今野に認められ、麻也からも学ぶ。三浦弦太は次代のDFリーダー候補。

9月16日に行われた大宮アルディージャ戦、1-2のまま後半ロスタイムを迎えたガンバ大阪には敗色濃厚の雰囲気が漂っていた。しかしロスタイムも4分が過ぎた時、長沢駿の同点ゴールが生まれて勝ち点1を確保した。それをお膳立てしたのがクロスを入れた井手口陽介、そして相手と競り合って長沢にボールを落とした三浦弦太。2人の日本代表組だった。

「2失点しているのでセンターバックとしては不甲斐ないですが、ラストプレーで得点につながってホッとしました」

三浦は苦笑しながら話した。とはいえ、ガンバ大阪は残留争いの渦中にある大宮に2-2のドローにするのが精一杯だったという事実も残った。順位は7位のままで首位・鹿島との勝ち点差が18に開き、8試合を残してリーグ戦優勝は絶望的になった。

失点の多さが目立つ中で三浦の表情は冴えない。

 今季、ガンバの中盤戦以降の失速はかなり深刻だ。例年は春先にエンジンがかからないスロースターターで、夏から巻き返すバイオリズムを描く。しかし今年は7月29日の大阪ダービーでセレッソ大阪に勝って以降、この大宮戦まで1勝4敗2分。甲府に敗れ、広島、大宮に引き分けるなど下位にとりこぼしている。しかも目立つのが失点の多さで、6月17日の神戸戦(1-0)以来、無失点試合がないのだ。それもあって、三浦の表情も冴えない。

「失点が増えているのはセンターバックとして責任をすごく感じています。しっかりと戻る時は戻るし、球際は厳しくいくようにする。ゴール前は体を張って守るというのは戦術というより、みんなが徹底してやらないといけないところです。これは監督にも言われて、みんな意識してやれていると思うんです。

でも今日の失点もですが、1点目は守備になった時、戻れずに人数が足りていなかった。そこは戻りながら選手に声をかけていくとか、細かいところをしっかりとやっていかないと。2点目はオウンゴールですけど、セットプレーからで、マークに甘さに出ると失点につながると思うんです。今はなかなか点が取れないんで、セットプレーで取られると非常に苦しくなる。もっとそれぞれが意識して粘り強く守備をしないと何も変わらないんで、そこは求めていきたいです」

攻撃のバリエーションの少なさには難しさを感じる。

 昔からガンバは“いい攻撃がいい守備につながる”と言われてきた。調子のバロメーターは守備から攻撃に転換する迫力を見ればすぐ分かったが、大宮戦はチャンス数が少なかったように、たたみかける攻撃が数少ない。チーム戦術として縦に速い攻撃を標榜しているが、それ一辺倒ではなかなか相手を崩せない。遠藤保仁が途中から入って攻撃に変化をつけていたが、そもそもの攻撃の型、バリエーションが少ないのだ。

「攻撃の迫力はもうひとつですね。相手の前でボールを回しているだけで、あまり恐さがないなと思うので、もっとフリーの状態の時に勝負のパスを入れてもいいかなって思います。テンポよくボールを回したり、ゴール前でワンタッチでリズムを作ったり、そういう工夫をしていけばガンバの攻撃の良さがもっと出てくると思うんですが……」

ただ、三浦自身は開幕から大宮戦までの全26試合でスタメンフル出場中で、DF陣の中心選手に成長した。

「麻也さんと話してレベルアップすべきはフィジカル」

 前述した大阪ダービーでは勝ち越しゴールを決めて勝利に貢献。5月には日本代表に初選出され、8月にはロシアW杯最終予選のオーストラリア戦、サウジアラビア戦にも招集された。試合出場こそ叶わなかったが、間近で感じた最終予選の試合や代表選手の言動は大きな刺激になった。

「麻也(吉田)さんと話したり海外の試合を見る中で、自分がレベルアップしないといけないなって思うのは、フィジカルです。どんな状況でも1対1で負けないとか、大きな選手にも当たり負けしないとか、そういう部分が海外でプレーするセンターバックには必要だと思う。やっぱりいずれ海外でプレーしてみたいですし、そのためには今からフィジカルをしっかり上げていかないといけない」

サウジアラビア戦はベンチに入ることができず、スタンドから試合を見た。悔しい思いをしたが、やはり国際舞台に立ってプレーしたいという思いが強まった。それはその時ふと思ったのではなく、以前からその思いが強かった。

三浦は2014年、U-19選手権ミャンマー大会でU-19日本代表として南野拓実や井手口らとU-20W杯出場を賭けて戦った。惜しくも北朝鮮にPK戦で負けて出場権を獲得できなかったが、国の代表として戦う国際試合は、やはりリーグ戦とは異なる特別な面白さがあるという。

「国際試合は緊張感がすごくて相手も強いので……」

 「代表の試合は特別ですね。U-19選手権の時はベスト8で北朝鮮に勝たないといけない、というプレッシャーを受けた。でも独特の雰囲気と緊張感がある試合をやれて楽しかったですし、トゥーロンで世界の強豪と戦えたのもすごく面白かった。ガンバでもACLを戦って、もっとやりたかった気持ちになりました。やっぱり国際試合は相手も強いのですごく楽しい。その試合の中で自分のプレーをいつも出せるようになりたい。もちろん代表の試合にも早く出てプレーしたいと思っています」

三浦の持つポテンシャルは非常に高い。今野泰幸が「対人の強さ、カバーリング、クロスの対応、ビルドアップ、すべての能力が高い」と三浦を絶賛していたが、まだ22歳、伸び代は十分にある。ロシアW杯以降、間違いなく日本代表の最終ラインを仕切る選手になるだろう。

「まだまだ力が足りてないと思うんで、今はとにかく自分のところからは絶対にやられないという代表選手としての自覚、意識をもってやっていこうと思っています」

自分のところから、やられてたまるか。

 その意識がさっそく大宮戦で見られた。全体をコンパクトに保ちつつ、自ら積極的に前に出て相手を潰し、攻撃の芽を摘んだ。“自分のところからは絶対にやられない”その覚悟を示したプレーだった。

これからリーグ戦は終盤に入る。ACLの出場権を獲得できる3位柏との勝ち点差は10だ。

「ACLは狙っていきたいです。難しいですが自分たちは上を見ず、勝ち続けるしかない。みんな、失点しないという意識が強いので、それを90分間つづける。それを結果に結びつけられればいけると思います」

意識し続けることでプレーは変わる。

自ら率先してそれを証明することができれば、三浦の選手としての存在価値はもちろんチームの調子も変わるはずだ。

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