宮澤ミシェルがガンバ大阪のチーム改革に注目「次の時代に向けた本格的な世代交代に着手できるようになったんだろうな」

サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第113回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、ガンバ大阪について。多くの主力選手を放出し、宇佐美貴史と井手口陽介が復帰したガンバ大阪。生まれ変わりつつある彼らに宮澤ミシェルは注目しているという。

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この夏に大きな決断を下したガンバ大阪が、どう生まれ変わっていくのかを興味深く見ているんだ。

今季のガンバ大阪は、開幕直後からなかなか上昇気流を捕まえきれずに下位に低迷していた。それでこの夏にFWのファン・ウィジョがボルドー(フランス)へ、中盤の要だったMFの今野泰幸を磐田に出したほか、MF藤本淳吾(→京都サンガ)やオ・ジェソク(→FC東京)を移籍させた。

シーズン途中にもかかわらず、多くの主力選手を放出した理由は、なかなか進まなかった世代交代に本腰を入れて取り組もうとしているからだろうな。それができたのも、宇佐美貴史、井手口陽介の復帰が大きいね。

ほかのクラブなら下の世代が育たなくて、世代交代が進まないケースが多い。だけどガンバ大阪の場合は、下の世代が育ちすぎたことで世代交代が遅れていたんだ。この夏にも19歳の中村敬斗がトゥウェンテ(オランダ)へ、21歳の食野亮太郎がマンチェスター・シティ(イングランド)に移籍した。

宇佐美や井手口もそうだったけれど、せっかく育ってきた若い選手が早々に海外移籍してしまうとチームの世代交代は進まない。しかし、宇佐美や井手口が海外挑戦を経て、チームに戻ってきたことで、次の時代に向けた本格的な世代交代に着手できるようになったんだろうな。

いつまでも遠藤保仁におんぶに抱っこじゃ、シンドイからね。

ただ、ひとつ気になるのは、井手口や宇佐美がベテランとの競争に勝ってポジションを得たわけじゃないってこと。もちろん、彼らは海外移籍する前はチームの大黒柱だったのは間違いない。だけど、海外移籍している間にチームを支えた選手を簡単にお払い箱にすることには引っかかりを覚えるんだよな。

彼らの才能に疑いを挟む余地はないが、彼らの海外移籍は成功せず、チームでの出場機会も限られていた。海外移籍した選手が帰ってきたら暖かく迎えてほしいけど、そうした選手がJリーグに戻ってきたら、やすやすとレギュラーポジションを与えられるのはやさしさとは違うと思うんだ。

それに、クラブのために一生懸命に働いてきた選手が軽んじられているように見えちゃうしね。クラブとしては、それでいいのかなって思っちゃうんだよな。

もちろん、世代交代をする時は、若手を育てるためにポジションをある程度は与えるのも必要なこと。だけど、海外移籍を経験した選手にまで、それをする必要はあるのかな。むしろ、それまでチームのために頑張ってきた選手と競い合わせた方が、チーム力は上がっていくと思うんだよな。

もっとJリーグのために汗水流してきたベテランを大事にしてもらいたいんだ。

いずれにしろ、ガンバ大阪が下した決断だから、外野がとやかく口を挟むことではないよな。チームを率いる宮本(恒靖)監督も納得していることだろうし、彼らをどうまとめ、チーム力へと昇華させていくのか。

広島で出番の減っていたパトリックを、ファン・ウィジョの代わりとして獲得したけれど、まだ31歳でガンガン働ける選手だからね。パトリックを上手に生かしながら、ウィジョ流出による得点力をカバーしていけるといいよな。

今季はまだ2ヶ月強も残っているし、ガンバ大阪は降格圏から決して安全なポジションにいるわけではないからね。結果を残しながら、来季につながるチーム作りをどう進めていくのか。ここからシーズン終盤まで興味深く見ていきたいと思っているよ。

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