【G大阪】本格ブレイクを予感させる浪速の至宝、堂安律「見返してやろうという想いでいた」

早いようで遅かったJ1初ゴール。

[J1リーグ第8節]G大阪6-0大宮/4月21日/吹田S

2015年に高校2年生でトップデビューを飾った堂安律、18歳。昨季は稲本潤一(北海道コンサドーレ札幌)、宇佐美貴史(アウクスブルク)、家長昭博(川崎フロンターレ)と同じ系譜を辿り、高校3年生ながらトップに昇格した逸材である(宇佐美は高校2年時にトップ昇格)。

ただ、彼らと異なるのは、プロ1年目の主戦場がU-23チームだったこと。J3では21試合で10ゴールを決める活躍を見せたが、J1では3試合の出場で無得点に終わった。そういう意味では18歳10か月5日での初弾は早いようで遅かったのかもしれない。

J1第8節・大宮アルディージャ戦の62分。3−0と試合の趨勢がほぼ決していたなかで、倉田秋からのボールを右サイドで受ける。2タッチでシュートコースを作ると、左足でゴールを正確に射抜いてJ1初得点を奪った。その瞬間、チームメイトが堂安に駆け寄る。「『遅いな』、『やっとかよ』。そういう言葉をみんなに言われましたね」と笑う。

本人も同じ想いを抱いていたのだろう。本音がぽろりと漏れた。

「J1初ゴールは嬉しいですけど、どっちかと言うとホッとした。(結果が出ていなかったから)見返してやろうという想いでいたのでホッとした気持ちのほうが大きい」

だからこそ、堂安は貪欲に2点目を狙っていた。77分だ。ロングボールの処理を誤った和田拓也から奪うと、そのまま左足でネットに流し込んだ。「走ってみるもんやなと思いますね」。最後までゴールを狙い続けた姿勢が、初得点を奪った試合でのドッピエッタ(1試合・2得点)に繋がった。

U-20日本代表の中心選手として、5月のU-20ワールドカップでの活躍が期待される。その重責を背負うなか、今季は開幕から全試合ベンチ入りし、トップでの出場機会を増やしていた。

一方で結果を残せていない自分に苛立っていたのも事実。前線に怪我人を多く抱えるチーム事情があったとは言え、この大宮戦は彼にとって絶好のチャンスだった。しかも、与えられたポジションは本来のサイドハーフではなく、よりゴールに近い2トップの一角。ここで自らの存在を長谷川健太監督にアピールしたい──。その想いが強くなったのは当然だろう。

しかし堂安は、浮き足立つことはなかった。

「今日は調子が悪くても、得点が取れなくてもがむしゃらにやるのがテーマだった。緊張して全然ダメだったかもしれない。でも、そんなときでもチームのためになにができるかを考えていた。そのなかで最後まで走り切ることを今日は意識していた」

“足”に表われた頑張り。真摯に課題と向き合う。

 できるプレーを全力でやり遂げる。自分になにができるかを冷静に見極めれたことは、パフォーマンスに好影響を与えた。

堂安の課題として挙げられたのが、ボールに関わる回数の少なさと、オフザボールでの動きの質。この両方が格段に良くなった。昨年までであれば、ボールを持って違いを作れても、ボールが回ってこなければ試合から消えることもしばしば。それは本人も自覚しており、昨年のU-19日本代表合宿に参加した際も、「ボールを持てばキレているイメージはあるけど、まだオフの時に絡めていないところの数が多い」と話していた。

それが大宮戦では、前半から右へ左へと動き回り、ボールを引き出しては収める任務を遂行。流動的な動きはチームの狙いとして求められたものだったが、彼の動き出しとボールキープは試合を通じて相手DF陣の脅威となっていた。

「律がサイドに流れることで起点ができるし、あそこでボールキープができる。それが上手くいったのかなと思う」

藤春廣輝の言葉通り、堂安の献身的な動きがなければ、チームの攻撃に奥行きは生まれず、藤本淳吾や泉澤仁の良さは引き出されなかっただろう。彼の頑張りは“足”にも表われており、60分の時点で右足のふくらはぎがツっていた。その状態から2得点を奪ったのだから恐れ入る。

堂安は愚直なプレーで常に試合に関わり続け、ゴールという結果を残した。

「90分のなかでボールに関与する時間が少なくて、消える時間が長い。だから、ボールを持っていない時間に少しでも絡めるようにやってほしいと言われていた」

長谷川監督にも課題を指摘されていたが、大宮戦でようやく目に見える形で答を出した。

来月のワールドカップでは、U-20日本代表のエースとしての奮迅の働きが期待される。大宮戦であらためて垣間見せた、底知れぬポテンシャル。本格ブレイクを予感させるハイパフォーマンスだった。

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