降格なき異例Jリーグ、新星出現増え監督交代減る?
新型コロナウイルスの影響で中断していたJリーグは27日、J2が再開、J3が開幕し、始まる。今季は「J1、J2で降格なし」「J1参入プレーオフは実施せず」「昇格はJ1、J2とも2クラブが自動昇格」の特例ルールが適用される。「ウィズコロナ」の降格なしのリーグ戦はどのような戦いになるのか。Jクラブ関係者の声を集め、異例のシーズンの戦い方を探った。(取材・構成=サッカー取材班)
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降格なしの特例ルールにより、今季は「残留争い」が姿を消す。週に2試合の過密日程が多く、各クラブは総力戦で戦うことになる。リーグは各カテゴリーの75%以上かつ各クラブが50%以上を消化すれば成立し、順位は勝ち点で決定になる。試合消化が少なければ不利になるため、感染対策の行方もカギを握る。
【ウィズコロナ対策】感染者が出て、主力の大半、もしくは同ポジションの選手が一斉に隔離されれば、選手層が厚くても一気に戦力はダウンする。試合消化ができなければ、順位の行方にも影響を与える。クラブ関係者は「戦える選手数を維持するために練習の動線、遠征バスの振り分け、控室のグループ分けなど、緻密に計算しないといけない」と話す。遠征では「3密」を防ぐため複数台のバスを使用するなど、通常より金銭面の負担も増加。観客動員の制限もある中、クラブの資金力も左右しそうだ。有事に備え、複数ポジションができる選手が重宝されるとの指摘も多い。クラブによっては新たなポジションに挑む選手も出てきそうだ。
【ユース、大学生に出場チャンス】連戦で負傷者が出れば、下部組織(ユース)、特別指定選手にチャンスが回ってきそうだ。降格がないことで、思い切って10代の若手を起用するクラブも出てくるかもしれない。あるクラブの幹部は「特にJ3でU-23のカテゴリーを持っているクラブはアドバンテージになるのではないか」と予想。毎試合、どこかで10代の新星が頭角を現す可能性もあり「長い目で見れば日本サッカーの発展につながる」との声も出ている。
【戦い方】 降格がないため、引いて守って「勝ち点1」を上積みする必要がなく、アグレッシブな戦い方が増えそうだ。一方でクラブ関係者は、理想を追いすぎて負けが続けば、来季のスポンサー獲得にも悪影響が出ることを危惧。「降格がなくても、勝負にこだわるクラブは多いはず」と予想した。シーズン終盤は、上位を狙うクラブと、モチベーションがないクラブとの差が歴然になる可能性もある。「各クラブの高貴なメンタリティーが試される。目標があるチームが、プレッシャーなく戦うチームに負けるなど、荒れる展開もありそう」との意見もあった。
【監督交代減少?】昨季は成績不振などを理由に、J1で浦和、清水、磐田など7クラブの監督が途中交代した。だが、今季はJ2、J3からの昇格はあるものの、降格はない。強化担当からは「解任がないのではないか」「見切りが難しくなる」との声が上がる。戦術面でのトライ&エラーの余裕もあり「新監督で新戦術を浸透させるクラブは長い目で見るかもしれない」との指摘も多かった。
【遠征メンバー減る?】今季は「交代3回で交代枠5人」の特例措置がある。それでも、クラブ関係者は「消化試合になると、経済的に余裕がないクラブは経費削減のため、遠征メンバーを18人でなく、16人ぐらいにするかもしれない」と予想した。
神戸のフィンク監督は「降格する恐怖がないので、他のチームは攻撃的にくる可能性が高い。我々のやり方は変えたくないが、シーズンの中で対応していくべき」と話せば、G大阪の宮本監督は「連戦になり、交代枠も増えた。心理的なプレッシャーのない中で、お互いゴールを目指す試合が増えると思う」と予測した。昨季J2の2位で昇格した横浜FCの下平監督も「来季もJ1でできるのが最大のメリット」と話し、「うちもリスクを恐れずトライする回数は増えるのかな」と続けた。