「いままでのガンバにはいなかった…」プラチナ世代コンビ、宇佐美貴史&小野裕二が提示する“娯楽性”と“勝利の方程式”
「系統も志向も哲学も似通っている」
[J1リーグ第7節]神戸 0-2 G大阪/7月26日/ノエスタ
破竹の4連勝で2位に浮上し、首位・川崎フロンターレを勝点3差に見据える。攻守両面で組織が噛み合い始めたガンバ大阪が、目下絶好調だ。
日曜日に行なわれたJ1リーグ第7節、敵地でのヴィッセル神戸戦を2-0でモノにした。やや膠着した展開で迎えた62分、ガンバは一瞬の間隙を突いた高尾瑠のロングスルーパスに小野裕二が呼応して先制に成功する。その後はアンドレス・イニエスタを旗頭に攻勢を務めた神戸に押し込まれ、GK東口順昭の2度に渡るスーパーセーブなどでからくもリードを死守。すると86分だ。エースの宇佐美貴史が豪快な25メートル弾を蹴り込んで突き放し、ゲームの趨勢が定まった。
薄氷を踏むようなスリリングな勝ちっぷりながら、3ポイント奪取は90分間を通してガンバの選手たちが示した集中力とハードワークの賜物だ。2試合連続でのクリーンシートは伊達ではない。宮本恒靖監督は「後半のスタートから形勢をこちらに取り戻して、良い時間帯に先制し、その後の押し込まれる展開のなか、みんなで守ったあとに追加点を挙げられた。選手の頑張りがあってこそだと思います」と戦士たちを称えた。
神戸戦でひときわ異彩を放ったのが、仲良くアベックゴールも決めた宇佐美&小野のふたりだ。同じ1992年生まれのいわゆるプラチナ世代で、中学生の頃から親交を深めてきた旧知の間柄。ともにプロになってからおよそ10年の歳月を経て、小野が今春にガンバへ加入し、初めてチームメイトとなった。
宇佐美は盟友について、次のように話している。
「ユウジとは系統というか、志向しているサッカーなり哲学が似通ってるんですね。だからプレー面ではなにも言わずに分かり合えてる。やっぱり彼はメンタリティーのところが凄くて、チームにプラスアルファを落とし込んでくれてますよ。例えば、激しく行ったあとに表情に出す、ボディーランゲージではっきりと示す。ユウジのメンタリティーがそこにちゃんと出ていて、僕らにも観ているひとにも伝わる。いままでのガンバにはいなかったタイプだと思うし、試合中は本当に頼りになるなと思ってます」
小野は「ここに必要かなと思うところに動くようにしている」と話す
4連勝の原動力のひとつとなっているのが、小野の神出鬼没なポジショニングと献身的なチェイシングだ。それは前線で孤立気味だった宇佐美のプレーの選択肢を広げ、ハイプレスの急先鋒としても重要な役割を担っている。
小野は「ガンバには技術の高い選手がたくさんいる。でも、それだけでは攻撃は上手く回らない。だからなるべく、ほかの選手のポジショニングを見ながら、ここに必要かなと思うところに動くようにしている」と話す。まさにチームアタックの潤滑油たらんと奔走しているのだ。
先制点の場面は、小野の“らしさ”が凝縮されていた。
左サイドから右サイドの高尾にボールが渡るなかで、小野は「サイドに張ってるんじゃなくて、フォワードの位置からサイドに流れるように心がけてた」と振り返る。そこから高尾のパスに呼応して、もう一度中央へ鋭く飛び込んだため、神戸守備陣はまるで小野を捕まえられなかった。小野は「タカシがしっかり相手を釣ってくれていたのもあります」と、謙虚に親友のお膳立てにも感謝を述べている。
しかしながら先制点のあと、ガンバは前節のサンフレッチェ広島戦と同様にベタ引きとなってしまい、嵐が過ぎ去るのを待つばかりの劣勢を強いられた。宇佐美は「もちろんあの状況で耐えられる強みがあるのは大きい」と前置きしたうえで、「でもそこからラインを上げるなりしていかないと先はない。1点目、2点目が入ってもなおボールを保持して、攻撃を続けられるようにしたい」と課題を指摘する。それゆえ、厳しい時間帯で自身がもぎ取った決定的な一撃には、「最後の最後になってしまったけど、試合を決められる仕事ができて嬉しい」と素直に喜んだ。
拮抗した状況から先手を取り、ハイラインとポゼッションを維持してリードも守りながら、手数を掛けずに強烈な個の力で少ないチャンスをモノにして、点差を広げる。まだ精度は高くないが、まさに宮本監督が理想に掲げる“勝利の方程式”の一端を神戸戦で垣間見せた。そのなかで重要なロールをこなすのが、ともにピッチに立つことで特大の相乗効果を生み出す、宇佐美と小野のプラチナ世代コンビなのである。
「試合前、昼食をユウジにおごってもらおうと思ったら…」
宇佐美は86分のスーパーゴールを決めたあと、ベンチに下がっていた小野の元に駆け寄って抱きついた。なぜか。試合後にこんな舞台裏を明かしている。
「今日の出発前に、たまたま吹田市内で昼食をとるお店でユウジと一緒になったんですよ。で、先に出て支払おうと思ったら、僕の持ってる現金がゼロ円だった。ユウジに『おごってもらえるかな?』って言うたら、『じゃあ今日点を取ってくれたら。今日のゴールがこのご飯代ね』と。そういうわけで、決めたあとにユウジのところに行きました」
共鳴しあうプラチナ世代デュオが、発展途上の若きガンバ大阪をより高みへといざなうか。上り調子のなか、次節は本拠地パナスタで、こちらも絶好調の首位・川崎を迎え撃つ。完成度の高い優勝候補を向こうに回し、浪速の雄の現在地が明確となるはずだ。