「勝たなければいけない」をチーム全体で示すために【G大阪対仙台】「気持ちを行動で示すことができるか」(2)
明治安田J1リーグ 第28節 ガンバ大阪vsベガルタ仙台 2021年9月12日 18:33キックオフ
勝てる流れだと感じる瞬間は何回かあった。
たとえば、最も危機感を持ち、それを試合中に隠さない選手の1人だった小野裕二が負傷交代してしまったことはチームにとって大きなマイナス要素かと思われたが、代わりに入ってきたのは同じく危機感を露わにしている矢島慎也で、彼が同点ゴールを決めた時。
あるいは、パトリックのPKで2-2とした状態から、今度はガンバのハンドで仙台にPKが与えられるのかどうかという場面。主審はノーハンドとしていたがVARが介入。このパターンは判定が変わることが多いが、通常よりも長いVARチェックの末に元の判定通りノーハンドという決着をした時。
しかし、どちらもその後すぐに失点を喫した。
矢島はこう言う。「手応えはない。気持ちとか、戦う姿勢とかはみんな持っている。気持ちだけで解決できる問題じゃない」
ここで、先程の言葉に戻りたい。 “勝たなければいけないという気持ちをこうして試合中のプレーや行動で示すことができた選手が何人いただろうか” これは、気持ちがあるかどうかということで使われることが多い言い回しになっているが、今回に限っては、気持ちはあるのにそれをプレーで示せない状況に置かれている選手が多い、ということだ。
パトリックは最前線の選手だから、ある程度自由にできたわけだ。裏を狙うのは、文字通りのボールを引き出す動きで、そうしなければ停滞したままになってしまうから。中盤の選手が一旦足もとにボールを置いてから次のプレーを探し始めることが目立つのは、最初と最後ではないところ、つまり様々な状況に応じた細かい約束事が決まっていないということだ。プレスも、最前線で実行してみるものの、そこから連動したものにはならなかった。
■ガンバは異質な存在になりつつある
だから、勝ちたいという気持ちや良い流れに全く関係なくあっさりやられてしまう。
矢島は自身のゴールシーンをこう振り返っている。「(藤春がクロスを上げる時)僕らは絶対そこ(ニア)に入ると決めている。その結果得点がついてきた。シャドーに入るとああいう形でのボールが出てくる。児玉コーチとの練習後の練習の成果が出た」
成果が出ているのは、全体ではなくあくまでもそういう局所的なものだ。修正や改善という言葉は何度となく出てくるが、それが全体で共有されるものにまで及んでいるのかは試合からはわからない。システマティックな連動の繰り返しが当たり前になってきている中で、ガンバは異質な存在になりつつある。
矢島はPKの場面も振り返った。「チームで誰が蹴るという決まりはない。僕が取ったのであそこは自分が蹴りたかった」PKキッカーを決めることと試合中の約束事を決めることは別ではあるが、そういうところもしっかりしておいた方が良いのではないかと思ってしまうくらい、ガンバは危機に瀕している。勝ち点は30のまま、降格圏とのとの勝ち点差は7だ。
勝たなければいけないという気持ちを試合中のプレーや行動でチーム全体で示すことができるチームはいつできるのだろうか。
試合後に選手たちを迎えたサポーターは、今の状況と正面から向き合う覚悟を決めたことを拍手で表していた。
■試合結果
ガンバ大阪 2-3 ベガルタ仙台
■得点
37分 富樫敬真(仙台)
39分 矢島慎也(ガンバ)
42分 富樫敬真(仙台)
60分 パトリック(ガンバ)
79分 西村拓真(仙台)