【J1詳細プレビュー】「静かなる白熱」大阪ダービー(1) 哲学が激突!C大阪の「組織」とG大阪の「個」
■5月2日/J1第12節 セレッソ大阪―ガンバ大阪(ヤンマー)
ゴールデンウィーク只中の5月1日と2日に、J1第12節が行われる。中でも注目を集めるカードの一つが、セレッソ大阪とガンバ大阪による「大阪ダービー」だ。
2度のリーグ優勝を誇るG大阪と、2017年にルヴァンカップと天皇杯の2冠を達成したC大阪。これまでの対戦は、リーグ戦で23勝6分11敗とG大阪が勝ち越している。だが今季は、事情が違う。クラブに新型コロナウイルス感染者が出たために活動停止を余儀なくされ、消化試合数も少ないとはいえ、G大阪は7試合を終えてまだ1勝と降格圏。C大阪はトップ3まで勝ち点3差と、最終的に4位となった昨季を超えていこうとする勢いだ。
ただし、チームが置かれている状況が結果に直結しないのがダービーだ。昨季の最終順位は2位のG大阪が上だったが、リーグ戦で1勝1分と勝ち越したのはC大阪だった。今回も最後まで目の離せない興味深い一戦となるであろうゲームを、いくつかのポイントに絞ってプレビューしていく。
せっかくの大阪ダービーだが、ヤンマースタジアム長居での一戦は無観客で行われる。
今年に入って拡大した新型コロナウイルスの感染の波は、大阪で大きく広がった。緊急事態宣言も発令され、大きな制約が府下にもたらされることとなった。無観客試合も、その対応の一環だ。
だが、このような時こそ、スポーツの力が必要だ。リモート観戦となっても、見ている人々の心を震わせるようなゲームが、両チームには求められている。
点を取り合うような派手なゲームにはならないだろう。だが、緊張感あふれる空気の中で、熱いバトルが繰り広げられることになる。
■両チームの守備の性質
両チームとも、本来は攻撃的なサッカーを目指すシーズンとするはずだった。C大阪は、そのためにレヴィー・クルピ監督をブラジルから呼び戻した。G大阪も、日本で実績のあるブラジル人アタッカーを複数名迎え入れた。
だが、現状で両チームともに目立つのは守備面である。ただし、その性質は随分と異なる。
リーグ開幕戦で柏レイソルに2-0と勝利したC大阪は、第2節で川崎フロンターレと3-2と打ち合うなど、複数得点の試合を重ねていた。
ただし、川崎とFC東京に連敗を喫するなど、結果はついてこなかった。事態が好転し始めたのは、守備が安定してからである。
昨季までチームを率いたロティーナ監督が植えつけた、守備への高い意識が活きているのかもしれない。全体がコンパクトな4-4-2の陣形を保ち続け、相手に中央からの侵入を許さない。4バックはゴール前で緊密な隊列を崩さず、相手ウィンガーへの対応にもサイドバックではなくサイドハーフがあたっている。
前節の浦和レッズ戦では、攻撃面で重要なアクセントとなる清武弘嗣を前半のみでベンチへ下げた。その理由についてクルピ監督は、守備面での強度が物足りなかったと説いている。それほどまでに、組織としての守備が重視されているのだ。
■互いに見せた弱み
一方のG大阪は、「個」の強さを打ち出している。4バックの中央に陣取るのは、昌子源と三浦弦太という日本代表クラスのCBだ。ワールドカップも経験し、屈強な選手が多いフランスでも戦ってきた昌子は、地上でも空中でも対人の強さで圧倒する。同じく空中戦に強い三浦はカバーリングに優れ、昌子との相性は非常に良い。
ただし、個での対応が原因で後手に回ることもある。前節の名古屋グランパス戦が、その好例だ。
名古屋戦では、U-24日本代表の相馬勇紀の1ゴール1アシストの活躍にやられた。相馬と相対する、G大阪の右サイドから崩されたのだ。
1失点目の場面で、右サイドバックに入った小野瀬康介は、抜け出そうとする相馬を捕まえ切れないだけではなく、その後の対応も判断がはっきりしなかった。その結果として三浦が釣り出され、空いたスペースに入った山崎凌吾へのアシストを許した。2失点目も、良い位置を取れなかった小野瀬の裏を突かれて、相馬のゴールを許した。
本来、小野瀬は攻撃面に特長のあるアタッカーである。昨季もウィングバックで起用されてはいたが、現在のG大阪はその良さを活用できる状況にはない。途中交代させられた小野瀬だが、不慣れな環境での仕事は気の毒だったと言わざるを得ない。毎試合メンバーが変わるG大阪にとって、適切な人材配置は大きな鍵になるだろう。
一方のC大阪も、第9節のアビスパ福岡戦でもろさを見せた。ゴール前で数的優位を崩さぬようにプレーしている間はいいのだが、強烈な「個」をぶつけられると弱いのだ。
相手に退場者が出て楽に試合を進めていたC大阪だが、カウンターからの抜け出しを止められずに献上したCKから先制を許した。直後に追いつき、さらに逆転したものの、身長188センチのフアンマ・デルガドに残り2分で同点ヘッドを決められた。
この組織と個の長所と短所は、攻撃面にもつながっていく。