W杯への秘密兵器…国内組に潜む『ネクスト井手口』〈dot.〉

来夏のロシア・ワールドカップまで残り9カ月――。いや、それだけあれば十分という気もする。何の話かと言えば、『ネクスト井手口』の発掘だ。

ワールドカップ・アジア最終予選のオーストラリア戦で八面六臂の働きを演じた井手口陽介(ガンバ大阪)のほかにも結構いるのである。日本代表の一角に加えてみたい若者たちが。そこで、今回は『ハリルジャパン』未招集の有望株にフォーカスしよう。

まずはディフェンス陣から。川崎フロンターレのセンターバックを担う奈良竜樹だ。身長180センチ。だが、ピッチ上ではそれ以上に大きく見える。それくらい存在感があるわけだ。とにかく、1対1にすこぶる強い。

球際も激しく、寄せも鋭い。国際舞台では距離を空けて、敵に前を向かせたら命取りだ。日本にはそこで腰の引けてしまう選手がごまんといるが、奈良は違う。ガンガン潰しに行く。相手が誰でも恐れず立ち向かい、やられる前にケリをつける。勝負度胸といい、不敵な面構えといい、いかにも代表向き。試す価値は十分だろう。

次にミッドフィールドの候補者を探したい。事実上、アンカーは長谷部誠(フランクフルト/ドイツ)の一択だが、井手口、山口蛍(セレッソ大阪)に続くインサイドMFも人材不足。そこで推すのがジュビロ磐田の川辺駿だ。

代表で求められるのは『奪取力と推進力』だが、それを両立させうる数少ない若手の一人だろう。今季の成長ぶりは目覚ましく、自ら球を狩って一気に前へ出て行くプレス・アンド・ラッシュは出色。3列目からスプリントし、点まで取っている。技術が確かなのもプラスだ。そのプレスが国際舞台でも通用するかどうかは未知数だが、一度チャンスを与えてみたい。

さらにアタック陣では柏レイソルの右翼を担う伊東純也を強く推したいところだ。目下、代表の右翼は本田圭佑(パチューカ/メキシコ)、浅野拓磨(シュツットガルト/ドイツ)、久保裕也(ヘント/ベルギー)など駒は豊富だが、いずれも本職ではない。肝心のプレス要員としても食い足りない面がある。

一方、伊東は右翼に定着して2年目だが、これが見事なまでの当たり役。いまや縦にぶち抜いて決定的なラストパスからアシストを稼ぐ本格派のウイングだ。そうかと思えば、目の前の敵を次々とかわすスラロームから点まで取る。その技術とスピードは海外組に少しもひけをとらない。いまだ声が掛からないのが不思議なくらいだ。

激戦区のポジションだけに食指を動かしにくいのだろうが、国内組というだけで『格下』扱いされてはたまらない。アジア最終予選で貴重なゴールを奪い、日本を救った山口、今野泰幸(ガンバ大阪)、井手口も国内組なのだ。もっとチャンスを与えられていいのではないか。

もちろん、代表で戦う相手は常に外国人だから、彼らと日常的に争う海外組に利がある――との理屈を無視するわけではない。そこで最後にオランダへ渡った逸材・堂安律(フローニンゲン)の名前も挙げておこう。

今年5月のU-20ワールドカップで4試合3ゴール。人を食ったプレーで強国の猛者たちを手玉に取った才覚と強心臓の持ち主だけに、どこまで伸びるか楽しみだ。

ごく短期間でも驚くほどの成長を遂げてしまうのが若者たちの特権である。その意味では、まだ頭角すら現していない『ミスターX』が、ロシア行きのチケットを手にしても、まったく不思議はない。

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