G大阪、王者横浜FMを倒した“作戦”に潜むチームの成長 遠藤「大きく踏み出せた」
ベテランが金字塔を打ち立てた一戦で9年ぶりの開幕勝利を引き寄せた
ガンバ大阪が23日、Jリーグ開幕戦となる横浜F・マリノス戦に2-1で勝利し、9年ぶりの白星スタートを切った。この一戦で、MF遠藤保仁がJ1最多タイとなる通算631試合出場を達成。18年限りで現役を引退した元日本代表GK楢﨑正剛(名古屋グランパス)に並ぶ金字塔を打ち立て、自身が持つ最多の21年連続開幕スタメンの記録も更新した。昨季のJ1王者を倒したG大阪だが、勝利のポイントは「臨機応変さ」にあった。
G大阪が、大きな勝ち点3をつかんだ。遠藤が先発したG大阪は意表を突いた4バックでスタート。昨季から取り組む3-5-2のシステムに磨きをかけてきたが、4-3-3で中盤は遠藤をアンカーに置いた逆三角形を形成した。前半からハイプレスで果敢に攻め込み、同6分にMF倉田秋が先制点を奪取。同34分にはMF矢島慎也がネットを揺らすも、GK東口順昭のフィードに抜け出した倉田にオフサイドの可能性があったが、VARによる確認の末にゴールが認められた。
一方、2-0で前半を折り返したG大阪は後半、横浜FMの猛攻を受けるも、守備の時は右ウイングに入ったMF小野瀬康介が下がり、耐えしのいだ。後半29分にMFマルコス・ジュニオールに1点を返されたものの、守護神の好セーブも光って勝利をつかみ取った。
この一戦、勝利のポイントは前半30分過ぎにあった。相手のトップ下に入ったマルコス・ジュニオールが豊富な運動量を武器に揺さぶってくる。これを遠藤がさすがの技術で食い止めていたが、崩されるリスクも出ていた。そこで、インサイドハーフに入っていたMF井手口陽介を一列下げて、ダブルボランチにし、MF矢島慎也をトップ下に置く三角形へ中盤の形を変更するプランを思いついた。
「横によく動くので、それに付いて行ったらスペースが空く。最初は(マルコス・ジュニオールを見るのが)僕だけだったんですけど、(井手口)陽介もいたほうがいいという形になって監督に了承を得てシステムを変えた」
宮本恒靖監督に遠藤が“直談判”し、指揮官も「GOサインを出した」。このシーンだが、発信したのは遠藤だけではない。井手口や矢島、倉田や主将マークを巻いたDF三浦弦太らが瞬時に話し合って決めた。もちろん、遠藤というベテランがいて安心感を与えた部分はあるが、中堅や若手の積極的な姿勢は、これまでG大阪に足りないピースでもあった。40歳MFもこのように指摘する。
昨季とは違う選手の「成長した」一面と指揮官との連係
「去年も悪い時に自分たちで判断して、というのが少なかった。言えるか言えないかの勇気を持っているかどうかだけ。どんどん選手から発信していいと思いますし、実際やるのは選手なので、選手が気付いて(変更した)というのは、また一歩成長したとこかな。しっかりと監督とコミュニケーションを取ってやれたのでまた大きく踏み出せた」
戦術的に必要な「臨機応変さ」に気付き、勝利にこだわった結果、選手からの発信を促すことができた。宮本監督も、我慢する時間帯が続くなかで選手から発信されたシステムを「できるだけ(変更せずに)その時間長く、というところでやり方を変えなかった」と自主性を尊重した。そのうえでハーフタイムに指示を出した。
「ボールを奪う守備をしていこうというのは今年のチームとしての大きなコンセプトとしてあるので、ボールを奪う高さ(位置)は違えど、続けて(プレスをかけて)いかないといけないというのは選手に伝えました」
横浜FMに対して綿密に練られた戦術が見事にハマり、チームとして昨季とは違った姿を見せることができた。この1勝は9年ぶりの開幕戦勝利だけではなく、一人ひとりの自信へとつながるものとなったはずだ。