U-17W杯組を加えて新生U-18日本代表が始動! 競争を煽った紅白戦で存在感を見せたのは?

2021年のU-20W杯出場を目指し、“融合”合宿が行なわれる
異様な雰囲気だった。紅白戦とは思えないほどの熱気が漂い、選手たちは公式戦さながらの迫力でボールを奪い合う。合宿の総仕上げとなる3チーム対抗戦は“サバイバルマッチ”に相応しい内容で幕を閉じた。

年内最後の合宿を12月16日から福島県のJヴィレッジで行なったU-18日本代表。再来年のU-20ワールドカップを見据え、今回の合宿にはふたつの注目ポイントがあった。ひとつ目がU-17ワールドカップ組を初めてメンバーに組み込んだ点だ。

これまで影山雅永監督は選手の負担や経験値の蓄積を踏まえ、U-17代表の活動を優先。11月初旬のU-19アジア選手権予選も例外はGKの山田大樹(鹿島ユース)のみで、ほとんどの時間を18歳の選手だけで強化を図ってきた。だが、11月初旬のワールドカップをもって、U-17代表の活動も終了。そこで今回から一学年下の彼らをチームに合流させた。

そして、ふたつ目が36名の選手を招集した点である。その理由はシンプル。U-20ワールドカップ出場権が懸かる来秋のU-19アジア選手権に向け、選手間の競争を煽るためだ。

今回はこれまでのコアメンバーに加え、先月のアジア予選を欠場した山本理仁(東京V)、高体連組では成長著しい松村優太(静岡学園)や田平起也(神戸弘陵学園高)がチームに復帰。斉藤光毅(横浜FC)、松岡大起(鳥栖)などの主力候補に加え、西川潤(桐光学園高)や鈴木彩艶(浦和ユース)といったU-17ワールドカップで活躍した選手をチーム事情で呼べなかったものの、構想に入る選手たちがずらりと顔を揃えた。

そんな彼らの力を試す場として、合宿3日目に用意されたのが3チームによる紅白戦だ。45分1本勝負の総当たり方式で争われたサバイバルマッチ。選手の割り振りも明確で、競争を煽るメンバー構成について影山監督は狙いをこう話す。

「11月のアジア予選に行った選手で来られない選手もいたけど、今回の活動に来ているU-18の選手で(ベストの)メンバーを組んだのがチーム1。チーム2はチャレンジャーチームの位置付け。チーム3はU-17ワールドカップに出場した選手たち。彼らが自分たちの立ち位置を理解しながら、どう戦うのかを見たかった」

そうした指揮官からのメッセージに、選手たちも狙いを把握し、紅白戦では熱のこもったプレーを見せる。1本目は榊原杏太(名古屋U-18)の得点で1−0で勝ち切ったチーム2が、チーム1に下克上を達成。チーム2とチーム3の顔を合わせとなった2本目では、新顔揃いのU-17組が唐山翔自(G大阪ユース)と三戸舜介(JFAアカデミー福島U-18)のゴールで、2−0で勝利を掴んだ。そして、勢いに乗ったチーム3は3本目でチーム1と対戦。序盤こそ押し込まれたものの、唐山が獲得したPKを自ら決めて1−0で2連勝を果たした。

この結果に指揮官もしてやったりの表情。「面白いゲームでしたね。狙い通り」と笑顔を見せ、U-17組の快勝劇やチーム2の奮起に一定の評価を与えた。

U-17組は上のステージで戦えることを証明
今回の内容を振り返ってみると、それぞれのチームが可能性を示した。U-17代表組のチーム3は培った連係面でアドバンテージがあったのは間違いないが、各々が持ち味を発揮。「ブラジルで悔しい想いをしていたので、今日はやってやろうと思っていた。その通りになって良かったし、ワールドカップが終わって変わった所を見せられた」と話した唐山は2ゴールで決定力の高さを示した。鈴木海音(磐田U-18)も正確なビルドアップで上のステージで戦えることを証明。彼らの活躍は影山監督の目にも焼き付いたはずだ。

また、チーム2は即席チームでありながらも、チーム1に対して攻守で圧倒。特に存在感を示したのはボランチの土肥航大(広島ユース)や川崎颯大(京都U-18)で、球際での守備や状況判断の良さでポジション奪取をアピールした。

一方でレギュラー組中心のチーム1は2連敗で、唯一無得点に終わった。特に1本目は良さを出せず、攻守で噛み合わないプレーが散見。今後に不安を抱かせたが、危機感を募らせた2本目に意地を見せたのは好材料だ。

ゴールこそ奪えなかったものの、選手個人が戦う姿勢を前面に押し出して奮闘。とりわけ山本は仲間を鼓舞しながらスライディングでボールを果敢に奪うなど、背中でチームを引っ張った。「サバイバルの色が強い今回のキャンプで0得点。チームとしても個人としても一歩出遅れたので、真摯に結果を受け止めないといけない」と本人は自嘲気味に試合を振り返ったが、影山監督も鬼気迫るプレーを評価した。

「山本は上手いタイプだけど、スライディングなど泥臭いプレーも見せてくれた。(山本のように)いろんな世代を混ぜ合わせた時に引っ張っていける選手が増えてほしい」

来秋のアジア予選まで約11か月。メンバー入りをかけた熾烈な争いはまだ始まったばかり。この合宿で活躍したことで今後の立ち位置が保証された訳ではないし、2連勝を飾ったU-17代表組が全て生き残れるとも限らない。今回の合宿で感じた手応えや危機感を今後にどう繋げるかが、代表生き残りの分水嶺になるのは間違いない。

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