今季は豊作!Jリーグで注目すべき珠玉のルーキー5選

ふたりの高校2年生が別格の輝きを発している

 今シーズンはルーキーの活躍が目立つ。

彼らがちょっと違うなと思うのは、徐々にプロの水に慣れさせていくとか、お試しのモラトリアム期間がなく、すでにスタメンで起用され、チームのレギュラーとしてプレーしていることだ。

そのなかで、ふたりの17歳の高校2年生が別格の輝きを発している。

ひとりが、名古屋の菅原由勢だ。

ポジションはセンターバック。一緒に組むホーシャが簡単に入れ替わられたり、守備の粗さが目立つので、余計に菅原の守備力のうまさ、技術の高さが目立つ。ラインコントロールも自らが仕切り、すっかり最終ラインの司令塔だ。

半年前は、名古屋ユースで昇格プレーオフをスタンドから応援していた。今年に入り、風間八宏監督がユースで菅原のプレーを見た瞬間、「うまい。真ん中で使える」と膝を打った。対人の強さ、足下の技術の高さ、ビルドアップの能力に長けていたのだ。菅原は「サイドバックが希望です」と語っていたが、風間監督はすぐにセンターバックとして起用することが閃いたという。

昨年の名古屋は、J2の舞台でワースト6位の65失点を喫した。その守備の修正もあるだろうが、菅原の存在は風間監督が目指すサッカーを確立するために必須なパーツだったのだ。
いきなり開幕戦のG大阪戦でスタメン起用されると、2失点はしたが勝利に貢献。2戦目の磐田戦は完封勝利、そして3試合目となる湘南戦も無失点に抑え、3試合で2勝1分、好スタートを切ったチームの守備陣を支えている。

話をして感じられるのは、素直さと謙虚さだ。

「毎試合、新しい課題が見つかり、それに向き合って一つひとつ直していこうというのが、今の良い結果につながっていると思います」

十分やれているが驕りや慢心はない。

初めてのプロの試合で連戦の疲れもあるはずだが「好きなことをしているのできついとかないです」と笑みを浮かべる。

「チームで自分が中心というぐらいの気持ちでやらないといけないと思う」

17歳ながら気持ちも強い。

これから川崎やC大阪、鹿島ら強力な攻撃陣を抱えたチームと対戦し、苦戦したとしても、それを肥やしにしていく貪欲な向上心もある。このまま風間サッカーで磨かれていけば、吉田麻也以来の世界で戦えるセンターバックに成長しそうだ。

もうひとりの17歳が、G大阪の中村敬斗である。

昨年のU-17ワールドカップで久保建英が注目されるなか、チームトップの4点を挙げて一気にその評価を高めた。シュツットガルトの練習に参加し、浦和など複数のクラブが争奪戦を繰り広げるなか、G大阪を選んだ。

大卒のルーキーとして、一番存在感を放っているのは湘南の松田天馬だろう

 ポジションはFWだが、本人曰く「4-2-3-1の前ならどこでもできる」という。近くで見ると180センチ、75キロの身体が非常に厚く、大きく見える。藤春廣輝は「フィジカルが強い」と言っていたが、その身体を活かしたドリブルとゴールへの意欲が魅力だ。

ドリブルも腰を落とす姿勢ではなく、ピンと背筋を伸ばして相手との駆け引きを愉しみながらかわし、シュートコースが見えたら迷わず打つ。迷いがなく、ゴールを向う姿勢がプレーに滲み出ているのは、まさに「ゴールを狙え」と選手に説くクルピ監督好み。サイズやスタイルは違うが香川真司や清武弘嗣に通じるところがある。

G大阪は堂安律が16歳、宇佐美貴史が17歳でデビューしており、若い選手が出てくる傾向が強いので年齢的な驚きはない。試合でやれる感触は「名古屋戦で分かった」と語り、続く鹿島戦では途中出場で、いきなりドリブルからゴールポストに直撃するシュートを放った。

自分の型に対する自信の強さをクルピ監督も見抜いたのか、3戦目の川崎戦ではスタメンに起用した。ただ、川崎戦は押しこまれた時間が長く、相手にボールをもたれると自分の良さは出しにくかったようだ。

