「ツネ様」の後任は誰に? ガンバ大阪が掲げる新監督の高い理想

低迷するガンバを誰に託すのか――。生え抜きの宮本恒靖監督(44)を成績不振を理由に解任したサッカー・J1ガ大阪は後任選びを進めているが、クラブ幹部が掲げる新監督の理想像は非常にハードルが高い。クラブの「レジェンド」に代わり、J2降格圏に沈む名門を浮上に導ける指揮官は見つかるのか。

とにかくゴールと勝利が遠い。今季は11試合を終えて1勝4分け6敗の18位。得点はわずか3で、リーグ最多43ゴールの首位川崎とは対照的なチーム状態だ。昨季は安定した守備を軸に2位となり、オフには実力者を補強したはずだっただけに、14日の監督交代記者会見で小野忠史社長は「今はチャレンジングなところが見られない」と顔を曇らせた。

小野社長は12日に広島に敗れて解任を決断したと明かし、「(次期監督候補の)調査を並行してやっていたわけではない。急きょ後任を探すことになった」と説明。「一番チームをよく分かっている」として松波正信強化アカデミー部長(46)に暫定的に指揮を任せたが、あくまで「つなぎ役」で、状況が好転しても新監督を迎える計画だ。小野社長は「新しい監督を迎えて(6月下旬からの)ACL(アジア・チャンピオンズリーグ)に臨みたい」とし、新型コロナウイルス下で海外から招く難しさもあることから「日本人の監督が前提」と方針を示した。J1神戸などで監督経験がある和田昌裕取締役強化アカデミー担当兼普及部長は「ACL経験があり、なおかつ海外選手や代表経験のある選手たちを同じ方向に向かせるチーム作りができる監督」を理想に掲げる。

勝ち点の積み上げに、伝統の攻撃スタイルを取り戻すこともミッションとなるが、シーズン途中にすべての条件に合致した監督候補が見つかるかどうかは未知数だ。和田取締役は「『勝てない、点が取れない』。そんな記事を見ると、余計に選手たちにもプレッシャーがかかる。ゲームの中身も改善できず、うまいこといかない。結果、勝利につながらない。それが全て、プレーに消極的な部分が出ているかなと思う」と分析する。

クラブが初のJ2降格を味わった2012年以来の再登板となった松波監督は16日の浦和戦で「シンプルにゴールを目指してパスやコントロールをするように伝えた」ものの、今季ワーストの3失点で敗れた。ゴールを狙う意識から前掛かりになり、ここまで踏ん張ってきた守備陣の背後をカウンターで突かれた格好だった。

クラブは、宮本前監督の再登板について異例の言及をしている。育成組織からの生え抜きで、チームが徐々に力をつけていく時代に類いまれなるキャプテンシーを発揮し、J1初制覇にも貢献した功労者だ。18年途中にクルピ監督(現セ大阪監督)の後任として残留争いからチームを救い、昨季はACL出場枠も確保した。今季は開幕直後に新型コロナの集団感染という厳しい事態に見舞われただけに、小野社長は「将来2度目の監督の可能性も当然ありえる。しっかり違う形でお付き合いをするということで握手をして別れている」と円満さを強調。別ポストでクラブに関わることにも「遠慮無く連絡くださいとは伝えている」と語った。

今後はACLや夏場の過密日程などの関門が待ち受ける。クラブの顔ともいえる存在の後任者への重圧は計り知れない中で、負の流れを断てるか。「見切り発車」の終着駅は、まだ見えていない。

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