ガンバとセレッソが成功と言える理由、神戸は欲を言えば… J1ストーブリーグ通信簿2020

いよいよ今年もJリーグのシーズンが到来。J1は2月21日からスタートし、各々の目標に向かってひた走る長丁場の戦いが続く。昨シーズンは横浜FMが15年ぶりのリーグ制覇を果たしたが、オフには新たなシーズンに向けて各チームが動き、勢力図も変化した。そこで今回はJ1全クラブのオフシーズンの選手補強を査定(良い方からA・B・C・D・Eの五段階)し、3日間にわけて紹介する。

■G大阪 B

まずJ1王者の横浜FMなど引く手あまただった小野瀬康介の残留という大きなトピックがあった一方で、年内にはGK一森純をJ2岡山から獲得した以外になかなか補強の知らせがなかったが、3ー5ー2を採用する上で不安要素だったセンターバックに新里亮(←磐田)、サイドもこなせるFWとして小野裕二(←鳥栖)を獲得した。

そして降って湧いたような昌子源(←トゥールーズ)の“逆オファー”はリーグ優勝を目指すG大阪にとって大きな力になりうる。3バックに昌子、日本代表DF三浦弦太、韓国代表DFキム・ヨングォンが揃えば、守護神の東口順昭と合わせてJリーグ屈指の守備陣が完成する。新人選手では昨シーズンから特別指定で帯同していたDF黒川圭介が主力に定着してもおかしくない。

ユースからの昇格者もU-17W杯に出場したFW唐山翔自、FW塚元大と期待のタレントが揃う中でも“アシストマシーン”のFW川崎修平はG大阪の得点力をさらに引き上げうる面白い存在だ。

■C大阪 B

昨シーズンはミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が1年目、しかも山口蛍や杉本健勇など主力選手を放出しながら、優勝した横浜FMから勝ち点11差の5位でフィニッシュ。MF水沼宏太が横浜FMに移籍したものの、昨シーズンは鹿島で活躍したサイドバックの小池裕太、ベルギーからFW豊川雄太(←オイペン)、チャンスメイクに定評のある坂元達裕(←山形)を獲得し、不安なポジションに的確な補強を施した。

昨年は長期の離脱でシーズンの大半を棒にふった長身FW都倉賢が元気に復帰し、清武弘嗣や柿谷曜一朗も万全な状態で開幕を迎えれば、可変性の高い4ー4ー2をベースとしたシステムでチームとして高いパフォーマンスが期待できる。昨シーズン最少失点のディフェンスは安定しており、大崩れする心配はほぼ無いだけに、アタッカー陣に二桁ゴールを記録するような選手が出てくるかどうかが優勝争いを終盤まで続ける鍵になりそうだ。

■神戸 C

ビッグネームを立て続けに獲得した過去2、3シーズンより堅実な補強が目立つ。日本人選手の移籍での獲得はセンターバック菊池流帆(←山口)だけだが、前線に清水のエースだったFWドウグラスを獲得できたことは大きい。

昨シーズン13得点のダビド・ビジャが現役引退した分を少なくともゴール数で埋めることは十分に可能で、フルシーズンでプレーできれば、さらに上乗せも期待できる。欲を言うならACLの選手登録に備えてアジア人枠の外国人選手を獲得しておきたかったが。

■広島 D

城福浩監督が就任3年目となるシーズンでタイトルも期待される。ただ、インとアウトの収支から考えると、MF吉野恭平(→仙台)、稲垣祥(→名古屋)、FW渡大生(→大分)などの移籍に見合う戦力を補強したとは言い難い部分もある。

FW永井龍(←松本山雅)、DF櫛引一紀(←大宮)ともに好選手だが、優勝を目指すメンバーとしては過度な期待ができない部分もある。中盤と2列目はもともと選手が揃っているが、さらに構成力を高める上で、エゼキエウに期待するところは大きい。

永井が新加入の前線はドウグラス・ヴィエイラに加え、松本山雅からのレンタルを延長したレアンドロ・ペレイラがさらにフィットしそうだ。ユースから昇格の鮎川峻はシャドーのポジションからゴールを狙える選手で、1年目から活躍してもおかしくない。

■鳥栖 C

ギリギリまで残留争いを強いられた昨シーズンから飛躍を果たすために、即効性の高そうな補強を敢行している。象徴的なのが小屋松知哉(←京都)の獲得で、左サイドから鋭いカットインが1つの武器になりそうだ。一方で昨シーズン途中に鹿島からレンタルで加入していた金森健志が完全移籍で加入となり、左から小屋松、右から金森というサイドアタックは相手の脅威になりうる。

FWの主力は引き続き攻守にハードワークできる金崎夢生が有力だが、長身のレンゾ・ロペスが明確なターゲットマンとして金明輝監督の信頼を勝ち取れれば、攻撃のバリエーションが確実に広がる。長く活躍した仙台から加わったMF梁勇基は主軸の原川力とともに、インサイドから攻撃のアクセントを加える。

また最終ラインの左センターバック候補として大型レフティーの宮大樹(←水戸)とエドゥアルド(←松本山雅)が加わり、左サイドバックの内田裕斗(←徳島)も攻め上がりだけでなく、ビルドアップに定評のある選手。これらの補強を見ても、バックラインからのワイドな組み立てを意図しているのは明らかだ。

総合力の高い大型GKの守田達弥(←松本山雅)も開幕からスタメン出場を果たす可能性は十分ある。新卒の選手では大企業からの内定を辞退してプロでの挑戦を決めた森下龍矢(←明治大)が即戦力として高い期待を背負っている。大学時代はウイングバックが主戦場になるなど、非凡な推進力が魅力で、躍進の大きな力になりうる。また鳥栖が力を入れているアカデミーからはMF本田風智がサイドアタック主体のチームに攻撃の創造性を与えうるタレントだ。

■大分 B

昨シーズン10得点のオナイウ阿道が浦和にレンタルバックされ、そこからJ1王者の横浜FMに移籍したのは痛いが、川崎から期限付きで加入したFW知念慶は十分に穴を埋められるタレントだ。昨シーズンのJ3で17得点を記録し、群馬のJ2昇格に大きく貢献した高澤優也、前線での機動力に優れる渡(←広島)と新加入のFWはタイプが異なり、シャドーのポジションで併用することも可能だ。

引く手あまただったMF小塚和季の慰留に成功した上に、野村直輝(←徳島)、町田也真人(←松本山雅)という技術とセンスの高いMFを獲得したことで、中盤に関してはJ1でも上位の充実度となっている。

また片野坂知宏監督が掲げる長短のパスワークを駆使した幅広い攻撃をさらにレベルアップさせるキーマンになりそうなのが香川勇気(←長崎)だ。左から上下動するだけでなく、組み立てからクオリティを加えることができる。正確な長短のパスと決定力の高いミドルシュートで中盤から甲府の攻撃力を高めた佐藤和弘、同じく甲府で最終ラインを引き締めた小出悠太の補強も的確だ。

評価はBとしたが、大分の資金力を考えれば限りなくAに近く、昨シーズンの9位をさらに上回る結果を残す期待は十分だ。

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