ガンバ大阪、監督解任は効果なし。スタジアムに響く選手の「口喧嘩」
対戦相手のFC東京にしても、前節の勝利でようやく泥沼の5連敗から脱したばかり。決して調子がいいとは言えない状態にあった。事実、立ち上がりに見せた迫力ある攻撃以外、それほど試合内容がよかったわけではない。
いわば、勝負は紙一重。
にもかかわらず、結果的にこうなってしまうあたりに、ガンバ大阪の現状が表われている。
J1第15節、G大阪は0-1でFC東京に敗れた。G大阪はこれで4連敗。今季はまだ1勝しか挙げられず、1勝7敗4分けの勝ち点7で19位に沈んでいる。
キャプテンのDF三浦弦太が力なく語る。
「立ち上がりすぐ(試合開始から1分経たず)の失点で、結果的にそれが負けにつながったのでもったいない。なかなか勝てていない状況で立ち上がりに失点し、バタバタして試合運びが難しかった」
とりわけ深刻なのは、”ゴール欠乏症”である。これまで12試合での総得点はわずかに3。断然のJ1ワーストだ。
この試合でも、失点後はむしろ攻勢に試合を進めることができていた。敵将の長谷川健太監督も、「相手の圧に押された。もっとアグレッシブに戦いたかった」と振り返っている。
ところが、G大阪はボールこそ保持するものの、有効な打開策を見出せず、攻めあぐむシーンばかりを増やしての無得点。クラブ内で新型コロナウイルス感染の陽性者が発生したことで、他クラブに比べて消化試合数が少ないという事情はあるにしても、現状を物語る数字はかなり酷い。
この状況にG大阪は、昨季チームを2位に導いた宮本恒靖監督を早くも解任。松波正信監督を新たに据えたが、状況は改善されることなく2連敗。前監督在任時からの通算では4連敗が継続中だ。
もちろん監督が変わることで、選手起用や戦術に多少手を加えられることはあるだろう。それが、奏功するケースがないわけではない。
だが、”劇薬”の投与はそうしたことよりも、選手の危機感を煽り、奮起を促すという意味合いのほうが強い。だからこそ、シーズン途中の監督交代には即効性が期待されるわけだが、残念ながら、その効果も今のところ期待薄である。
三浦は「なかなか得点も取れず、勝ち星も取れず、選手もチームも苦しい時期にある」と言い、こう続ける。
「(互いのプレーに必要な)要求が、文句とかネガティブなほうへ進むのはよくない。ポジティブな声を掛け合い、状況を打破していくしかない」
皮肉なことに、観客数が5000人以下に制限されているスタジアムでは、ピッチ上の選手の声がよく響く。
「上がれよ!」「なんで?」
キャプテンが指摘するまでもなく、G大阪の選手が口にする”文句”は、スタンドの記者席にも何度となく届いた。
「(選手たちが)自信を持ってやれていないのを、(久しぶりに)ピッチに入って感じた」
ケガから復帰したばかりのMF小野瀬康介がそう話したように、勝てないなかで溜まってきたフラストレーションは、危機感や奮起に変換されることなく、そのまま悪い形で噴き出してしまっているのかもしれない。
G大阪がボールを保持し、FC東京をゴール前にくぎづけにする時間は確かに長かった。
だが、ピッチ上の選手それぞれが考えていることがバラバラでは、同じ絵を描けるはずもなく、互いの狙いが噛み合わない。自然とボールの失い方が危険な形になり、逆に危ういカウンターを受けるハメになるのも仕方のないことだった。
これから暑さが厳しくなる季節を迎え、G大阪には過酷な連戦が待っている。新型コロナウイルス感染症の影響により、延期されていた試合を一気にこなさなければならないうえ、AFCチャンピオンズリーグまで控えているからだ。
過酷な戦いを強いられることは、延期試合の日程が決まった時点で予想されていたとはいえ、その連戦開始を待つまでもなく、これほどの苦境に立たされると想像するのは難しかった。
振り返れば、今季Jリーグの開幕を告げるFUJI XEROX SUPER CUPでは、G大阪は川崎フロンターレと見応えのある打ち合いを演じた。結果的に2-3で敗れはしたが、昨季J1王者をあと一歩まで追い詰めた戦いは、打倒・川崎の期待が高まるものだった。
あれから、およそ3カ月。両者の明暗は残酷なまでにくっきりと分かれている。 「チームがバラバラになりかけている。何かを変えないとよくない状況だと改めて感じた」(小野瀬)
G大阪は、順位や得点数から想像する以上に、深刻な事態に陥っているのかもしれない。