G大阪藤春、五輪オウンゴール悪夢克服だ

<2017年イチオシ選手>

◆G大阪DF藤春広輝(28)

サッカーが怖くなった2016年だった。8月7日、リオデジャネイロ五輪1次リーグ第2戦。相手はコロンビア。0-1の後半20分、オーバーエージで先発出場していた藤春がオウンゴールした。クリアしようと思ったボールが右足に当たって、自陣のゴールに吸いこまれた。悪夢の始まりだった。

ボールを目で追っている時、急に世界がスローモーションになった。藤春は「ゴール裏の観客の顔が1人1人ハッキリ見えた。そう思ったら次の瞬間には頭が真っ白になった」。試合後はシャワーで涙を流すのが精いっぱい。携帯には励ましのLINEが次々と届いた。ありがたい言葉の数々。だが、藤春の心は救われなかった。頭の中は父のことでいっぱいだった。

リオ五輪前、藤春は1つ決めていることがあった。大体大在学中の6年前、父末広さんが他界した。プロ入り後はなかなかお墓参りには行けていなかった。「五輪が終わった後、ちゃんと父さんに報告しよう」。そう決めていた。でも、オウンゴールをしてしまい「父さんに言えへんなって思った」。お墓まで足を運ぶことができなかった。だからこそ「何かサッカーに返して(貢献して)からじゃないと会えない。タイトルを取ってからお墓参りに行こう」と誓った。

16年シーズン、G大阪はJ1で年間勝ち点4位、ACL1次リーグ敗退、ルヴァン杯で準優勝、天皇杯は8強で幕を閉じた。目標にしていたタイトルは取れなかった。2017年こそ、G大阪を頂点に導き、天国の父に成長した姿を見せる。

◆藤春広輝(ふじはる・ひろき)1988年(昭63)11月28日、東大阪市生まれ。大阪・東海大仰星高から大体大を経て11年にG大阪入り。J1通算131試合4得点。日本代表はハリルホジッチ監督の就任初戦となった15年3月のチュニジア戦でデビュー。国際Aマッチ通算3試合無得点。50メートル5秒8。愛称は「ハル」。175センチ、60キロ。

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