G大阪、今季を占う初戦(1)ベールを脱いだ「4-3-3の新システム」
■2月20日/FUJI XEROX SUPER CUP 2021 川崎フロンターレ―ガンバ大阪(埼玉)
試合後、昨季のJリーグ優秀監督の顔は、かなり疲れて見えた。90分終了のホイッスルが鳴ると、表情こそ変えなかったが、すぐにピッチに背を向けてベンチに沈んでしまった。
宮本恒靖監督は、あふれる悔しさを自身の中で必死に抑えようとしていたのだろう。それも無理はない。シャープな顔立ちを持つこの指揮官が昨年から川崎を相手に負けを喫したのは、これで4度目だったのだから。
しかも、この日は一時、同点に追いついた。“ついに勝てる!”と多くのサポーターが思ったように、指揮官の胸中にも期待が走ったはずだ。同点弾に喜ぶことなく、すぐさま次なる交代選手であるFWチアゴ・アウベスとFWレアンドロ・ペレイラの2人に指示を出していたのは、勝利を手繰り寄せようとする前のめりの気持ちに他ならない。
ただ、69分に行われたこの交代が一つのポイントになった。外国籍選手2人を投入した直後はその力強いプレーで川崎を慌てさせたが、同時に、それまで用意したシステムを放棄することになってしまったからだ。結果、徐々に川崎に主導権を奪い返されていく。そして、決勝点を許す。
この「交代策」の説明をする前に、今季のG大阪について触れる必要がある。2021シーズンのガンバの課題は“攻撃の構築力”だ。昨季、リーグ戦2位、天皇杯準優勝、ルヴァンカップでベスト4という好結果でシーズンを終えることができたものの、その成績にしては寂しい得点数だった。“好結果”と“優勝”の間にあるものを埋めるために、ゲームを支配し、そして得点を奪うことの必要性をチームとして実感したのだった。
そのために、前線の選手の補強に加えて着手したのが新システムの導入だった。2020シーズンは序盤こそ3バックと4バックを併用したものの、終盤には4-4-2で固定。負傷者を出しながらも、粘り強く戦い抜いて結果を手にした。
しかし、今季はキャンプで4-3-3に挑戦。富士ゼロックス・スーパーカップで、非公開が続いたこのチームのベールがついにはがされた。この試合のスタメンは以下となる
(名前の順は右→左)。
GK:東口順昭
DF:小野瀬康介、三浦弦太、菅沼駿哉、藤春廣輝
MF:山本悠樹、井手口陽介、倉田秋
FW:矢島慎也、パトリック、川修平
小野瀬を右サイドバックに、矢島を右ウイングに、川崎を左ウイングにした並びで、昨季のガンバからはまったく違った姿だった。昨季は、小野瀬の昨季の基本ポジションは右サイド、矢島はCMFで使われることが多かったため、見慣れない形に川崎は戸惑うかに思われた。
しかし、ガンバは前半のうちに2失点してしまうのである。