「正直、やめようと思ったことも…」ガンバ愛に溢れる“不屈のCB”は、V字回復への救世主となれるか

韋駄天・永井を上回るトップスピードを記録!

 いまだJ1リーグのホームゲームで未勝利、9試合・19失点と守備が崩壊し、降格圏近くに順位を落としている。そんなガンバ大阪が、今季無敗で首位を走るFC東京を迎えた第10節で意地を見せた。ディエゴ・オリヴェイラや永井謙佑久保建英ら強力な攻撃陣を前に、大敗すら危惧された試合を見事無失点で凌ぎ切り、逆襲への狼煙を上げたのだ。

ガンバにとって、今季のターニングポイントとなるであろうスコアレスドロー。その試合の守備陣の中心にいたのは、日本代表CBの三浦弦太ではなく、彼に代わって先発出場を果たした菅沼駿哉だった。

菅沼は、ガンバのホームタウンである豊中市出身で、ジュニアユースチームから巣立った生え抜き。2009年にトップチームに昇格し、大型DFとして将来を嘱望されたが、熾烈な競争に苦しみ続けた。11年夏に当時J2のロアッソ熊本に期限付き移籍すると、その後12年にジュビロ磐田に活躍の場を移し、翌13年には完全移籍。以後、京都サンガ、モンテディオ山形と渡り歩いた。そして昨年春、6年半ぶりに古巣復帰を遂げたのだ。

菅沼は、ひとつのエピソードを紐解いてくれた。

「ジュビロ時代でした。当時の監督で、今季からガンバU-23チームで指揮を執る森下仁志さんに、『お前の目標はなんや?』と訊かれて、『ガンバに戻ることです』と答えました。すると仁志さんは、『そしたらもう一回ガンバに呼んでもらえるように頑張ろうか』と言ってくれ、熱く指導をしていただきました。そして今季、開幕前になってもトップチームに入れなかった自分は、U-23で仁志さんにふたたび2週間の指導を受けました。そのとき、仁志さんに言われたんです。『現状に満足するな。試合に出ろ。ここのふたりのセンターバック(日本代表の三浦と韓国代表のキム・ヨングォン)に勝つにはなにをしたらいいのか、自分の良さを出すためになにをしたらいいのかを考えて取り組め』と。そう言われて、ガンバに戻ってこられたことだけで満足している自分に気づいて、やらなアカン、と強く思いました」

かくして重要なFC東京戦で先発出場のチャンスを得た。菅沼は絶えず身体を張り、自慢のスピードを武器に奮闘した。

宮本恒靖監督は「相手のカウンターに対応し、身体を張っていた。ラインコントロールも徐々に良くなった」と評価。菅沼は「永井君とはロンドン・オリンピック代表の候補合宿で一緒にやってて、自分の中ではラインを上げながらもスピードで勝負したいと思っていた。ゼロで抑えられたのは自信になる」と語った。事実、菅沼は、この試合でチーム1のトップスピード(時速32.3キロ)を記録し、永井のそれ(時速30.9キロ)をも上回った。

「僕の心の中にはいつも“ガンバ大阪”があった」

 試合後、恩師の森下からは、「これからやぞ」と声をかけられた。

「本当にこれからやと思います。ガンバからいろんなチームに移籍して、正直もうサッカーをやめようかな、と思ったこともありました。でもそんな僕を助けてくれたのはほかでもない、ガンバ大阪なんです。僕の心の中にはいつもガンバ大阪というチームがあり、僕をずっと守ってくれていた。だから今度は僕がガンバを守っていきたいんです」

そして、「仁志さんには感謝しかない。今シーズン、結果を残して恩返ししたいです」と付け加えた。

5月17日には29歳の誕生日を迎える。

「誕生日までにどれだけ試合に出られるかをひとつの目安にしていました。そして毎試合トーナメントという気持ちで戦っています。1試合でも負ければすぐベンチに戻る状況だと自覚しているので、毎試合勝つことが目標です」

ガンバ愛に溢れる男は、チームをV字回復させる救世主となれるか。生粋のガンバっ子、菅沼駿哉のパフォーマンスに注目だ。

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