日本の若手は「ミスを恐れない」 J初参戦の韓国代表MF、G大阪の初練習で驚き
G大阪の新加入MFチュ・セジョンが語る日本サッカーの印象
ガンバ大阪に今季、韓国から新たな実力者が加わった。韓国代表として2018年ロシア・ワールドカップ(W杯)にも出場したMFチュ・セジョン。これまでは韓国のKリーグのみで戦ってきたなか、なぜ30歳を過ぎてから初の海外挑戦を決めたのか。Jリーグ開幕直前にオンライン取材を実施し、G大阪のチームの雰囲気や日本サッカーの印象などについて話を訊いた。
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今年で31歳を迎える現役の韓国代表MFは、埼玉スタジアムのベンチに座り、ピッチ内で躍動する選手たちのプレーとサポーターの姿を見ながら、「Jリーグに来たんだ」との思いを噛みしめていた。
今季からガンバ大阪に移籍したチュ・セジョンにいきなり訪れた大舞台は、2月20日に行われた富士ゼロックス・スーパーカップだった。
「出る準備はできていました」
相手は昨季J1リーグ王者の川崎フロンターレ。しかし、その日はピッチに立つことは叶わず、チームは惜しくも2-3で敗れた。
「日本に来て初めての試合で、ベンチで試合の流れを見ながら自分が入った時のイメージを温めていました。結果的にピッチには立てませんでしたが、Jリーグがどのような雰囲気なのか、どんな選手がいて、試合の流れがどのようなものなのかを知ることができました」
そんななか、Jリーグデビューは意外と早くに訪れた。2月27日のJ1開幕節、アウェーでのヴィッセル神戸戦。後半31分にMF川﨑修平に代わってピッチに投入され、アンカーとして攻撃陣と最終ラインの間で“潤滑油”の役割をこなした。悔やまれるのは、交代後に失点を喫して0-1で敗れるほろ苦いデビュー戦となったことだ。
たった14分のプレーで評価するのは難しい。チュ・セジョンも、自分のスタイルをチームにフィットさせるために努力している最中だ。
「どの国に行っても、リズムやテンポなどサッカーの特色があると思うので、それを早く理解していく努力はしています。ガンバ大阪の選手たちとの距離も近くなってきましたし、宮本(恒靖)監督も慣れてくれば、チームに適応できると言ってくれています」
Kリーグや韓国代表での実績は申し分ない。2012年に釜山アイパークでプロデビュー。16年にFCソウルへ移籍したが、18年から19年途中まで兵役のため、期限付き移籍でKリーグ2(2部)の牙山ムグンファでプレーした。
韓国代表には15年から選出され、18年ロシアW杯にも出場。特にドイツ戦の後半アディショナルタイム、FWソン・フンミン(トッテナム)の追加点を演出したロングパスのシーンが記憶に新しい。中盤での活動量が豊富で、視野も広く、前線への的確なロングフィードが武器。今後スタメンに定着すれば、チームへの貢献度は高まるだろう。
驚かされた日本の若手の姿「韓国は練習中にミスするのを恐れる傾向があります」
日本に来てから約1カ月が過ぎたが、すでにチームメートとはかなり溶け込んでいるようだった。
「ほとんどの日本の選手たちが、アンニョンハセヨ(おはよう)、カムサハムニダ(ありがとう)、チャルモッケスミダ(いただきます)など韓国語で会話してくれるので、ものすごく馴染んでいます。あとは、韓国語で『右、左、後ろ』、『大丈夫』を韓国語でどう言うのかなど、プレー中に交わす言葉も聞いてくれるので、すごくやりやすい。僕も日本語は結構、勉強してきたんですけれど、言葉の心配はなくなりましたよ」
それは過去に、G大阪でプレーした韓国人選手の影響を感じるという。 「ガンバ大阪にいる(キム・)ヨングォン先輩はもちろんそうですし、過去には(ボルドーのファン・)ウィジョや、(仁川ユナイテッドのオ・)ジェソクもプレーしていたので、チームメートが韓国人選手とのコミュニケーションにすごく慣れていると感じました」
新加入選手を迎え入れるチームの雰囲気が良く、サッカーに集中できる環境にあるのは、外国籍選手にとってありがたいことだろう。
チュ・セジョンは、初めてG大阪のチーム練習に参加して、一つ驚いたことがあったという。それは「ミスを恐れない姿勢」だ。
「韓国は練習中にミスするのを恐れる傾向があります。でも、日本の選手はミスをしても、次も恐れずに挑戦する。何度もチャレンジしていいプレーができればいいという気持ちでプレーしているので、それは見ているこちらがすごく気持ちいいです」
韓国人選手はフィジカルが強く、どのようなプレーにも果敢にチャレンジするイメージがあったのだが、「もちろん、ベテランの選手はそうではありません」と前置きしたうえで、「特にKリーグの若い選手です。プレーでミスが出ると『次にまたミスしたらどうしよう』という姿勢が見えます。でも日本の若い選手たちはそうでないように思いました。ガンバ大阪で言うと、FWの唐山翔自選手や川﨑修平選手。彼らの練習中から見える思いきりの良さは、自分も刺激になっています」と語る。
30歳を超えてもなお、若手から学ぶ努力を怠らない。いつまでも向上心を持てるのが、チュ・セジョンの強みなのかもしれない。