“真夏の15連戦”真っ最中のG大阪。新システムを導入し、『盾』と『矛』の2パターン併用で乗り切る!
若手の移籍はゼロ。他クラブが羨む厚い選手層を保つ
熾烈な残留争いをするなか、今夏の補強はJ2の水戸ホーリーホックから完全移籍で獲得したDF柳澤亘のみに終わりそうだ。
シーズン開幕前から懸念されたサイドバックで、8月6日の横浜F・マリノス戦では移籍後初スタメン。左右両方できる新戦力について、松波正信監督は「ボールに行くときの強さは発揮してくれた。ボールの進め方もファーストタッチやパスの狙いどころもしっかりやってくれた。戦術理解度が高い」と及第点の評価を与えた。
クラブは3月の新型コロナクラスター(集団感染)化で、東京五輪期間中に延期になっていたリーグ戦を消化。他クラブのようなブレイクはなく、7月17日のアビスパ福岡戦から始まっている“真夏の15連戦”を戦っている最中だ。
その中で近年は流出が激しかった若手の移籍はゼロ。他クラブが羨む厚い選手層を保つことができ、毎試合5~6人をターンオーバーしながら勝点の積み上げに成功している。
松波体制後は堅守を武器とする3-4-2-1システムを軸に戦ってきた。そして横浜戦では新たに攻撃的な4-3-1-2システムを採用。シーズン後半戦、指揮官は『盾』と『矛』の2パターンを併用していくプランを口にした。それを可能にしたのが柳澤だった。
元日本代表DF藤春廣輝を筆頭に、黒川圭介、福田湧矢、髙尾瑠らがサイドバック要員。ただシーズン開幕前、右サイドバックを本職としたのは髙尾1人で、MF小野瀬康介やMF奥野耕平を起用しなければならない苦しい台所事情だった。加えて藤春や福田、髙尾ら負傷者が続出。柳澤が加入したことで戦術の幅が拡がった。
また新システムにおいて“トップ下”宇佐美貴史が機能したのも明るい材料だ。横浜戦ではボランチのケアとポジションを下げすぎないことだけ課せられ、攻撃では自由を与えられた。
「個人的にはやりやすかった。他の選手の良さを引き出せたし、もう一歩のシーンも作り出せた」と手応えを口にする。
もちろん、宇佐美の背後に位置する倉田秋と奥野耕平、山本悠樹の3人のセントラルMFが気を利かしたプレーをしていたことは忘れてはならない。そして、そのポジションは矢島慎也、井手口陽介、韓国代表チュ・セジョンもプレー可能でターンオーバーできるだろう。
問題は過密日程下、宇佐美がベンチスタートやメンバー外になった際だ。“代役”になりうるタイプは不在のため、その時にどんな選手を起用するのか、またシステムを変更するのかを含めて、松波監督の手腕がより試される。
降格圏17位の徳島ヴォルティスとは勝点6差で、まだまだ予断を許さない戦いが続く。他クラブ以上の蓄積疲労も今後の懸念材料だ。いち早く降格圏を脱出するためにも“シーズン後半戦”全般で見るのではなく、徳島(9日)、清水エスパルス(13日)、横浜FC(25日)、セレッソ大阪(28日)と、順位の近いチームと対戦が続く8月でどれだけ勝点を稼ぐかが重要になる。