G大阪が本物になった夜…05年“西野ガンバ”らしさで磐田&横浜Mをねじ伏せ初優勝の道へ

G大阪が初優勝した05年最終節の川崎戦(等々力)の模様が、16日午後7時からDAZNの「Re―LIVE」企画で配信される。このシーズンに“大黒様”として大ブレークしタイトルに貢献したFW大黒将志が解説。また並行してクラブも公式YouTubeで、同戦に出場していた宮本恒靖監督、松波正信強化アカデミー部長、山口智ヘッドコーチが生解説する。

今もサポーターの脳裏に刻まれる劇的V試合の配信を前に、このシーズンのターニングポイントとなったゲームを当時の担当記者が振り返る。

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栄冠はスターの力だけでつかめない。シーズン後にチームを去った男のプロ生活最後のゴールがなければ、ガンバ大阪の初優勝はなかったのだから。

05年8月27日の夜。G大阪は2連覇中の王者・横浜Mを力づくでねじ伏せた。同点に追いつかれて迎えた後半ロスタイム1分。渡辺光輝(現・柏レイソル総務部)のバックヘッドがゴールネットを揺らした。 シーズンを通してみると単なる1勝だが、まだタイトルの味を知らないチームにとっては大きな自信となる白星だった。

渡辺は生え抜きのスター選手ではない。03年オフに柏で契約満了。早大の先輩でレイソル時代に教えを乞うた西野朗監督率いるガンバに、縁あって加入した。右サイトで汗をかく、縁の下の力持ちだった。柏時代にはG大阪戦にめっぽう強かったが、移籍2年目のこの試合の前まで新天地でのゴールはなかった。

しかしこの夜は、名前の通り、光り輝いた。0―1の前半38分に、移籍2年目でのリーグ戦初ゴールで同点。第21節のこの試合の前まで、右サイドで8度先発したが、フル出場はなかった。だが、9度目の先発は、最後に職人をヒーローへ導いた。「ガンバでのリーグ戦で初めて取って、2ゴール。取りにいくしかなかった。本当に良かったです」慣れないお立ち台で、少し照れくさそう笑っていた。

05年のG大阪はFW大黒将志、FWアラウージョ、MFフェルナンジーニョの、破壊力抜群の攻撃力が武器だった。2点取られたら3点、4点取る打ち合い上等“大阪スタイル”の攻撃サッカーでサポーターを魅了した。

7月の6連戦「HOT6」で6試合21得点、5勝1分けで勢いに乗った。マリノス戦劇的勝利の3日前には、優勝を目指すたびにひれ伏した磐田を、3人の連携がはまって後半3発。まさに力ずくで難敵を破った。

ジュビロに勝った深夜、興奮冷めやらぬ佐野泉社長(故人)は、遠征先のスナックのソファに腰掛け、勝利と酒でほろ酔いになりながらポツリと言った。

「次のマリノスに勝てば、ガンバも本物になる」

結果として、この言葉は正しかった。後日、選手たちもターニングポイントとして挙げたのは、渡辺のゴールで勝った横浜M戦だった。

このシーズン、G大阪は2~5位と勝ち点1差で優勝した。渡辺が青と黒のユニホームに袖を通した2年間で挙げた得点は横浜M戦での2つだけ。でもこの2ゴールは、“オリジナル10”で最後まで無冠だったクラブに、とてつもなく大きいものをもたらした。

19年までにG大阪が獲得した国内3大タイトル+ACLの計9冠は、鹿島(20冠)に次ぐJクラブ2位。もしも渡辺のゴールがなかったら、いま宮本が率いるガンバのユニホームに輝く星の数は、もっともっと少なかったかもしれない。クラブにとっても大きな分岐点となった白星だと、15年たった今でも思っている。

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