ガンバ大阪、今季の指針となる“逆境を乗り越えるメンタル”。広島戦で掴んだ勝点1以上の価値

不安要素は多々あるが、広島戦で見せた姿は今季の指針となるべきものだ

「次の広島戦は良い意味でも悪い意味でも注目される一戦」

試合前日の2日、G大阪の倉田秋は自分たちが置かれている状況が、平時とは違っていることを改めて口にした。

3月上旬。チームは選手6人、スタッフ2人の計8人が新型コロナ陽性判定を受けた。「クラスター(集団感染)」認定をされ、同9日からは2週間の活動停止。リーグ戦は6試合が中止となり、練習が再開できたのは同23日からだった。2月27日のリーグ開幕・神戸戦以来35日ぶりの公式戦。広島戦までの準備期間はわずか12日間しかなく、その間は練習試合も90分間の紅白戦も行なうことができなかった。コンディションはどこまで戻っているのか? 新システムの4-3-3の連係面構築は? 試合勘は? 一度リセットされた不安と焦り、そしてサッカーができる喜びと期待感が渦巻いていた。ただ、この試合に関して言えば、そうしたメンタル面こそが最も大事だった。

「厳しい1か月だったが、我々にはピッチに立てる喜びがある。感情を込めてプレーしよう」

宮本恒靖監督はそう言って選手をピッチに送り出した。

「予想していたくらいのフィジカルコンディションでした。全員が90分間プレーできるギリギリの状態だったし、選手交代を含めて乗り切らなくてはいけなかった」

決して100%の状態ではない中、指揮官が選択したのは蓄積されてきた経験をぶつけることだった。「苦しい時間帯が増えるのは予想していた」(昌子源)ため、守備時は昨季リーグ2位の原動力となった4-4-2システムを採用。予想通り試合開始から75分までは広島の怒濤の攻めにさらされたが、やるべきこと(粘り強い守備)が明確になったことは、選手の身体をスムーズに動かした。東口順昭のスーパーセーブにも救われたが、昌子と三浦弦太のセンターバック2人を中心に全員が身体を投げ打ってゴールを死守した。

クラスター後、G大阪サポーターはもちろん、他チーム関係者やサポーターからも励ましのメールが届いた。「今日は支えてくれた方々のために、サッカーをしている姿を見せるのが大事だったと思う」と昌子は力を込めた。様々な感情は「喜びと感謝」に集約され、チームはひとつになった。「それが(自陣)ゴール前のプレーにつながった」(宮本監督)。

広島戦を含めて5連戦。中止6試合分の代替日程次第では、さらに過密になる。決定機が少なかった攻撃面の改善も必要。不安要素は多々ある。だが、この日、チームが見せた“逆境を乗り越えるメンタル”は今シーズンを戦う上で指針となるべきものでもあろう。手にした勝点1以上の価値が、この試合にはあった。

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