危機感がないチームほどパニックに。J1降格候補のチームはどこだ?
『特集:Jリーグが好きだっ! 2021』降格候補はどこだ? 2月26日に開幕するJリーグ。スポルティーバでは、今年のサッカー観戦が面白くなる、熱くなる記事を、随時配信。さまざまな視点からJリーグの魅力を猛烈アピール!
今回のテーマは、今シーズン最注目の降格。その候補と考えられるチームは?
コロナ禍のなかで、J1は昨季、J2への降格を取りやめた。一方、J2からの昇格は生きていたので、J1は20チームの大所帯となった。そのため、今季の降格は4チーム。20分の4である。「18分の2.5(17、18位は降格。16位はプレーオフへ)」だったこれまでより、大幅に厳しい設定となった。
昨季は、川崎フロンターレが2位ガンバ大阪に、勝ち点18差をつけて優勝。優勝が決定したのは残り4節を余した段階で、これは史上最速だった。勝ち点(=83)及び勝利数(=26)も過去最高。途中から独走状態となってしまったため、優勝争いへの関心は、早々に断たれることになった。
そのうえ、降格もなかったので、J1はあるときから、ほぼ無風の展開に。語られることは、川崎の強さについてばかりとなった。
今季も川崎は強さを発揮するだろう。2位以下に、昨季と同じような差をつけることができるとは思わないが、優勝候補の大本命であることに変わりはない。他のチームがどこまで競ることができるか。鹿島アントラーズ、横浜F・マリノス、名古屋グランパス、ガンバ大阪、FC東京、セレッソ大阪。チャンスがあるのはここまでだと思う。川崎を含めた7チームが、優勝の可能性を秘めたAクラス。
Bクラスは以下の13チームになる。
サンフレッチェ広島、浦和レッズ、清水エスパルス、ベガルタ仙台、大分トリニータ、サガン鳥栖、ヴィッセル神戸、コンサドーレ札幌、横浜FC、柏レイソル、徳島ヴォルティス、アビスパ福岡、湘南ベルマーレ。
これらは、言い換えれば降格候補である。
Jリーグは、海外のリーグのように各クラブに”定位置”がない。だいたいこれくらいの順位だろうという相場が見えにくい。Jリーグが発足して28シーズン経ったにもかかわらず、依然としてリーグにはヒエラルキーが確立されていない。よくも悪くも混沌とした状態にある。
J2から昇格してきたチームが、いきなり上位に進出したりする(昨季で言うならば柏=7位)。前年12位だったチームが優勝したり(2019年の横浜FM)、翌シーズンは一転、9位に沈んだり(2020年の横浜FM)。年間予算ナンバー1のクラブ(神戸)が降格圏に迫る14位に終わったりするなど、ドタバタした事件が、何かと多く発生する。
心配になるチームが多すぎるのだ。Aクラスに挙げた7チームにしても油断はできないが、さすがに降格圏(17位以下)に沈むことはないと見る。一般的に考えて、危うい存在に見えるのは今季、昇格してきた2チーム(徳島、福岡)と、昨季、降格とJ1参入プレーオフがあれば事実上の降格圏に沈んだ3チーム(湘南、仙台、清水)の計5チームだ。
ただ、降格4チームがこの「5弱」の中からすべて誕生するかと言えばノーだろう。Jリーグの特徴を踏まえれば、2チーム程度ではないだろうか。この5チームには、最初から弱者として相当な覚悟があるはずだ。心構えができているので、もし降格圏をさまようことになっても、思いのほか慌てることはないと見る。
中でも危機感を募らせていることが、手に取るように伝わってくるのが清水だ。C大阪を過去2シーズン、上位に導いたミゲル・アンヘル・ロティーナ監督を招聘。選手も大量に獲得した。ロティーナは、昨季、新監督に招聘したピーター・クラモフスキーと哲学的に開きのある監督。クラブの定見のなさについては、思わず突っ込みたくなるが、付け焼き刃にせよ、昨季最多だった失点数を減らせば、順位はその分だけ上がるはずだ。手倉森誠監督を招いた仙台にも、似たようなことは言える。上がり目はあると見る。
「5弱」以外で心配になるのは横浜FCだ。サッカーそのものはよかった。好感の持てる前向きなサッカーをしていたが、シーズン後半になるに従い、息切れするように成績を下げていった。こう言ってはなんだが、今季はカズこと三浦知良をピッチに長く送り込む余裕はないはずだ。
2018年に4位という自己最高位をマークした札幌も心配だ。2019年10位、2020年12位と、じりじりと順位を下げている。昨季も鈴木武蔵を放出した影響か、シーズン中盤以降、振るわなくなった。ここまでいい流れが作れていない。
横浜FC、札幌よりさらに流れがある悪いチームがある。昨年9月、トルステン・フィンクの帰国に伴い、三浦淳寛が監督の座に就いた神戸だ。就任当初こそ、白星を重ねたが、すぐに泥沼にはまる。残り11試合の成績は僅か1勝(1分9敗)。最後は6連敗、14位でシーズンを終えた。18チーム中、最も悪い終わり方をしたチームだ。
年間予算(2019年度営業収支)、114億4000万円。神戸は一方において、Jリーグで断トツ1位の予算規模を誇る。J2に転落したら、それこそ笑い話にもならない。この逆境を、監督経験は神戸が初めてという三浦監督が乗り切ることができるだろうか。「5弱」とは異なり、絶対にあってはならないという重圧が、その両肩にはのしかかっているはずだ。スタートダッシュに失敗すると、泥沼にはまる危険がある。
2018年度、年間予算で神戸に首位の座を明け渡した浦和は、リカルド・ロドリゲスを監督に迎えて今シーズンに臨む。徳島をJ1昇格に導いた、攻撃的で華のあるサッカーをする監督。ひと言でいえばそうなる。その一方で、選手の顔ぶれは、年々地味になっている。ムードが落ちている印象だ。
興梠慎三がケガで昨年末から戦線離脱。昨季活躍したレオナルドも、数日前、中国Cリーグの山東泰山へ移籍が決まった。スタートが危ぶまれている。
順位表で17位以下に記されているチームは焦るはずだ。降格候補の自覚がないチームほど、パニックに陥りやすい。コロナ禍がどうなるか定かではないが、海外から新外国人選手や新外国人監督を招きにくい状況はまだ続くと思われる。スタートで流れに乗るか否かは、降格争いを巡る重要な見どころだ。
部外者にとっては、優勝争いより面白いモノに映る。英国ブックメーカー各社にはJ1リーグの降格予想のコーナーを早急に設けてほしいものである。優勝争い予想より、売上高が伸びること請け合いだ。