悔しいドローにも収穫見えた日韓戦。タフな守りを見せた守備陣、変化をつけた山口&倉田 フットボールチャンネル 8月6日(木)11時20分配信

日本代表は5日、東アジア杯の韓国代表と対戦し、1-1で引き分けた。大会連覇の目標が潰え、悔しいドローとなってしまったが、いくつかの収穫も見られた。攻撃陣には大きな課題は残っているが、選手たちはその中でも自信を口にしている。

悔しいドローに終わった日韓戦

 2日の2015年東アジアカップ(武漢)初戦・北朝鮮戦でまさかの逆転負けを強いられ、いきなり崖っぷちに立たされた日本。5日の第2戦・韓国戦は是が非でも勝利をもぎ取る必要があった。

ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はメンバー総入れ替えに打って出る可能性もあると見られたが、実際には5人を代えるにとどめた。守備陣はGK西川周作、 槙野智章(ともに浦和)、森重真人(FC東京)ら軸をなすメンバーは不動。中盤の山口蛍(C大阪)、快足FW永井謙佑(名古屋)も残した。ただ、基本布陣 は北朝鮮戦スタート時の4-2-3-1ではなく、後半から採った4-3-3。中盤は初キャップの藤田直之(鳥栖)をアンカーに置き、柴崎岳(鹿島)と山口 をインサイドハーフに並べる形だった。

指揮官が藤田に相手トップ下のチュ・セジョン(8番)をマンマーク気味につかせたこともあり、中盤に穴が空きがちだった前半25分頃までは韓国に圧倒的 に支配された。それでも槙野と森重がマークを受け渡しながらの196cmの長身FWキム・シンウク(9番、蔚山現代)の守備はうまく機能していた。「何度 かファウルはあったけど、高さの部分と監督の言うデュエル(決闘の意)の部分では気持ちと戦う姿勢を出せた」と槙野も手ごたえを口にしていた。

それだけに前半25分に森重がPKを取られたシーンは不運だった。「サッカーをやってたらああいうアクシデントはある。ハンドを取られたが、当たってる ことは当たってる。ただ、故意か故意でないかは審判もちゃんと見てほしい」と森重も悔しさをかみ殺した。韓国もこのPKと、FKからイ・ジェソン(17 番)のヘッドがクロスバーを叩いた後半24分の決定機以外、ゴールに直結しそうなプレーがなかっただけに、日本にとっては本当に残念だった。

前向きに語る山口と遠藤

 守備陣が粘り強くタフな守りを見せる一方で、攻撃陣もタテ一辺倒になりがちだった北朝鮮戦の反省を踏まえて、緩急をつけながらの攻めを構築した。その仕 事に率先して取り組んだのが、同点弾を決めた山口と初キャップの倉田秋(G大阪)。彼らは2011年に1シーズンだけセレッソ大阪でコンビを組んだ間柄。

「僕らはセレッソでやってるからやりやすさがあった。秋君はタメも作れるし、なおかつ上下に走れるからすごくいいアクセントになっていた」と倉田からゴールのお膳立てをしてもらった山口も前向きに語っていた。

後半途中からピッチに立った宇佐美貴史(G大阪)も「前へ前へって言うよりは、横の時間もつけ加えながらやらないと体力的に持たない。、監督からもそう いう話は出たし、そこはすごく改善した部分」と前回とは攻めのリズムが明らかに違ったと強調した。もちろん韓国に主導権を握られる時間は長かったが、これ を続けていけば、もう少し日本の形で攻められるはず。そういう意味でも光明が差したと言っていいだろう。

この日が初キャップだった倉田と藤田がJリーグでプレーしているような自然体でピッチに立てたこと、代表2戦目の遠藤航(湘南)も守備面で抜群の安定感を見せたことなども、韓国戦の収穫ではないか。

「球際は自分の中では意識はしていて、そこで負けないことは自分のよさ。北朝鮮よりは相手と五分五分の戦いになったかなと思いますけど、そこまで自由にや らせなかったところは続けていければいいかなと。キム・ミヌ(7番=鳥栖)が中に入ってきて難しいところがあったけど、全体的には守備のバランスは悪くな かった」と遠藤航自身も手ごたえをのぞかせた。内田篤人(シャルケ)が長期離脱中で右サイドバックの人材が手薄になっている今、彼が使えるメドが立ったの はやはり大きいだろう。

攻撃陣には課題

 北朝鮮戦からいくつかの部分で前進が見られただけに、1-1のドローという結果、そして2戦目で東アジアカップ連覇の夢がついえたことは不完全燃焼感が 強い。特に攻撃の迫力不足、決定力不足は非常に大きな課題。山口蛍の前半39分のミドル同点弾はまさにビューティフルゴールシュートだったが、それ以外の 決定機らしい決定機は90分間通してほぼなかった。

永井の背後への抜け出しも最後につぶされ、後半から登場した浅野拓磨(広島)の飛び出しもシュートまで持ち込めず、宇佐美もドリブルで仕掛けた段階で相 手に止められてフィニッシュまで行けないなど、迫力不足は否めなかった。個の打開力、ゴール前の推進力という点では韓国アタッカー陣の方が上回っていたと 言わざるを得ない。

日本代表の得点はザックジャパン時代から本田圭佑(ミラン)と岡崎慎司(レスター)の依存度が圧倒的に高い。彼らも30歳目前ということで、いつまでも彼らに頼っていたら、日本の攻めも頭打ちになってしまう。

それだけに、この大会で若手に飛躍をきっかけをつかんでほしいところ。しかし、現時点で本当にチャンスをモノにしつつあるのは、初戦でゴールした武藤雄樹(浦和)だけ。このままでは物足りない。9日の最終戦・中国戦ではそれ以外の面々に奮起を求めたい。

日本はハリルホジッチ監督就任後、いまだ公式戦で勝っていない。その悪循環に終止符を打てるか否か。今こそ指揮官と国内組の真価が問われる。

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