<GAMBA CHOICE 11>ウェリントン・シウバ。「勝つために」ドリブルを。

AFCチャンピオンズリーグ(ACL)から高まりつつあったコンディションの良さを証明したのが前節・ヴィッセル神戸戦だ。先発のピッチに立ったウェリントン・シウバは試合の序盤から立ち上がりから攻守に高いインテンシティで存在感を示すと、19分にはFWパトリックの先制点をアシストする。右足から繰り出された絶妙なポイントへのクロスボールは狙い通りの形だった。

「パトの特徴であるハイボールへの強さを活かしたかったので、試合中も『僕にボールが入ったら斜めからでもゴールに向かってクロスを入れるよ』ということをパトにも伝えていたし、その形がゴールにつながりました。個人的なことを言うと、普段の練習からコンディションはいいなと感じていましたし今日、スタメンのピッチに立って、ほぼ1ゲーム近くプレーした中でも改めて自分には今、1試合を戦えるコンディションがあるという手応えを得ることができました。練習とゲームでは当然、強度も違うからこそ、こうしてゲームの中で動き切れたことはすごく自信になります」

 ACLを戦ったウズベキスタンでは連日、40度を超える猛烈な日差しに見舞われたが、帰国後は、湿度の高い『日本の夏』を初めて体感している。だが、母国・ブラジルでも灼熱の太陽のもとでサッカーをしてきた経験があるからだろう。「特別なことをする必要はない」と涼しい顔だ。

「ウズベキスタンでは息もしづらいくらいの暑さに見舞われましたし、ブラジルでも常に暑さの中でプレーしてきました。今回、僕は日本の夏を初めて体感していますが、福岡戦であれば試合も19時からで、暑さは残っていたとはいえ我慢できる範囲の暑さでしたし、普段からこういう条件で90分間、戦い抜くために日々の練習にもしっかりと取り組んでいるので乗り切れると思っています。ピッチに立つ中で僕が一番に考えているのは、チームの力になること、勝つための力になること。なのでパスを出したほうがチャンスに繋がるのなら味方の選手を巧く使いながらゴールに向かうことを選択しますし、状況に応じては…福岡戦でもあったように、相手の選手を自らドリブルでかわしてシュートを打つことも考えます。今回は残念ながら相手の選手に当たってしまいゴールにつなげることはできませんでしたが、今後も自分の特徴である『ドリブル』を状況に応じて使い分けながらプレーしたいと思っています」

 フルミネンセFCの下部組織でプレーしていた頃から、ブラジルの世代別代表に名を連ね、09年にトップチームに昇格。プロキャリアをスタートさせた。11年にイングランドの強豪、アーセナルFCに移籍した後は、スペインやイングランドなど戦う場所を変えながらヨーロッパでの経験を積み上げ、16年には再び古巣、フルミネンセに復帰。期限付き移籍でSCインテルナシオナルでプレーしていた中でガンバ大阪からのオファーを受けた。

「自分にとっては大きなチャンス」

 移籍を決意するにあたっては日本でのプレー経験がある選手や日本のことを知る友人、インテルナシオナル時代のチームメイト、レアンドロ・ダミアン(川崎フロンターレ)などに話を聞き、自分なりに日本のサッカーへのイメージを膨らませて来日したと言う。

「日本のサッカーはすごくダイナミックで強度が高いサッカーをすると聞いていましたし、そこで成功をおさめるには『リスペクト』が大事だというアドバイスももらいました。僕たちブラジル人は試合になると、どちらかというと熱く、感情的になることも多いのですが、そこはうまく自分をコントロールして、監督、スタッフに対しても、チームメイトに対してもリスペクトを持って取り組まなければいけない、と。また前線からのハードワークも…これは日本のサッカーに限らずですが、チームのためにハードワークをし、守備にも貢献しなければいけないということも理解しています」

 もっともシーズン中の移籍であった上に、2週間の隔離期間を経てチームに合流するという難しさも影響したのだろう。しばらくは本来のコンディション、プレーを取り戻すことや日本のサッカーやチーム戦術に適応するのに苦心していたところも。だが、チーム合流から3か月が過ぎ、またACLで約3週間にわたり仲間と寝食を共にした生活を続けたことも追い風となって、その持ち味をピッチで楽しめる時間は着実に増えている。

「サッカーをする上で何よりも大事にしているのはチームの勝利であり、そのためにベストを尽くすということに他なりません。足元にボールが入った時には常にそのことを頭において、プレーの選択をしていきたいと思っています。得意なのは、スピードを生かしたプレー。攻撃の作りの過程でスピードをいかしながらコンビネーションで崩していくこと、時にワンツーを使って敵陣に入っていきフィニッシュに繋げること。また、最後のゴール、フィニッシュにも自信を持っています。そういった自分の特徴をガンバの勝利のために発揮したいと思っていますし、チームのためのプレーを続けていれば、きっと僕自身にもチャンスが生まれ、ひいてはそれがゴールにつながることもあると信じています」

 ピッチで表情を崩すことはあまりないが、普段は「明るくて陽気な性格」だと言う。取材の最後は決まって日本語で「アリガトウゴザイマス」。目尻を下げた、優しい笑顔も印象的だ。

「これまで所属したクラブでもグラウンドの中で仕事をするときはもちろん真面目に、厳しく取り組んできましたが、グラウンドを出れば、僕はみんなが笑顔で過ごせる時間がとても好きです。チームメイトとも冗談を言い合いますし、ダンスをしたり、楽しい時間を過ごすことも好みます。今はコロナ禍でいろんなことが制限されている状況にありますが、ガンバでも仲間のみんなといい関係を築きながら、ピッチでは厳しく要求しあって戦っていきたいと思っています」

 来日当初、早く実現したいと話していた「ガンバでのファーストゴールを挙げて勝利に導くこと」は天皇杯2回戦の関西学院大学戦で実現し、ACLでも第5節・タンピネス・ローバーズFCでのゴールを含め、前線を加速させる姿が光った。この先は、Jリーグの舞台でその歓喜の瞬間をひたすら追い求めていく。

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