遠藤保仁と中村憲剛がいま語ること。「誘ったの覚えてます?」「多分」

リモートゆえのビッグな対談が実現しました。

シーズン真っ最中なら、これ絶対に無理だったでしょう。関東と関西、移動の問題もありましたし。

Number1004号『Jリーグ 史上最強チームを語れ』の企画においてガンバ大阪の遠藤保仁、川崎フロンターレの中村憲剛、両バンディエラにおける“トークマッチアップ”が行なわれました。同じ1980年生まれ、日本代表でもチームメイトだったのに、中村選手はなぜか「ヤットさんと話すのは今でも緊張する」と言います。その理由や、最強チームの話についてはどうぞ本誌をご覧いただければ。

今回は紙面の関係上、泣く泣く割愛したところを掲載させていただきます。本題からの脱線も、実はオモロかったというのはよくある話でございまして――。

――ちょっと本題から逸れてしまうんですが、日本代表以外での2人の“共演”を見ていくと2009年8月のJOMO CUPで韓国Kリーグ選抜と戦ったJリーグ選抜は、かなり強かったですね。

憲剛 覚えてます、覚えてます。4-1で勝った試合。あのチームは強かったですね。

遠藤 アウェーでやった試合でしょ。

憲剛 ミツさん(小笠原満男)とミョウさん(明神智和)がボランチで、俺とヤットさんが2列目でしたよね。

遠藤 トップがマルキーニョスとジュニーニョだっけ。

憲剛 そうです。前年に国立で開催して1-3で負けて、(オズワルド・)オリヴェイラ監督が凄い怒っていて、集まったときに「お前ら今年は絶対に勝つぞ」って気合いの入れ方がもう半端じゃなかった(笑)。あの試合で何か印象深いことありました?

遠藤 ジュニーニョが裏抜けしたシーンがあって、分かってはいたけど、俺は(パスを)出さなかった。そうしたらジュニーニョが怒ってね。

憲剛 うんうん。

遠藤 めっちゃ怒られたから、そこはよく覚えてる(笑)。

憲剛 お祭りみたいな雰囲気がなかったですもんね。どちらも必死に勝ちにいってたし、監督もかなり気合いが入っていたし。

遠藤 もう一度(映像で)見てみると、強いなって思うんだろうな。

憲剛 うろ覚えって感じですね(笑)。

遠藤 うん、ジュニーニョの印象が強すぎて(笑)。

遠藤は「格差はあったほうがいいんじゃないか派」。
――脱線ついでに、もうひとつお聞きしたいのですが。Jリーグは25年以上経過して「共存」から「競争」の時代に入っていますが、こうやって最強チームを並べてみても今まだ群雄割拠が続いていますよね。強いところの顔ぶれがどんどんと変わっていくというのも、Jリーグの魅力だと思いますか?

憲剛 欧州と比べてみても、下位にいるチームが上位にいるチームに勝つことが普通に起こりうるリーグ。それがJリーグの面白さにもつながっているとは感じます。もうちょっと格差が出てくるべきかどうかは、僕自身、判断しかねるところはある。ただ、プレーしている立場から言えば、チームのすべての力を出し切っていかないといかなる相手でも勝たせてもらえないというのはリーグ的にも面白いんじゃないかとは思います。ヤットさんはどう感じてます?

遠藤 俺は結構前から言っているけど“格差はあったほうがいいんじゃないか派”なんだよね。

憲剛 そうなんですね。

遠藤 毎回タイトルを取るような戦いができればお客さんもより集まるし、お金も選手も集まるでしょ。そうなれば当然、格差って出てくるもの。海外のどのリーグも大体ビッグ4くらいあって中堅、残留争いをするチームって分かれる。そうなっていくのが、自然な流れなのかなって。

憲剛 ヤットさんが言うように何チームかビッグクラブみたいな感じで大きくなって、それに抗う中堅、残留を争うチームがあるという構図がはっきりしていくのも面白いのかなとは思いますけどね。

「これがJリーグ」というのができれば。
――Jリーグは前年に上位だったチームが翌年は降格したり、昇格即優勝したり。遠藤さんのガンバも2012年にJ2降格が決まって、J1に戻ってきた’14年に国内三冠を達成されています。

遠藤 ウチもそうですけど、一昨年のレイソルだってメンバーがそろっていながら降格していますしね。どこが優勝するか分からない、どこが降格するか分からないっていうのも魅力と言えば魅力なんですけど。

憲剛 Jリーグが誕生してまだ30年も経ってない。どうなっていくにしても“これがJリーグなんだ”と言っていけばいいんじゃないかな。やっぱり観てくれる人、スタジアムに足を運んでくれる人がたくさんいるというのが大事。それぞれのクラブが自分たちで方法論を見いだしながら前進していくべきなのかなとは感じますけどね。

遠藤 まあ、これからだね。

憲剛が遠藤を川崎に誘った日。
1時間にわたって続いたトークマッチアップ。

中村憲剛の“覚えてます? パス”に対して「どうだったっけ?」と遠藤保仁の“うろ覚えスルー”が何回かありました。そりゃそうですよね、昨年、前人未踏の公式戦1000試合出場を突破していますし、JOMO CUPなども含めたらもっと数字が増えていきます。

全部の記憶がクリアだったらそれはまた凄いこと。ただ中央大学からフロンターレに加入してJリーグでは5年後輩になる対談相手の瑞々しい記憶力には少々驚いていましたが。

最後に“うろ覚えスルー”をもう1つ。

憲剛 代表のときでもボールが来たら何かできそうだなって思っているときに、スッと送ってくれるのがヤットさん。だから昔、一度誘ったことがあるんですよ。フロンターレに入ってくれないですかって。その話、覚えてます?

遠藤 うーん(考え込む仕草をして)、多分(笑)。

憲剛 はい、それで十分です(笑)。

ゲームの駆け引きに負けず劣らずの、2人のトークのやり取り。間も、テンポも、言葉も。兎にも角にも絶妙かつ最強でございました。

リンク元

Share Button