G大阪新エンブレムのなぜ サッカー界では異質のシンプルデザインに行きついたわけ
今年30周年を迎えたG大阪が、エンブレムの変更を決断した。10月2日の札幌戦前に発表された新デザインは、Gの文字を青、黒、白の3色でデザインした至ってシンプルなもの。一見すれば、まったくサッカークラブのエンブレムには見えない。SNSなどの反応をみると、サポーターの間でも賛否は分かれていた。「シンプルでカッコいい」「前の方がよかった」「何のマークかわからない」さまざまな意見はあるが、なぜこのデザインに行きついたのかが気になった。
顧客創造部企画課の奥永憲治氏は「まず大前提として、エンブレムを変える、ということありきだったわけではありません。ただ、30周年を機にこれからのG大阪のあるべき姿を考え、多くの人々に知ってもらいたい、となった中で、エンブレムを変更することになり、このデザインになりました」と語る。クラブのさらなる発展に向け、大きな変化の旗頭としてエンブレム変更がなされたわけだ。
今季の30周年に向け、数年前から立ち上がったプロジェクトの中でエンブレム変更案が浮上したが、クラブ内でも旧エンブレムへの愛着の声はあったという。大阪の鳥「もず」と、大阪の木「いちょう」にサッカーボールが配され、大阪を代表するサッカークラブ、という意味が込められたデザインは、サポーターの中で定着していた。
一方、クラブは30周年を機に、「日本を代表するスポーツエクスペリエンスブランド」というコンセプトを打ち出し、このタイミングを大きな変革の時ととらえた。サッカークラブの枠を超え、新たな体験を生み出し、熱狂、そして生活に新たな様式を生み出すブランドとして成長しよう、という壮大な試みだ。そのためにガンバ大阪というブランドをより浸透させるため、エンブレムにもクラブが体現するコンセプトを組み入れたいという狙いから、変更という方向性は固まった。
サッカークラブの枠を超えたコンセプトを表現し、より日常で親しんでもらえるエンブレム…。非常に困難なお題だが、日常生活に溶け込むという意味では、まずシンプルであるという必要性が挙がった。加えて「デジタル化が進み、情報をスマホなどで見る機会が圧倒的に多くなっている。その時に、複雑なデザインのものだと、視認性が難しい。そうすると、シンプルなデザインを目指すという方向でした」と奥永氏。複数の候補は、どれも共通してシンプルなデザインのものだったという。その中で、社内での協議を経て決定。クラブの頭文字・Gを上下に分け、上部はゴールを、下部は青い炎を表現。さらに中央部分がハート形を描くことで、「ゴール」「炎」「ハート」を表現したデザインの採用が決まった。
この新エンブレムが、アパレルなど日常に溶け込みやすいことは間違いないだろう。何かのきっかけで、ニューヨーク・ヤンキースのキャップのように、サッカーへの興味が薄い若い女子の間で、エンブレム入りのキャップが流行る日がくる…かもしれない。するとアパレル収入が激増し、ワールドクラスの選手獲得が可能になる…かもしれない。変化を恐れず、勝負に打って出たクラブの思いは確かに感じた今回のエンブレム変更。そこからつながる明るい未来を誇大妄想しつつ、まずは今季のJ1残留を祈る。