【J1分析】G大阪「宮本監督解任カンフル」効かず…前半から見えた「不穏すぎる兆候」G大阪対浦和
【明治安田J1リーグ 第14節 ガンバ大阪vs浦和レッズ 2021年5月16日 17:03キックオフ】
水曜日に同じようなシーンを見たばかりだった。
まだ前半の3分の1も経たない頃、三浦弦太が強引にロングシュートを放った。3日前に東口順昭がそうするしかなかったのと同じように、パスの出しどころがないため蹴るしかなかった。
宮本恒靖監督を解任し、松波正信強化アカデミー部長を指揮官としたガンバだったが、この日も問題は山積みだった。試合開始直後こそ宇佐美貴史が切り込んでシュートを放つ場面があったものの、浦和が落ち着くと攻撃の手段は失われてしまった。
宇佐美がいる左サイドは強引にシュートまでもっていこうとすることもあったが、中央に入っていこうとするところでリターンパスが上手く出てこなかった。連携、という言葉とは程遠い攻撃になっていることで宇佐美はポジションを下げていったが、シュートの危険性がないエリアでプレーされる分には浦和は問題なかった。
右サイドはチアゴ・アウベスが動き出しを見せてキープしようとしても、連動した攻撃になっていないため徐々にボールは下がっていき、やはり当たり前のように最終ラインに戻された。中央を使うことができないためにボールはセンターバックとサイドバックを行ったり来たりするようになってしまい、時折大雑把なロングボールが飛んでは宇佐美が不満を露わにした。倉田秋は「全てが悪いわけではなく、今までになかったボールへの執着心や気持ちを出すことは感じられた」としたが、それだけでは勝つに至らなかった。
■前半の飲水タイムから不穏な兆候はあった
ボールを持つ時間が長く、それぞれの選手はどうにかしようとしていても、11人が孤軍奮闘しているような状態ではチームとしてやることが整理されている浦和を崩すことはできなかった。
塚元大は試合後「今日もボールを持っている選手に対して、サポートとか周りの選手が止まっている感じがあった」と述べたが、深刻なのは、その孤軍奮闘×11人という状態になってしまっていることをどうにかして変えようという姿勢がチーム全体に見られないことだ。
前半の飲水タイムから既にそうだった。浦和の選手たちがまだベンチ前で盛んに会話をしている中、ガンバの選手たちは早々に持ち場へと帰っていった。ポジションに戻りながら選手同士が互いに身振り手振りを交えて確認し合うわけでもなく、うつむき、まるで敗戦後かのように静かに歩いていた。まだ試合時間は4分の3残っているにもかかわらず、今日もダメだ、という空気が漂ってしまっていた。
失点を喫しても、やはり互いに声をかけあうことなく淡々と試合が再開された。シュートが入らなかった時には、それを放った本人は悔しさを見せるものの、周りの選手はやはり下を向くだけだった。
■声一つとっても分かる浦和との差
浦和はやりたいことが明確なプレーがミスという結果になってしまった時には周りの選手やベンチから「ナイス!」と声がかかり、ゴール後も含めたプレーが切れたタイミングでは槙野智章や鈴木彩艶が必ず声を出して集中を促し、阿部勇樹が修正の指示を出していた。勝っているチームが当たり前のようにそうしてよりチームとして1つになることに対して気を配っているのに、負けているチームは静かに下を向くばかり。これでは追いつけなくて当然だった。
時間が自然と解決してくれる問題には思えない。だからこそ宮本監督を変えたはずだが、チームとして戦う姿を見せ、順調に白星がついてくるようになるのはいつになるだろうか。今年の降格枠は4、のんびりしてはいられない。
■試合結果
ガンバ大阪 0―3 浦和レッズ
■得点
16分 キャスパー・ユンカー(浦和レッズ)
20分 田中達也(浦和レッズ)
40分 キャスパー・ユンカー(浦和レッズ)