三笘薫、山本悠樹…大卒選手が活躍する背景は? Jクラブと海外移籍を取り巻く実状
2020年の明治安田生命J1リーグは19日に最終節を迎える。イレギュラーな形で行われたことが背景となり、今季は若手選手の台頭が目立ったシーズンでもあった。齊藤未月や斉藤光毅など、活躍した20歳前後の選手の海外移籍が決まったが、三笘薫や山本悠樹といった大卒選手の活躍も目立っている。
●即戦力の大卒選手
ベストヤングプレーヤー賞の候補26人が発表された。21歳以下でJ1に17試合以上に出場していることが選考の条件だ。
チーム別では4人が選出された湘南ベルマーレが最多、それに次ぐ3人はFC東京、横浜FC、サガン鳥栖となっている。残り1試合を残しての順位では湘南が17位、横浜FCは15位、鳥栖14位、FC東京は6位。湘南、横浜FC、鳥栖の順位は下位だが、若手選手に活躍の場が与えられていて実績も残している。
湘南の齊藤未月はルビン・カザン(ロシア)への移籍が決まり、ベストヤングプレーヤー候補ではないが20歳の鈴木冬一もローザンヌ(スイス)へ。横浜FCの斉藤光毅(19歳)はロンメル(ベルギー)へ移籍する。
ただ、今季から新加入したルーキーという意味では、三笘薫や旗手怜央(川崎フロンターレ)、山本悠樹(ガンバ大阪)などの大卒選手の活躍が目立っていた。大卒では21歳以下という選考基準に該当しないのでベストヤングプレーヤー賞の候補はならないわけだが、即戦力として活躍していた大卒選手は多かった。
ところが、あれだけ活躍した三笘でも今のところ海外移籍の噂はない。これから出てくるのかもしれないが、海外移籍という点では大卒選手は年齢的にぎりぎりなのだ。
ヨーロッパのクラブが獲得対象としている若手は20歳くらいまでで、Jリーグでの実績はあまり考慮していない。才能があるなら、若ければ若いほどいい。言葉は良くないが転売目的で獲得しているからだ。ヨーロッパでプレーさせて価値が上がったら売る。選手もステップアップするつもりで移籍しているので、獲得クラブと若手選手の思惑は一致している。
●「育てて売る」か「育てて定着させる」
大卒選手は即戦力だ。海外移籍するには年齢がネックになるが、逆にクラブに定着して活躍してくれる可能性が高い。戦力を充実させたいクラブにとっては、年齢的にこれからというタイミングでヨーロッパのクラブに引き抜かれてしまうより、クラブに定着してくれる大卒選手のほうがありがたいかもしれないのだ。
20歳前後の選手を積極的に起用して海外移籍などで移籍金を得る、育てて売るクラブもあれば、大卒選手を獲得して主力に育てて戦力を充実させようというクラブもあるわけだ。
今季、若手が活躍した背景には新型コロナウィルス感染拡大によるイレギュラーなシーズンということもある。過密日程のために多くの選手に出場のチャンスがあった。交代枠も5人に増えた。また、「降格なし」なので若手の起用も思い切ってできた。
これまで外国籍選手が多かったGKにも日本人の若手が起用された。ベストヤングプレーヤー候補の沖悠哉(鹿島アントラーズ)、谷晃生(湘南)、梅田透吾(清水エスパルス)はレギュラーポジションをつかんでいる。外国籍GKが多かった理由の1つだった高身長も、日本人の若手GKはクリアしていた。190cmクラスも珍しくなくなっている。
高身長のGK、CBが急速に増えた。FWも増えているのだろうが、外国籍ストライカーを補強しているチームも多い。まだそれほど目立っていないが、今後は増えていくのかもしれない。