シーズン275本のクロスを供給! 熊本から来た男、田中達也はガンバの起爆剤となれるか

「持ち味の突破を見せてくれた」とツネ監督も評価

 2月23日、シーズン開幕戦でひとりの男がJ1デビューを果たした。ガンバ大阪のMF田中達也だ。

福岡市出身の26歳。九州産大時代の2011年から2年間はロアッソ熊本の特別指定選手として登録され、15年に正式加入した。16年シーズンにはFC岐阜へ1年間の武者修行に出て、1年で復帰。そして昨シーズン、熊本でJ2全42試合に出場し、9得点・12アシストという結果とパフォーマンスが評価され、ガンバへの完全移籍が決まった。

持ち味であるスピードを武器に、自身初となるJ1の舞台で挑んだ田中。開幕戦の控えメンバーに名を連ねると、出場機会が巡ってきたのは1-3で迎えた60分だった。

「前に前に圧力を持って、点を取り返しに行くためのパワーを発揮してくれ」

宮本恒靖監督からそう指示を受け、右サイドハーフの位置に入る。劣勢の展開のなか、まずは守備で激しく身体をぶつけ、1対1で強い気持ちを示した。徐々に高い位置でボールを受けはじめると、対峙する相手を押し込み、クロスを上げ、チャンスを生んだ。宮本監督は、「後半残り20分の戦い方は次に繋がる。あと少しで同点というところまで盛り返すことができた。達也は持ち味の突破をたくさん見せてくれたと思います」と評価。積極的に前へ、前へと仕掛ける姿に、サポーターからも大きな声援が飛んでいた。

田中自身は横浜F・マリノスとのJ1デビュー戦をこう振り返る。

「J1の舞台はお客さんの数も多いし、圧力を感じました。最初は多少緊張しましたが、だんだんこのスタジアムでプレーできる喜びを感じられるようになりました。自分がどういうプレーをしたいのか、味方がどんなプレーを求めているのか。そういう擦り合わせをしていけば、もっと良くなると思います」

ボールを保持する時間を長くしながら、縦に速いサッカーを志向する宮本監督からは、常に要求されていることがあるという。

「ツネさんからは攻撃においても守備においても、強度とスピードを求められています。出ていくときのスピード、切り替えの早さ、一つひとつの単純なパスの質を上げること。ガンバは一人ひとりの選手の質が高いので、付いていくのに必死です」

「自分はサイドでしか生きることができない」

 ガンバでサイドを務める選手は、元日本代表の倉田秋をはじめ、藤春廣輝、米倉恒貴、オ・ジェソク、さらには昨季途中にレノファ山口から加入してブレイクした小野瀬康介など多士済々。彼らとの競争に勝たなければ、レギュラーの座は奪えない。田中はどのポジションで勝負しようと考えているのか。

「キャンプでは主にサイドバックに取り組みました。個人的に学ばないといけないと思っているのは、ディフェンスのところ。1対1で対峙しているときのディフェンスもそうですが、ボールが自分のサイドにない時のディフェンスポジションについてはチームメイトからも要求されているので、そこは伸ばしていきたい。守備の技術を上げていければ前も後ろも対応できる選手になれる。サイドであれば、左右関係なくサイドバックもサイドハーフも、3トップの脇でも、全部できるようになりたい。自分はサイドでしか生きることができないので」

そして田中がもっともこだわりを持っているのが、ほかでもない「クロス」だ。

「自分はゴールよりアシストのほうが好きなので、どれだけクロスを上げることができるかにこだわりたい。去年はJ2で275本のクロスを上げることができました。今季は、もっと質にもこだわっていきたいですね。抜き切って上げたり、相手が前にいても当たらないように抜き切らずに上げたり、ちょっとずらしてコースを作って上げたり。いかにチャンスを作れるかで、出番が来るかも決まると思います」

開幕戦で田中が供給したクロスは3本。1本目と2本目はともに高い位置で相手を押し込んでからのクロスで、しっかりチャンスに繋げた。そして3本目のクロスが相手DFとGKの連携ミスを誘い、藤春のゴールに結びついたのだ。「ラッキーでしたね。でもクロスの質が良くなかった。それでもチャンスの数を作った結果、得点が生まれたとポジティブに考えています」と話し、「これからもクロスの回数、質にこだわっていきたい」と力を込めた。

今季のガンバのスローガンは「GAMBAISM」。はたして田中にとっての“ISM”とはなんなのか。

「やる気は自分の持ち味のひとつ。闘う、とか、熱い言葉が好きです。そういう言葉通りのプレーでないと自分は生き残れない。ガンバのアカデミー出身の選手はみんな巧いので、自分は闘う部分や、最後まで走り切り、頑張ることがマストだと思っています」

サイドで闘う男、田中達也。土曜日の第2節・清水エスパルス戦での出番を掴むか。なにを置いてもそのクロスに注目だ。

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