もう一花咲かせてくれ… くすぶる選手多い「プラチナ世代」の“寂しい現状”

日本サッカー界において過去最も有名な世代は、1979年生まれを中心とした「黄金世代」で間違いないだろう。1999年のワールドユース(現U-20W杯)で準優勝を果たしたチームには、小野伸二、高原直泰、稲本潤一、遠藤保仁、小笠原満男、中田浩二、本山雅志らが顔を揃え、その後も日本サッカー界の中心的存在として長く活躍を続けた。

そして、その彼らを超える世代として大きな期待を背負ったのが、2005年に韓国で開催されたMBC国際ユースにU-13日本代表として出場し、圧倒的な強さでブラジルやフランスの選抜チームを退けて優勝を飾った「プラチナ世代」である。

1992年生まれを中心とした、この「プラチナ世代」のエースは、宇佐美貴史だった。小学生時代から天才少年として騒がれ、前述したMBC国際ユースの決勝戦では圧巻の5人抜きドリブルで得点を演出。数々の俊英を生み出したガンバ大阪下部組織の中でも最高傑作として騒がれた。その看板通り、高校2年生でトップチームに昇格し、高校3年生だった2010年にはJ1で7得点をマークしてベストヤングプレイヤー賞を受賞。そして2011年7月にはドイツ・ブンデスリーガの盟主、バイエルン・ミュンヘンに移籍した。

このまま世界を舞台に暴れまわることが期待された宇佐美だったが、ハイレベルな選手たちの中に埋もれて1年で退団。日本復帰後にガンバ大阪のエースとして国内三冠の原動力となったが、満を持して挑戦した2度目の海外移籍も失敗に終わり、日本代表としても2018年のロシアW杯には出場したが、レギュラーには定着できずに代表通算27試合で3得点と期待値以下の働きのまま28歳となった。現在はガンバ大阪所属。スピードに乗ったドリブルとシュート力は、依然として“違い”を感じさせるが、ここから森保ジャパンで定位置を掴んで2022年のカタールW杯で活躍するためには、Jリーグで得点王になるなどの目に見える「結果」を出す必要があるだろう。

その宇佐美と並んで日本の新たな攻撃を構築するはずだった男が、爆速ウインガーの宮市亮である。中京大中京高校を卒業してすぐにイングランドの名門・アーセナルと5年間の長期契約を交わし、レンタル先のオランダ・フェイエノールトで活躍してA代表デビューも飾った。

しかし、復帰したアーセナルでは出番を得られずに再びレンタルされると、ここから右足首のじん帯損傷、両膝の前十字じん帯断裂と大怪我が相次ぎ、選手として重要な時期をリハビリに費やした。それでも現在はドイツ2部のFCザンクトパウリで復活気配。宮市がこのまま怪我なくプレーできれば、代表の舞台で試してみる価値はあるだろう。A代表は2012年に2試合に出場したのみ。未知数な部分が多いが、その分、期待感もある。

日本代表では結果を残しながらも所属チームで不遇の時間を過ごすのが、MF柴崎岳である。「プラチナ世代」のゲームメーカーとして活躍し、青森山田高校から鹿島アントラーズに入団。2016年のクラブW杯でレアル・マドリード相手に2得点を決め、スペイン2部のテネリフェへ移籍。そして翌年、1部に昇格したヘタフェへに引き抜かれ、バルセロナ戦で左足ボレーでのゴラッソを決めた。

だが、その試合で左足中足骨を骨折して戦線離脱すると、その後はチーム戦術に合わずに構想外。移籍したデポルティーボ(2部)では、監督が交代した今年に入ってから存在感を高めたが、チームは降格圏となる22チーム中19位に低迷している。依然として日本での期待と世界からの評価には大きな隔たりがある。

奮起を期待したい「プラチナ世代」の面々は、まだまだいる。FWでは浦和レッズに所属する杉本健勇が、そうだ。セレッソ大阪から移籍1年目の昨季は出場21試合で2得点と期待を裏切った。身長187センチのサイズを生かしたプレーで再開後のJリーグで結果を残し、2018年以来の日本代表復帰から、まずは大迫勇也の控えの座を掴みたいところだ。

その他、2009年のU-17W杯出場メンバーでいえば、FW宮吉拓実(京都サンガ)、MF高木善朗(アルビレックス新潟)、MF小島秀仁、MF堀米勇輝(ともにジェフユナイテッド千葉)、DF内田達也(ザスパクサツ群馬)らが「プラチナ世代」と呼ばれて期待を集めたが、いずれも思うような成長曲線を描くことができず、彼らの舞台は現在J2である。

「黄金世代」を上回ることが期待された彼らは、このまま看板倒れのまま終わってしまうのだろうか。実は、若年代では代表入りしていなかった同学年の面々を見ると、FW伊東純也(ベルギー/ヘンク)、FW武藤嘉紀(イングランド/ニューカッスル)、FW仲川輝人(横浜F・マリノス)、MF遠藤航(ドイツ/シュトゥットガルト)、MF小林祐希(ベルギー/ベフェレン)、MF大島僚太(川崎フロンターレ)、DF昌子源(ガンバ大阪)らがおり、世代としての評価は決して低くはない。

しかし、「プラチナ世代」の言葉が生まれた頃に思い描いていた未来像からは、大きく異なった勢力図になっている。現に今、「プラチナ世代」を検索すると、ゴルフの小倉彩愛、古江彩佳、佐渡山理莉らがヒットする。サッカー界での「プラチナ世代」は、このまま“死語”になるのか。それでは寂しい。まだ彼らは27、28歳である。もうひと花咲かせるチャンスはまだ、残されているはずだ。

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