「自信を持ってプレーしていたんですけど、サポートが遅れたり、遠くなってしまって……。個で打開したいけど、限界があるので、もうちょっと自分の武器を出せるところでパスをもらいたかったと思います」
まだ、引き出しが多くないため自分の得意エリアと型でしか、100パーセントの力を発揮するのが難しい。ただ、その引き出しは試合の中で学んでいるようだ。鹿島戦では金崎夢生の動き出しやキープするプレー、起点になるところなどが勉強になったという。向上心を持ってプレーするのは、上昇するには必要だ。

G大阪の攻撃陣は、エムボマを始め、アラウージョ、マグノ・アウベスら外国人選手に依存する傾向が強かった。中村は、G大阪にとって04年の大黒将志以来、20点以上を計算できる日本人ストライカーになる可能性を秘めている。顔よし、プレーよし、将来性あり。来年には、G大阪の顔になっている可能性がある。

大卒のルーキーとして、一番輝いているのが湘南の松田天馬だろう。

鹿屋体育大から入団したが、昨年に特別指定選手として3試合出場している。最終的にはその時の経験と「自分のたりないものを見つけられそうだから」と湘南への入団を決めた。

鹿屋体育大ではボランチだったが、東福岡高時代はシャドーやサイドハーフとしてプレーしていた。高3の時は10番を背負い、高校選手権に導いている。その時代に磨いた攻撃力に加え、鹿屋体育大時代にボランチとしてボール奪取など守備力を磨いた。

ルーキーたちが大いに暴れて、Jリーグに大きな波風を立ててほしい

 164センチと小兵ながら体幹が強く、当たり負けしない。中盤では小さな身体を絡めて粘り強く相手のボールを狩りに行く。もちろん湘南に必要な上下左右に動き回る運動量も選手の平均レベルを超えている。自分のプレーに自信を持っているのだろう、周囲が良く見えているので、状況判断も良い。

「常にボールを絡んでいこうという気持ちでプレーしています」

曺貴裁監督からは「常にゴールに向かっていけ」と言われているそうで、そこに松田自身のポジティブな気持ちが乗っかってアグレッシブなプレーを生んでいる。開幕戦の長崎戦では右サイドでのキレキレのドリブルからアシストが生まれた。川崎戦ではセットプレーでいつもとポジションを変えることで初ゴール、しかも貴重な同点弾を決めた。それは松田のゴールへの意識と状況判断の良さが生んだ結果と言えよう。

「自分がタメを作ったり、攻撃の起点になっているのかと言えば、そんな感じはないですし、もっとドリブルで仕掛けられたり、チームを落ち着かせるプレーができればもっと上に行けると思います」
自分が出た試合は必ず見返して、課題を明確にし、それに練習で取り組む。当たり前のことを愚直にやり続けるのは簡単なことではないし、それを苦にしてもいない。海外サッカーでは、イスコやコウチーニョのプレーをよく見ているという。受け答えも礼儀正しく、顔は優し気でカッコいい。ブレイクする要素は持っている。

ただ、結果を出せば相手も研究してくるだろうし、レギュラー争いが激しい湘南では試合に出られなくなる時もあるかもしれない。その壁をどうやって乗り越えていくのか。そのプロセスさえも楽しみな選手でもある。

その他にもC大阪の安藤瑞季は、これからが楽しみな選手。C大阪にいないゴリゴリ攻めるタイプのストライカーだ。長崎総科大付高出身で、高校選手権では3試合で3発決めて力を見せつけた。開幕前の合宿で「自分は下手過ぎますけど、気持ちでやります」と宣言していたように技術が足りない部分を気持とフィジカルで押しこむスタイルはC大阪にあってちょっと異質なタイプ。チームに馴染めば面白い存在になるだろう。

川崎の守田英正も興味を引かれる。攻撃力が高い選手が多いチームにあって守備に力を発揮するタイプだ。大阪の強豪、金光大阪高から流通経済大を経て入団し、昨年のインカレは大会MVPに輝くなどポテンシャルは確か。ボランチが主戦場だがG大阪戦では右サイドバックに入り、無難にこなすなどクローザーとしての役割も果たせる。川崎にはいないタイプゆえに、ロースコアでは重宝されそうだ。

ルーキーたちが出番を増やせば、チームには競争が起こる。大いに暴れて、チームに、そしてJリーグに大きな波風を立ててほしいと思う。

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