でも異文化に触れることができますし、行くことはプラスにもなると思います」

――最後に、中国サッカーファンに一言お願いします。

「私が在籍していた時に、応援していただきありがとうございました。中国のファンの皆さんとは、非常にいい関係を築けていたと思っています。今、私はガンバ大阪でストライカーコーチをしており、サッカーの育成に関わっています。今後は監督なども目指しており、ぜひまた機会があれば中国でも仕事がしたいと思っています。その時はまた、どうぞよろしくお願いします」

[プロフィール]

大黒将志(おおぐろ・まさし)/1980年5月4日生まれ、大阪府出身。ガンバ大阪ユース―ガンバ大阪―札幌―ガンバ大阪―グルノーブル(フランス)―トリノ(イタリア)―東京V―横浜FC―FC東京―横浜FM―杭州緑城(中国)―京都―山形―京都―栃木。2005年、W杯アジア最終予選の北朝鮮戦で後半アディショナルタイムに値千金の決勝ゴールを挙げ、一躍ヒーローに。公式戦通算222ゴールを積み上げた卓越した得点嗅覚を生かし、2021年1月に現役を引退して、ガンバ大阪アカデミーのストライカーコーチに就任。

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