大胆なシステム変更を進める浦和とFC東京。宮本ガンバは新スタイル確立へ…沖縄キャンプに見えたJの変化

長らく3バックを採用してきた浦和が4バックに着手
沖縄はこの時期、サッカーをするのには最高の環境だ。

20度前後の気温で、日が射すと半袖でのトレーニングも可能になり、身体がよく動くので仕上がりも早くなる。グラウンドが整備され、非常にきれいな芝の上での練習が可能だ。練習スケジュールを順調にこなし、チーム作りを着実に進めることができる。

浦和レッズは、金武町フットボールパークで第1次合宿をスタートさせた。そこで取り組んでいるのが、新システムへの移行だ。

クラブは、新たに就任した土田尚史スポーツダイレクターが「3年計画で改革を行ない、2022年J1優勝」と宣言し、今年は新しいチーム作りの元年となっている。それを選手も意識しており、システム変更はその第一歩になる。槙野智章は「新しいことに挑戦し、チームの改革を進めるには大事なこと。楽しみでもある」と前向きだ。

浦和と言えば3バック、3-4-2-1のシステムを長らく採用してきた。補強も例年、そのシステムに合うタイプの選手を獲得するなどチーム作りを徹底し、3バック王国を築き上げてきた。そのスタイルは鹿島の4バックと並び、しっかりと定着している。

その浦和が4バックに挑戦しようとしているのだ。

4対2で狭いコートでの鳥カゴ練習や4対3での攻撃練習、さらにフルコートでは最終ラインのビルドアップからボールを保持しながらゲームを組み立てていく練習をしていた。昨年34得点と低調だった攻撃を改善すべく、大槻監督の大きな声が響き渡り、選手はポジショニングや動きについて確認をする。

選手は大槻監督の声に敏感に反応する。監督の戦術を理解し、4バックに対応できる選手がそのポジションを掴むことになる。それだけにキャンプは選手の集中力が凄い。アップでは笑い声が漏れていたが、練習に入ると空気がピンと張りつめる感じだ。

レギュラー争いは、これから熾烈を極めるだろう。

4バックになれば、これまで出場機会に恵まれなかった山中亮輔やマルティノスに出番のチャンスが増えるだろうし、2トップになれば杉本健勇も活きてくる。サイドハーフは激戦区になり、CBは槙野、マウシリオ、鈴木大輔、岩波拓也らが争うことになる。攻撃の構築、左右のサイドバックをどうするのか等々、課題はあるがピリッとしたムードで合宿が進む中、チームがどう仕上がっていくのか。

今シーズンの浦和には期待が膨らむばかりだ。

倉田秋も「ホンマしんどい」と疲労困憊。ハイプレスを徹底するG大阪
ガンバ大阪は13日から沖縄市のタピック県総ひやごんスタジアムでキャンプを張っている。宮本恒靖監督が続投になり、昨年シーズンの7位から「優勝を目指す」と宣言した。クラブの再建と優勝に向けてスタートを切ったガンバのキャンプで見えてきたのは、「ハイプレス」だった。

昨シーズンの終盤戦、湘南戦や仙台戦などでは高い位置から相手にプレッシャーをかけ、ボールを奪って速く攻めるスタイルで勝利した。それをさらに進化させ、ハイプレスで相手を封じ込めて、攻め切るスタイルを練習で徹底している。

守備のスイッチが入ると取り切るところまで追い込む。プレッシングが緩むと宮本監督の厳しい声が飛ぶ。周囲の連動した動きと豊富な運動量が求められるが、これだと夏場はかなり体力的にしんどくなるだろうと心配してしまうほどの勢いだ。

倉田秋は「めちゃ追い込んでいくんで、ホンマしんどい。でも、高い位置で獲れればチャンスになるんで、やり続けなあかん」と新たなスタイル確立に意欲的だったが、ハードな練習に疲労困憊といった表情だった。90分間内でどうメリハリをつけるのか、そして奪った後、どうフィニッシュに繋げていくか。まだ課題は多いが、ガンバはここ数年築けなかった自分たちのスタイルを模索し、確立していこうとしている。

FC東京は、沖縄の北部、国頭村で6日から合宿をスタートした。

リゾートホテルなのでサウナなど施設が充実しており、競技場の芝は手入れが行き届いていた。周囲はコンビニがある程度で那覇の喧騒から遠く離れ、サッカーをする環境としては最高だ。ちなみにホテルから競技場までは1.3キロ程度で選手は歩いたり、自転車で通っている。オリヴェイラらブラジル人選手はみな“チャリ通”がかなり気に入っているようだった。

さて、合宿では長谷川健太監督が、昨年2位に終わった悔しさを糧に、チーム改革を進めている。着手したのはシステム変更だ。FC東京と言えば4-4-2だが、今シーズンは4-3-3に挑戦している。4-3-3(4-2-3-1)の代表格は、昨年優勝した横浜F・マリノスだが、あえて難しいと言われるこのシステムに挑戦しているところに長谷川監督のタイトル獲得への本気度が窺える。

2トップを厳しくマークされ失速したFC東京は4-3-3へ舵を切る!?
昨シーズンの序盤戦は永井謙祐とオリヴェイラの2トップが戦術になり、久保建英の活躍もあって素晴らしい戦いを見せた。だが、久保が移籍し、相手が2トップを厳しくマークするようになると攻め手を失い、得点を奪えずに勝点を失う試合が増えた。

昨年と同じことをしていてはタイトルを獲得できない。さらなる攻撃の手段を増やし、攻撃的なサッカーで相手に打ち勝つ。そのために4-3-3に舵を切り、磐田からアダイウトン、鹿島からレアンドロとシステムにマッチする選手を獲得している。

このシステムを完成させるのは、マリノスを見ても分かるように容易でない。安定した守備をどう構築するのか。また、選手が阿吽の呼吸で動けるレベルにならなければ流動的に動いて効果的なプレーを生み出し、相手を崩していくことができない。その呼吸を整えるのにはそれなりの時間を要するのだ。

その一方で、勝つためにこのシステムを導入しているわけで、そのためにも結果が求められる。FC東京は4-4-2という確立したシステムを保持しており、立ち戻れる場所があるが、果たして結果とシステムの完成という二兎を追って優勝争いができるかどうか。

丹羽大輝は「苦しい時もあるだろうが貫いて、新しいスタイルを完成させたい」と意欲的だ。それだけの戦力は揃っている。我慢が求められるシーズンになるが、4-3-3を確立して優勝できれば、FC東京の「黄金時代」がやってくる可能性もあるのではないだろうか。

春の沖縄キャンプは、新しいことに挑戦する意欲と決意がチームから感じられる。大胆なシステム変更を進めている浦和とFC東京、そして戦術的な上積みを見せているガンバ大阪は、今シーズン、どんな戦いを見せてくれるだろうか。

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