【G大阪】遠藤保仁は怪物級? いや、“妖怪級”…担当記者が読み解く
◆明治安田生命J1リーグ第2節 G大阪1―2C大阪(4日・パナスタ)
みんな、遠藤にだまされているんじゃないか。そんなふうに感じることがある。刻んできた記録の偉大さは誰もが知るところ。一方でゲームコントロールという得点の一つ手前のプレーにたけ、ゴールを量産するわけではない(それでもJ1MF最多103ゴール)ため、名脇役といった印象は強い。身体能力や闘志といったわかりやすい特徴を見せないことも、地味なイメージに拍車を掛けてきた。
しかし取材の中で思い知るのは、彼が主役になれる怪物級、いや“妖怪級”のプレーヤーであるということだ。特に一緒にプレーした仲間たちからは、口々にそのすごみを聞いてきた。例えば足が遅い、と言われるが「判断が速いから、結局プレースピードは誰よりも速い」(元日本代表MF明神。G大阪でともにプレー)など。過去には走らない選手と言われた時期もあったが、今年の開幕戦での走行距離はチーム3位の11.621キロ。驚がくの40歳。かつて身体能力が足りない、と書いた自分が恐ろしい。
また「点を取るポジションでも一流」という声も多い。09年度の天皇杯決勝・名古屋戦で見せた、2人をドリブルで抜き去って決めたスーパーゴール。鮮やかな個人技に、当時ともに出場した明神は「こんなこともできるのか…」と驚いたという。またMF今野(現磐田。G大阪、日本代表で遠藤とプレー)も「点も取れるのに、わざと他の選手に任せていたような気がする」と感じていたという。
取材では「サッカーはだまし合い」という言葉を何度も聞いた。例えば時折見せる、気の抜けたようなゆる~いパス。これは敵を食いつかせて、本当に狙いたいスペースを空ける彼の常とう手段だが、いつ見ても「取られる! 危ない!」と、だまされてしまう。奥の手は隠し、相手の裏をかき、余裕を持ってプレーするスタイルが長寿の秘けつか。その根底には、周囲に左右されないマイペースな性格に加えて「マイペースって、自分のペース。どこを基準に、僕がマイペースだと言うんですかね」と言っちゃうような、あまのじゃくな一面を感じる。
取材する中では、ベテランになっても、サブにされると少し不機嫌さをのぞかせるような“人間らしさ”に触れることもある。しかしそれも、かつて鬼太郎を連想させた長い前髪や、ガチャピン似と言われる眠たげな目元、猫背の少し丸い背中で中和されてしまう。もしや、全てが敵も味方もだますための演出ではないのか…。そんなふうに考え始めると、彼への興味は尽きることがない。いまだに底の見えない偉大な司令塔が成し遂げた大記録に、ありったけの敬意と賛辞を贈りたい。